【2023年10月】短編小説まとめ〜運命のノイズ〜
割引あり
大粒の雨が僕を濡らす。
びしょびしょに濡れた花束は鮮やかに色めき、無頓着な目で僕を見つめる。
今なら泣いてもバレないよね。
『早く行かなくちゃ』
雨の音に混じってよく 聞こえなかったが確かに聞こえた。
僕は空を見た。
『会いたいよ。』
雨に溺れ、声にならない声で 僕は言った。
分厚い雲の隙間から光が差し 僕を照らす。
土砂降りでも構わない。
ずぶ濡れでも構わない。
僕は光の中で確かに君を抱き寄せた。
『ありがとう。』
雨は止み、今度ははっきり聞こえた。
『じゃあね。』
空には大きな虹がかかっていた。 .
【雨上がりの空に花束を】
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9,040字
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