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「あなたの沖縄」執筆者紹介──”もやもや”と向き合いながら、沖縄を綴る

 90年代生まれが個人的な体験から沖縄を語るコラムプロジェクト、あなたの沖縄。様々な職業に就く30名以上の執筆者が参加しています。でも、もっと多くの同年代に沖縄を語ってほしい。そんな思いから、あなたの沖縄の執筆者に、沖縄を語り始めたきっかけについて聞いてみました。すでに言葉を紡いだ方の話を聞いて、自分も何か語りたいと思ってもらえたら嬉しいです。

 今回ご紹介するのは、宮古列島の一つである伊良部島出身のタイラさん。99年生まれの24歳です。そんなタイラさんに、あなたの沖縄に参加した経緯や、故郷への思いを伺いました。

(取材・執筆 西由良)


タイラ(99年生まれ 伊良部島出身)

伊良部島出身。フリーライターとして活動中。エンタメなら何でも好き。一番好きな食べ物に関しては、おばあが作ったそばとスコーンがせめぎ合っている。

地元に「もやもや」を感じていた

──あなたの沖縄に参加した経緯を教えてください!

お母さんの友達から紹介されたことがきっかけです。「こんな活動やってるから参加してみたら」って。その方は、あなたの沖縄・主宰である西さんのお父さんのお知り合いで、たまたまSNSを介して知ったみたいです。ほんと、不思議な縁ですよね(笑)。

──紹介を受けて、どうして書こうと思ってくれたんですか?

大学三年生の頃からライターをやっていて、声をかけられたのが卒業間際の2月ごろでした。これからもライターとしてやっていくぞ、というタイミングで。でも、沖縄について書きたいと思いながらも、まだ何も書けていなかったんです。だから、いいチャンスだと思って、これまで沖縄や地元に対して感じていた「もやもや」をぶつけました。

──もやもやを感じていたんですね。どんなもやもやでしたか?

窮屈と言わないで」でも書きましたが、出身の伊良部島はすごい小さな島なんですよね。周りと話が合わないことにもやもやを感じていました。
私の小さい頃にはもうネットもあったので、最新の映画や漫画を楽しめたんですが、周りの友達はAKBのような流行りものしか触れてなくて。完全に厨二病だったんで、自分を理解してくれる人はいないと、周りを見下してました(笑)。高校で沖縄島に、大学で東京に行ってからは、伊良部に対する印象も変わってきて、ここが自分の故郷なんだと思えるようになりました。

沖縄を話せる場所があるのは素敵なこと

──伊良部島の見え方が変わってきたのはどうしてですか?

島を出てすぐは自分の出身地を肯定できていなかったんですが、嫌なことがあったりすると、自然とホームシックになったんです(笑)。「ああ、ここが自分の故郷なんだ」、と。大学で東京に出てからは、「沖縄出身なの羨ましい」とか「伊良部島出身なのいいね」って褒められることも増えて、その度に沖縄っていいところだなと感じましたね。でも、その一方で、格差や基地といった様々な沖縄の問題にも目がいくようにもなりました。

──沖縄の問題に関心をもつようになったきっかけは、何かあるんですか?

一番は、沖縄の人が集まる学生団体にたまたま参加したことですかね。その団体では、沖縄の高校生が県外進学といった多様な選択肢を選ぶサポートをしていました。そんなに堅苦しい感じはなく、大学生らしいカジュアルな雰囲気でした。県人会みたいなノリで楽しそうだと、なんとなく参加したのですが、度々、メンバーたちの間で沖縄の教育格差などの問題について議論になるんですね。話す過程で「こんな沖縄もあるんだ」と少しずつわかってきて。もっと沖縄の問題に目を向けなきゃと思うようになりました。

──学生団体に入っていたんですね! もう一年以上の付き合いですが、初めて知りました。

そうなんです(笑)。「窮屈と言わないで」に書いた、自分の大学で開催されたデニーさんの講演も、団体のメンバーに誘われて一緒に行きました。700人もの方が大講堂に詰めかける、熱気あふれる講演でした。多くの人が沖縄に関心を持ってくれていることに嬉しさを感じましたが、同時に、これほど大きな問題を抱える場所なのかと突きつけられるような思いも感じました。

──大学時代から、自分なりに沖縄と向き合ってきたんですね。

社会人になって二年目ですが、頭では理解したつもりでも、全然実感が伴っていないこともまだまだ多くいです。ついこないだも、沖縄にテーマパークができるってニュースがあったじゃないですか。沖縄と本土の格差や搾取については知っていましたが、初めて「押し付けられる」ということに実感が湧きました。”地元のためになる”と言って、本土の資本でたくさんのものが建設されましたけど、それで沖縄が本当に成長したのかなって。自分でお金を稼ぐようになって、より自分ごととして感じるようになりましたね。

──タイラさんは、ずっと沖縄を学び続け、見方がどんどん変わっていってますよね。ずっと沖縄と向き合い続けられたのはどうしてですか?

なんでですかね(笑)。沖縄のことを気軽に誰かと話せる場所があったからではないでしょうか。大学時代も学生団体のメンバーと話せましたし、今はあなたの沖縄の読書会もあります。普段は、妻と話したりもしてますね。人と話す中で、色々と学んでいっています。
少しでも沖縄のためになることがしたい。ちっちゃい個人にできることは少ないですが、話すことで何かが変わるきっかけになったら嬉しいです。今後も、ライターを続ける中で、沖縄について探求していきます。

──最後に好きなコラムを教えてください!

生きていてくれてありがとう」です。
おばあちゃんから戦争体験を聞いた話が書かれているコラム。自分は伊良部島出身で、親族から戦争体験の話を聞く機会が少なかったんです。だから、沖縄戦に対して、執筆者の西さんほど当事者意識を持てていませんでした。ちゃんと聞いとけばよかった。まだおじいもおばあも元気なので、今度帰ったら色々と聞いてみたいです。

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