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「あなたの沖縄」執筆者紹介

 「あなたの沖縄」では、コラムをより身近に感じてもらうために、定期的に執筆者紹介を行っています。コラムでは、沖縄にまつわる個人的な体験が描かれていますが、その体験をした執筆者はどのようなことを考えてコラムを書こうと思ったのでしょうか。冲縄を生きる人々が沖縄について語ろうとするきっかけや想いをお伝えしていきます。

 今回は、「あなたの沖縄」を企画した西由良さんに話を聞きました。西さんは、誰よりも多くコラムを執筆しており、小さい頃の思い出から沖縄戦に関することまで、幅広く書いています。書き手としてどのようなことを意識しているのか、何を伝えたいのか、詳しくインタビューしました。
(聞き手:豊島鉄博)

西由良(94年生まれ 那覇市首里出身)

自己紹介

 那覇市出身の父と佐賀県出身の母を持ち、首里で生まれ育ちました。大学進学を機に上京。社会人になってからはテレビディレクターや企業の広報などいろいろ経験しています。好きなお酒はもちろん泡盛(炭酸割りがオススメ)。映画を観たり小説を読むのが好きです。1年間フィンランドに留学していたことがあるので、沖縄だけではなくフィンランドにも愛着があります。フィンランド語やフィンランドの文化も大好きです!

Q「あなたの沖縄」を始めたきっかけをあらためてお願いします。

 昨年8月から「あなたの沖縄 | コラムプロジェクト」を始めました。復帰50年の2022年に向けて、自分と同世代の90年代生まれで、復帰も戦争も経験をしていない人がどんな風に沖縄を捉えているかを知りたくなりました。

 その中で、個人的な体験を語ってもらいたいと思いました。自分の言葉で語ってもらうことで、私たちの世代が捉えている沖縄の姿を描けるし、沖縄に対する言葉を獲得することができるはず。そう考えて、コラム企画を始めました。

Q西さんは、これまでの執筆陣の中で最多の10本のコラムを書いています。コラムを執筆して、自分の中での変化はありましたか? 

やっぱり沖縄の姿は多様だし、いろいろな沖縄の問題は生活の延長線上にあることなんだと感じました。

 個人的な体験から透けて見えるような、沖縄の現状を言葉にして書くというのは、沖縄のことを身近に思ってもらうためには有効な手段だとあらためて思います。そんな表現を続けていくことで、読み手の方々にとっていろいろな沖縄に出会える機会につながっていくとも思います。

 あとは、社会的・政治的な問題も含めた沖縄に関することを、職場の人や友人など周りに聞いてみるようにもなりました。
 これまでは、ずっと自分の中に思いをしまっていたり、モヤモヤすることがあっても人に言えないでいることがあったりしました。コラムを書くことによって、「人に伝わるんだ」ということが分かったんです。「沖縄を表現する言葉」が自分の中で増えてきたので、ほかの人の沖縄に対する想いも問いやすくなったと思います。

Q執筆したコラムで、特に印象に残っているものはどんなコラムですか?

 一番反響があったのは、昨年書いた「日本へようこそ」でした。自分が思っていたよりも反響があり、びっくりしました。

 あとは今年の慰霊の日に向けて書いた「言葉がつなぐ思い」。慰霊の日を県外で過ごすことは、以前は孤独だったけど、人に伝えてみることで、共感してくれる人や毎年身近に考えてくれる人ができました。振り返ってみると、あの体験が「あなたの沖縄」の取り組みの原点になったのだと思います。

 今年のお盆に沖縄へ帰省した時のエピソードをつづった「もうひとつの祖父の名前」も印象に残っています。沖縄戦に関しては、渡嘉敷島出身の祖母が経験した集団自決の話など、ほかにも書きたい話はあるのですが、自分の中で特に重要な話なので、どうやって書こうかと、言葉を紡ぎ出せずにいることも多いんです。そういう悩みを抱えているときに、今年のお盆に帰省して祖父が沖縄戦後に改名していたことをはじめて知りました。「沖縄戦について書いていかなきゃいけないんだ」とあらためて自分の使命を感じたことで書けたコラムです。
 祖母から聞いた集団自決の経験は、数年前に「おもいでから遠く離れて」という短編映画にしたこともあるのですが、もう一回祖母の体験を振り返りたいです。沖縄戦を経験していない自分たちのような世代が、どう沖縄戦を語っていくか、これから本当に重要だと思います。このコラムは、その第一歩だと感じました。

Q「あなたの沖縄」の中で特に好きなコラムはありますか?

 すべてのコラムを読んで、執筆者の方々と毎週やり取りしていて、どのコラムも思い入れが強いので、難しいですね(笑)。同世代でも一人ひとりが全く違う経験をしていて、一人ひとりが違う言葉で表現しようとしているのを読んで、毎回感動しますね。

 しいて挙げるなら「瀬長島の思い出」。私は運転免許を取る前に、大学生のときに上京してからずっと東京で暮らしているので、「こんな青春があったんだ」「瀬長島って、小禄出身の彼にとっては特別な場所だったんだ」というのが新鮮に感じました。ちょっとずつ沖縄が開発されていった、平成と令和の間を生きた世代だからこそ書けたコラムだなと思います。

 あとは「親戚付き合いが嫌い前編後編」は、私が一番最初に書いたコラム「親戚回りは宝物あつめ」と対になるようなコラムだと思います。私はすごく沖縄に愛着があるのですが、このコラムは“「親戚の集まりが嫌い」内地で過ごした大学時代に、岡山出身の友人にそう話したら「え~、何で?楽しそうなのに」と言われてカチンと来てしまったことがある。楽しいもんか” で始まるんですね。ああ、同世代でもこんな経験をする人がいるんだと実感して、印象に残っていますね。

 「我が家のヒヌカン」も最高でした。執筆者の花菜ちゃんは私の幼なじみなのですが、ユーモアをまじえてコラムを書いていて、私とは全く違うテイスト。人の心をつかむ言葉で、いいなあと思います。花菜ちゃんの人柄が伝わります。

Q今後はどんなコラムを書いていきたいですか?

 まずは沖縄戦の話です。沖縄戦を体験していない世代の沖縄戦を伝える言葉や表現にとても興味があるので、自分でもコラムを書いていかないといけないと思います。

 私は東京に住んでいるので、沖縄を出て東京に住んでいる人の立場からみた沖縄の話も書きたい。沖縄県外に住んでいるけど沖縄にルーツを持つ人として、どう沖縄と向き合っているかを考えながらコラムを書きたいですね。何年も県外に住むことで変わっていく沖縄の見え方も書いてみたいです。

 あとは、カルチャーの面で沖縄のことを語りたいという思いもあります。小説や音楽、映画など、優れた作品が沖縄の中にたくさんあるので、その面白さを伝えたいです。沖縄に関連する作り手の人たちがつながるような企画になっていければと思います。「こんな風に沖縄を表現する人たちがいるんだ」ということを多くの人たちに知ってもらえる場にしていきたいです。

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