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本当に火を消したくない人はいるのか?

幼少期、祖父に教えてもらいながら焚き火をするのが好きだった。
普段は両親から火に近づくことなど禁じられていたが、一人で祖父母の家に遊びに行った際などは、祖父に庭で焚き火をする事を許された。

もう40年近く前の話である。

祖父は特に見守ると言う事もなく、たまに様子は見に来たが、好きに焚き火をしてみろと言うスタンスであった。

この10年ほどはやたらにキャンプだとか、焚き火だとかがレジャー的にもてはやされる傾向があった様に思うが、40年前は庭先で枯れ木や枯れ葉を処分する、言わばお手伝いの一環だった。

どうやったらうまく燃えるか、あんた一人でやってみんね、それが大正生まれの祖父から私へのいわばミッションであった。

最初はとりあえず、新聞紙をジャンジャン燃やして、枯れ葉やそこそこの太さの枝をぶっこむと言う事をしていたと記憶している。
いわゆる炎上的な燃え方をした火はすぐに勢いが弱まる。
燃える力がKeep されないのである。

そこで、着火剤たる新聞紙の丸め方、その周りに空気の隙間を作りつつ小枝をバランスよく配置する方法等を、実戦形式で覚えていった。

幾度かの失敗を繰り返し、やがて、新聞紙と小枝の配置、徐々に太い枝を加え、遂には少年の手には持て余すほどの大きさの木材などをくべる手順を覚えた。

タイミング、あおり方、薪類の配置、火加減、それらをコントロールする事が面白かった。
いきなり火を大きくしようと思うとダメなんだよな、などと一人でスキルアップを楽しんだ。

今、私が必死をこいている危険運転の問題についての着火と焚き火は似ている。

小枝の配置、徐々に枝の太さを変えて行くタイミング、最終的には火力を一定に保つように本丸の薪をくべて行くと、それなりに火は安定し始める。
焦って、早いタイミングから薪をデカくする、あるいはやたらに燃えやすい新聞紙等をぶっこんでも、火はすぐに消えてしまう。

着火剤、小枝、中くらいの薪、大きな薪、これらを、最初から絵になる様な形でくべても、やはり火は思う様につかない、その事を焚き火で学んだ。

しっかりと種火を仕込み、絶えずケアし、少しずつ火を大きくしないとダメなのである。

私がいま取り組んでいるのは、庭先のお手伝いではない。

どうやったらうまく燃えるか、あんたやってみんね?と言って、火を消したくない人に呼びかけるフェーズに来た。


大分合同新聞 2024年2月22日朝刊より


https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji07_00028.html


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