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麻布台ヒルズ 「オラファー・エリアソン展」、 エシレ・ラトリエ店、 そして日本一高いビルのスカイロビー


オラファー・エリアソン で思い出すのは2020年の東京都現代美術館

 オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)というと、私は2020年に東京都現代美術館で開催された ときに川は橋となる 展を思い出します。公式ウェブサイトはいまでも検索でき、それを開くと当初予定されていたスケジュールよりも3か月遅れで開催されていたことがわかります。東京都の施設であり、都の規制が厳格に適用され、当初の開催予定時は美術館が閉まっていた時期だと思います。それでもキャンセルにならずに期間をそのままずらして開催されたのは、スケジュールがびっしりと詰まっている通常の時期では考えられないことで、それができてしまうほど当時は混沌とした状況だったとあらためて認識させられます。本人が来日しての講演会はもちろん、担当学芸員さんによるギャラリートークもキャンセルになっていました。

 私は延期された会期の終盤に美術館へ行って、光の反射と透過による色の変化を捉えた作品、上から落ちてくる水に光を投射して模様が浮かびあがる作品を興味深く観せてもらったことーーを思い出しました。

当時、東京都現代美術館にあった開催中展覧会のポスター 2020年9月
入り口近くのボード。開催日は当初予定のままで、修正されていませんでした。
実際には上の写真のポスターの通り 2020年6月9日から9月27日 に開催。
天井から落ちてくる水滴に光を投射する《ビューティー》は
会場終わり近くの暗幕の中にあって気がつきませんでした。
この案内を見て引き返しました。


テート美術館展 国立新美術館(2023年7月~10月)

 最近では、国立新美術館で開かれた テート美術館展 の中でもオラファー・エリアソンの作品が2つ展示されていました。《黄色vs紫》(2003年) は、天井から吊るされた円盤に投射された光が透過、反射する仕組みです。円盤はゆっくりと回転し、壁に映る黄色と紫の光の形が動いていきます。
 また、大きなミラーボールのような球体から反射した光が壁に映る《星くずの素粒子》という作品も印象的でした。こちらは出口直前に作品が部屋いっぱいに広がっていた記憶があります。

国立新美術館 開催中展覧会のポスター 中央がテート美術館展 2023年7月
テート美術館展パンフレットの裏表紙
オラファー・エリアソン《星くずの素粒子》2014年


麻布台ヒルズギャラリー(現在)

 今回は麻布台ヒルズのオープンに合わせたギャラリーの開館記念展覧会です。最寄り駅の東京メトロ神谷町駅からは5番出入口が麻布台ヒルズの地下にある駅前広場につながっています。向かって右手がガーデンプラザAのエリアで、チームラボによるデジタルアートミュージアムのオープンを事前に告知する大きなポスターが目立ちます。その先のエスカレーターを上ると、そこがオラファー・エリアソン展の会場、 麻布台ヒルズギャラリー でした。ギャラリーということで、美術館ほどの広いスペースではありませんでしたが、それでもここにあった作品は印象的でした。

麻布台ヒルズギャラリー 出入口のあたり


 入り口の先には壁にうっすらと影が動いているように見えます。右側の壁をつたって先に進み中に回り込むと、天井から吊り下げられたオレンジ色の球体から光が発せられていました。影ではなく、オレンジ色の濃淡のある光だったのです。《蛍の生物圏(マグマの流星)》で、光源は何重も重ねられた球体の中にあり、それが複雑な模様になって壁に映されていたのです。

蛍の生物圏(マグマの流星)
Firefly biosphere (falling magma star)
2023年

 次の部屋の正面には測量機械のような作品があって、3つの振り子が揺れています。振り子は紙を置いた台と紙に模様を描くペンにつながって、どちらも規則的な周期で動いています。しばらくすると、近くにいた人が装置を止めて紙を外し、見学している私たちに見せてくれました。そこには幾何学的な模様が描かれ、一つの作品になっていました。振り子についているおもりを調整することで別の模様にもなるということです。《終わりなき研究》という作品です。

終わりなき研究
The endless study
2005年


 同じ部屋には太陽の光や、風の力を利用した作品も展示され、さらに、部屋の真ん中にはオラファー・エリアソンがこの展覧会のために特別に制作した、扇風機を乗せた大人の背の高さぐらいの《呼吸のための空気》がありました。

呼吸のための空気
The air we breathe
2023年


 隣の部屋には暗幕が張ってあります。中に入る前に係りの人が《瞬間の家》というタイトルの作品で、光が点滅していると注意してくれます。暗がりのなかにも係の人がいて、足元に気をつけるようにという注意と、角を曲がった先が作品の正面であるという説明をしてくれます。初めのうちは作品の全体がわからず、水が床に落ちる音が響いています。目が慣れてくると、上からつるされたホースから水が噴き出ていることがわかってきます。ストロボの瞬間にその水の軌跡が現れ、次のストロボの発光の時には水の軌跡が変わっていました。同じような装置が3台並べられ、さっきの係りの人が教えてくれた場所は3つの作品を横一列に見ることができるポイントでした。

瞬間の家
Your split second house


 暗がりから出ると最後のコーナーでした。オラファー・エリアソンが森美術館館長のインタビューに応えている映像が流れています。途中にあった《呼吸のための空気》を構成するパーツ、モジュールが 11の面を持つ多面体(bisymmetric hendecahedron、双対象十一面体)であること、モジュール自体が実験的な手法によって鉱山から回収された亜鉛廃棄物というリサイクル素材でできていることがインタビューでわかりました。

 そして、このモジュールを使った作品がギャラリーとは別の場所にも飾られているということで、その場所に向かいます。麻布台ヒルズ 森JPタワーの1階フロアです。ギャラリーがあるガーデンプラザAからはエスカレーターでいったん地下1階に降り、駅とは反対方向へ歩いて移動します。さらにエスカレーターで登っていくと屋外に出たりと大変です。ですが、地上に出た中央広場からは東京タワーの上層部分が見えたり、奈良美智の作品に出会えたりという発見もありました。地下を歩いている途中では、来年2024年2月にオープン予定のチームラボによるデジタルアートミュージアムの入り口らしきところを見つけて、ワクワクと気分が盛り上がります。

森JPタワーの前の中央広場、作品は 奈良美智《東京の森の子》2023年
中央広場では周りの建物の間から東京タワーが見えました
森ビル デジタルアートミュージアム は ガーデンプラザB、Cの地下1階に2024年2月オープン予定


森JPタワーのロビー


 屋外の中央広場の先に森JPタワーがあります。広場に面したロビーは吹き抜けになっていて、天井近くに4つの作品が吊り下げられていました。《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》です。さきほどのインタビューでオラファー・エリアソンが話していた「11の面を持つ多面体」で構成された螺旋状の作品です。

相互に繋がりあう瞬間が協和する周期
A harmonious cycle of interconnected nows
2023年


ギャラリーショップ

 オラファー・エリアソン展会場のギャラリーの下、地下1階にはギャラリーショップがあります。そこにも立ち寄ってほしいのは、「11の面を持つ多面体 」の小さい模型が参考として置かれている からです(売り物ではないようです)。モジュールをつなぎ合わせてしまっている作品では、そのモジュール自体の形を想像するしかないのですが、おもしろいことにショップでそれがわかるのです。また、この多面体で形どられた和三盆のお菓子も販売されていました。
 図録は表紙と小口(断面)が違う2種類が用意されていましたが、その内容は同じものだということです。表紙が《蛍の生物圏(マグマの流星)》となっているのは小口がゴールド、表紙が《相互に繋がりあう瞬間が協和する周期》となっているのは小口がシルバーです。シルバーは光の方向によって色が変わって反射し、おもしろいので、私はこちらを選びました。


アクセス

 最寄駅の東京メトロ日比谷線 神谷町駅 の5番出入口が麻布台ヒルズの地下1階にある駅前広場ににつながっていて便利です。ですが、天気が良ければ桜田通りをはさんで反対側に出る1番出入口を利用するのがおすすめです。エスカレーターで地上まで昇れますし、イギリスの建築家トーマス・ヘザウィック氏の設計による大胆な曲線デザインの建物(ガーデンプラザ)をここから見ることができるのです。

手前の大胆な曲線デザインの建物がガーデンプラザB。
その後ろにそびえ立つのが森JPタワー。向かって右側の高層ビルはレジデンス棟です。

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フランスの発酵バターを使うエシレ店の新店舗

 ガーデンプラザBの桜田通り沿いに エシレ店 の新しいお店が開業していました(12月1日オープン)。フランスの発酵バター「エシレ」を使ったお菓子やパンを作っているお店で、先日、「エシレ・パティスリーのフィナンシェは上から見ると正方形でした」で紹介したお店の新しい店舗です。


 私は地下鉄の1番出口から麻布台ヒルズに向かっているところで発見し、ギャラリーからの帰りにもう一度お店の前に来てみました。入り口でお客さんを列に誘導している警備員さんから「25分待ちになります」と案内され、そのくらいであればと行列に並びました。丸の内店では外に並ばなければならないのですが、ここでは建物の中の行列なので外が暗くなっても少しは安心して待ってられます。


 お店の名前は エシレ・ラトリエ  デュ  ブール(ÉCHIRÉ L’Atelier du Beurre)東京・麻布台店。バターのアトリエという意味です。
 これまで丸の内のエシレ・メゾン店でしか扱っていなかったクロワッサンが置いてありました。それも、クロワッサン と クロワッサン デゥーブル の2種類。入り口近くにいた係の方に聞いてみたところ、デゥーブル(double)はバターを2倍使っているということ。丸の内店では有塩バターと食塩不使用(無塩)バターの2種類のクロワッサンがありますが、麻布台店では 無塩バターのみ(聞き間違えていたらごめんなさい)。そして丸の内店とは製法が違いますと付け加えてくれました。

 丸の内店ではバターを包むように生地を巻きますが、麻布台店のクロワッサンはバターを生地に練り込んでいるということ。私はクロワッサンが好きで、ぜひ試したいと2種類とも買ってみました。自宅で食べてみると、通常のクロワッサンはバターと他の素材のバランスが良く、デゥーブルはそれよりもバターの風味が感じられます。私はどちらもおいしくいただきました。丸の内店のクロワッサンは表面にパリパリ感があったと記憶していますが、麻布台店のは食べた時にしっとりとした感覚が残ります。あまりちらかさないで食べたいというときは麻布台のクロワッサン、それも、よりバターを感じたいというのであればデゥーブルを選ぶのがいいかもしれません(すべて私の個人的な感想ですので、あしからず…)。


 麻布台店のフィナンシェは上から見ると正方形でした。エシレではメゾン丸の内店のフィナンシェは縦長の長方形ですが、それとは違い、パティスリー店(渋谷店、池袋店、横浜店)で焼き上げられている正方形のフィナンシェと同じ形でした。フィナンシェとマドレーヌを購入して自宅で食べてみましたが、両方とも他のエシレ・パティスリー店のものよりも柔らかく感じました(これも私の個人的な感想です。あしからず)。


日本一高いビルの スカイロビー

 麻布台ヒルズの森JPタワーは高さが330メートルで日本一高いビルになりました。そして、私が行った時には33階にある展望スペース スカイロビー が無料開放されていました。入り口はオラファー・エリアソンの作品が展示されていたロビーになります。直行エレベーターのホール入り口に係りの人がいて、スカイロビーのあるヒルズハウス階の入り口として案内していましたので比較的わかりやすいと思います。
 エレベーターを降りると南西側から南東側にかけて景色が開けています。33階から34階にかけて階段があり、中央部分が座席になっています。大階段 と呼んでいるのだそうで、座席でゆっくりと外の眺めを楽しんでもいいでしょうし、34階にある カフェ&バー でコーヒーを楽しんでもいいかもしれません。
 最上階64階のなかの33階、34階の高さですが南東側にある東京タワーを見上げるのではなく、ほとんど横に並んでいるように見えるのは不思議な感覚です。

森JPタワーの33階から34階にかけて階段状の座席(大階段)もありました。
この時、階段は一方通行になっていて降りてからは窓側へは行けませんでした。

 スカイロビーはイベントなどで一般利用ができないことがあるようです。この点にもご注意ください。


(12月3日更新、麻布台ヒルズへは11月29日から12月2日の4日間、こま切れの時間を利用して行ってみました)

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