やさしい悪魔

チクチク、チクチク、チクチク。

チクチクと胸が痛い。

目が覚めた。

見ると、ちいさくって、かわいい悪魔がお腹の上に乗っていた。

「あんた誰。」

「悪魔だよ。」

「なんで、ここにいるの。」

「心臓もらいにきたの。」

黒い帽子に黒の衣装、手には、先がとんがったハートにつき刺す用の矢を持っている。

「あなたの心臓がほしいの。ちょっとだけ我慢して。」

悪魔は、右手で矢を持って、ねこ耳の横までふりあげた。

「やめろよ、なんでぼくの心臓をやらなきゃいけないんだ。」

「どうしても。」

「おまえに、おれの心臓をやる理由がない。」

悪魔は、ベットの上に矢をおろして考えた。

「脱ごうか。」

「うーん、パンツ見せようか。」

悪魔は、黒いレースのスカートをくしゃくしゃとたくし上げた。

「なんで、白のパンツはいてんだよ。」

「ほっとけよ。」

悪魔は自分をみまわして、うなずいた。

「それじゃ、オッパイさわってみるか。」

悪魔は、ぼくの右手をつかんで、自分の胸に押し当てようとした。

「やめろよ、だいたい、どこが胸なんだよ。」

悪魔が一番ふれてほしくなかったことらしい。

「もう、許さない。」

悪魔は、矢を頭の上まで振りかざして、ぼくの胸めがけて、いっきに振りおろした。

ぼくは、左に身をかわし、矢はベットにつき刺さった。

ぼくが身をかわした拍子に、悪魔は飛び跳ね、ベットの下に落ちた。

「おかあちゃん、わたしもう無理。」

悪魔のおかあちゃんが現れた。

「うー、息ができない、苦しい。」

悪魔のおかあちゃんは、ぼくに馬乗りになっていた。

「オッパイ触りたいか。」

「いえ、結構です。」

おかあちゃんは、サイズこそ少し大きめだが、すごく美人でセクシーだ。

おかあちゃんは、黒いレースのストッキングをはいた右足の親指と人差し指で、ぼくのTシャツの左胸あたりをむぎゅむとつまんで言った。

「おまえさ、わたしのnoteにスキ押したでしょ。」

そういえば、顔出ししたアイコンの顔に似ている。

「はい、押しました。」

「わたしのnoteのどこが、よかったんだよ。」

「・・・、全部です。」

「全部って、ほんとうに全部読んだんだな。」

ほんとうは、最初だけ読んで、めんどうだったのでスキを押したのだった。

「はい、読みました。」

「そうか、ありがとう。いいやつだ、コメントしてもいいんだぞ。サポートもお願いする。マガジンも審査が通ったらよろしく。」

どこまで厚かましい悪魔だ。

「はい、わかりました。」

「ところで、スキを押したとき、なにかメッセージが出なかったか。」

「うーん、記憶にないです。一瞬しか出なかかったので、見逃したのかもしれません。」

「言い訳はいい。メッセージには、『あなたのハートをいただきました。』と書いておいたのだ。」

ダサい、あまりといえばあまりのメッセージだ。

「そうだったんですか。」

「認めたな、これで契約は成立した。おまえの心臓をもらうぞ。」

おかあちゃんは、研ぎ澄まされたまぐろ包丁を手にして、その刃先を見つめていた。

「おやめください。そんな契約は、ベニスの商人以来。無効でしょう。無理すぎますよ。」

「それじゃ、裁判するか。受けて立つぞ。」

「訴えますとも。」

ぼくは、簡易裁判所に契約の無効を訴えた。

ーーーーー

裁判長:「つまるところ原告の主張は、一滴の血も流さずに心臓の肉を切り取ることはできないから、本契約は実現不可能で、無効だということですね。」

「はい、そのとおりです。」

裁判長:「被告の主張は何かありますか。」

「鑑定人をよんでいます。鑑定人の意見をお聞き願います。」

裁判長:「それでは、鑑定人お願いします。」

鑑定人、某医師の意見、

「ベニスの商人の時代はどうだったか知りませんが、現代医学では、人間の身体から一滴の血液も流さずに心臓を取り出すことは可能であり、また、心臓に置き換え、人工心臓により生命を維持することも可能であるので、契約は実現可能といえます。」

「そんなバカな。」

裁判長:「静粛に。それでは、判決を言い渡します。」

「主文、原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」

おかあちゃんは、弁護士を付けない本人訴訟で勝ってしまいました。

ーーーーー

おかあちゃんは、また、ベットの上で馬乗りになって、マグロ包丁の刃先を黒い付け爪の付いた指でなぞっていました。

「さあ、観念しなさい、ぼーや。痛くないように、ひと思いに突き刺してあげるから。」

「どうして、そこまでして、ぼくの心臓がほしいんですか。」

悲鳴のようにぼくが尋ねると、おかあちゃんは、かなしそうな顔をして、

「心臓がほしいんじゃない、あたいの痛みがわかってほしいのさ。

と、ぼくの顔に近づいて、くちびるをゆっくり動かしながら答えた。

「お許しください。なんでも言うとおりにいたしますから。」

「ほんとだな。」

「許してやるから、このnoteのスキを押せ。」

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