劇場版鬼滅の刃 無限列車編を観たら顔中の毛穴が開き鞄の中はびちゃびちゃになった

 ピンポンパンポン。ネタバレなしで感想をお送りします。
 子どもの付き添いで行くかどうか迷っている方の参考になれば幸いだなあという想いも込めた記事です。長女の同級生でも、見に行きたいけど親に怖そうだからダメって言われている子もいるそうなので。レーティングPG12指定に対する個人的な見解は最後の方に記してある。


プロローグ

 すごいことになっている。
 何がって、劇場版鬼滅の刃 無限列車編である。
 なんか、すごない?鬼滅。公開10日で興収100億を突破したそうではないか。千と千尋の神隠しの100億突破が公開25日だったらしいので、条件が違うとはいえ記録を15日も塗り替えたことになる。コロナ禍の劇場の救世主じゃん。みんな観に行ってんじゃん。すぐ主語デカくするのは年増の悪癖であるが、でもほんと「みんな観に行ってる」ってつい言っちゃうくらい周りの多くの人が観に行っている印象である。
 というわけで私も我が家の鬼滅キッズ長女氏と無限列車に乗車することにした。Let´s get on。混むであろうから席を早く予約してしまおうと鑑賞数日前にwebでチケットを購入したのだが、予定日前日にチケットの確認をすると何ということだ、指定日の所に過去の日付が表示されていた。おいおいどういうことだいトーホー、オレはこの日ムービーなんて観ちゃいないぜ?そう、気がはやり過ぎた私は手続きした当日のチケットを購入してしまったのである。私は泣いた。夕方の薄暗い自宅で煌々と光るスマホ画面を前に、映画で流す予定だった涙を全て流した。せつない夕暮れだった。1人は子どもとは言え、2人分は決して安くはない料金である。それでも私は諦めたくなかった。乱暴に敷き詰められたトゲだらけの道も本気の僕だけに現れるんだってLiSAも言っている。乗り越えて見せなければならない。震える手は掴みたいものがある チケだけさ。私は改めて予定通り翌日の上映回のチケットをポチった。過去のチケット代は公式へのお布施である。そうだ、私は徳の高いことをした。しかし善行とは黙して行うものである。このことは家族の誰にも言っていないし、これからも言うつもりはない。沈黙は金である。

当日の私と感想

 鑑賞したのは公開からまだ1週間経っていない時期だったが、特典のマンガ冊子「煉獄零巻」も限定のドリンクホルダーも既に無くなっていた。辺境の映画館だったので配布数が少なかったというのもあるかもしれない。あれだけ上映回数多いのにもう無くなってんのか…とちょっとしょんぼりしたが、まあ仕方ない。ちなみにドリンクホルダーは12月に再販されるようである。上映前に完売表示になっていたパンフレットはタイミング良く入荷したようで、通常版を鑑賞後に無事買うことが出来た。私の大好きなマットPP加工である。グッズの棚は閉店直前のケーキ屋さんくらいスカスカになっていたが、今回は買う予定が特になかったので「売れてんな~」などと悠長な面構えで通り過ぎることが出来た。何か買う予定だったらぐぬぬ、となっていたかもしれない。でも映画の限定グッズって何かあったっけ?煉獄さんのサムシングがあったのかな?グッズ多すぎてわからん。

 鬼滅の刃は原作を単行本で持っているので、私も長女も映画のストーリーは知っている。知っているので、私は今回の映画で号泣する自信があった。映画専用として大きめのハンドタオル1枚と替えのマスクをしっかり準備し、私がテレビ等で泣くといつも面白そうにのぞき込んで来やがる長女に「母はきっと号泣するけど見られると不快だから一切関与せず映画に集中せよ」とカラスさながらに指令を下した。その長女はと言えば、私とは真逆で「マンガで知ってるから泣かないよ」とニヒルにのたまいたもうものだ。おまえufotableの凄さ分かっとらんやろ。「アニメはマンガとはまた違うんやで」と映画館トイレの手洗い場で大人げなく説教をたれてから、我々はスクリーンへと向かった。

 上映が始まって5分ほど経っただろうか。私はもう泣いていた。いやわかってる。全然泣きどころじゃないのは分かってる。だがこの年齢になるととにかく涙もろくなるのだ。主人公の炭治郎がいい子過ぎるってだけで泣けてくるのだ。なんて面倒見が良いんだ。みんなの長男。ほんといい子。幸せになって欲しい。伊之助可愛い。泣ける。善逸必死。泣ける。煉獄さん眩しい。泣ける。スクリーンすごい。拝む。序盤も序盤の会話の中で、ごく最低限の登場人物紹介が成されていく。物語の舞台背景まで知りたい人には説明不足に感じるかもしれないが、無限列車編というスポットのみを理解するのであれば必要最低限の情報はちゃんと開示されていて「この列車に鬼が出るのでみんなで鬼退治に来たよ」ということがものの数分で分かる。子どもの付き添いで来た程度の鬼滅を全く知らない親御さんでも大丈夫。映画のストーリーだけは理解できるので心配ご無用である。ただし、ツイッターで何件か見かけた鬼滅初見の方の『猪だけは「この猪何?」から始まって最後まで「あの猪何?」だった』という感想は正しい。鑑賞後「せやな」と思った。だが何も問題はない。くどいようだが、この映画を楽しむのに必要な猪の情報もきちんと劇中で描かれている。
 作画がもうほんと神がかっていて、えっこの動画どうやって作…え?人間が?人間が作ってるんですか?このパースとカメラアングルを人間が?一体どんな修行を何百年…柱?柱なの?てな感想しかない。さすがとしか言いようのない、美しい上に迫力のある作画である。背景も美しい。映画が始まった瞬間びっくりした。いやはやとんでもねえ。
 さてストーリーは進んで行くわけだが、先の展開を知っていることも相まって全てに涙が出てきてしまうわけである。マンガでも号泣したのだが、やはり画面が動いていると感情の揺れ方も違う。ストーリー上フィーチャーされているのは主人公・炭治郎と熱くて強い男・煉獄さんそれぞれの過去や境遇であり、それが何回か出て来るのだがもう全部泣いた。映画館じゃなかったら間違いなくしゃくり上げてた。炭治郎も煉獄さんも、強い。その強さにまた涙が出て、彼らの優しさにもまた泣いて、ラストはもう伊之助がさあー伊之助があんなであんなだから余計泣けてくるでしょー!?!?!?(伊之助=件の猪)ほんと勘弁してくださいという感じで肩を震わせて泣いた。と言うかしゃくりあげるのを止めることができなくて、何とか声を出すのは我慢したが体はびくびくと痙攣していた。完全にガチで心配される人である。座席が一個飛ばしで良かったと心から思った。そして事前に指令を下したにも関わらず長女がこちらをニヤニヤチラチラ見ているのが分かったのでほんと、おまえ、このっ…と思った。全集中の呼吸で観ろよ!お前は炭治郎から何を教わったんだよ!!
 映画で泣いた時はエンドロールで気持ちを落ち着かせるのが定石だと思うのだが、この映画に関してはダメである。劇的な何かがあるわけではないけれど、落ち着こうと思ったらエンドロールの間は目を閉じていた方が良い。でももったいないからしっかり見て。どっちやねん。
 多少はあれ、映画の主要キャラ全員活躍シーンが描かれている。個人的には鬼少女ねずこちゃんのカッコいい所が見られてとても嬉しかった。あと、伊之助が底抜けに可愛かった。つやつやなどんぐりを袋いっぱいにあげたくなる。車窓ではためく伊之助は反則級にに可愛かった。そして映画しか見ていない人には、雷の呼吸の使い手、善逸くんがもっと活躍するお話もぜひ見て頂きたいなと思う。

 映画が終わって抜け殻のようになりながら、私は座ったまま涙と鼻水で冷たくなった己のマスクを感じていた。チケット購入ミスで全ての涙を流したと思ったのに、まだこんなにも涙って出るんだね。いや、ミスじゃないですけど。お布施ですけど。ハンドタオルも涙と鼻水でぐちゃぐちゃだったので、やはり映画専用を持って来て正解だった。鑑賞した人が次々と出口に向かう中、私は最後まで座席で鼻をすすっていた。メイク?そんなものは知らない。眉毛だけ残っていればセーフである(残ってたかな?)。ただ一つアドバイスをするならば、アイラインとマスカラは使うな。スクリーンを出てトイレに向かい、マスクを交換がてら自分の顔を見たら顔中の毛穴が今世紀最大級に開ききっていた。興奮のし過ぎであろうか、自分でもびっくりするほどきたない顔になっている。涙を流すのはお肌に良い行為ではなかったのか?よもやよもやである。穴があったら入りたい。
 長女に泣いたかと問うと泣いたと答えが返ってきたので「ほらね~」と心の中で勝ち誇ったポーズを取った。マスクを替えるか聞くと、毛穴がきれいな長女は「そこまでじゃないからいい。お母さん号泣してたね、ふふふ」と得意げに笑った。何やねんおまえ。まじでおまえ。このっ、おまえ!と思いながらも鬼滅コラボの銀だこを昼ごはんに食べさせてやる優しい母親なのであった。たこ焼きを食べながら、私はまた観たいなと思っていた。今度は一人でゆっくりと。私は同じ映画を何回も見るタイプではないのだが、それでも観に行きたいと思わせる作品だった。円盤は買います。

 帰宅後、鞄の整理をしようと中身に手を伸ばすと何だかしっとりしたものが手に触れた。ポーチである。え?お茶でもこぼれた?と思って水筒を手に取るが、中身が漏れた形跡はない。その水筒の側面も、何だかしっとりと湿り気を帯びている。多めに持って行って結局使わなかったハンカチタオルも湿っており、封の開いたポケットティッシュの中身はしおしおと波打っていた。これは、もしや、これは。
 私は恐る恐る映画で使ったハンドタオルを手に取った。タオルは上映後数時間経つにも関わらず、この世の全ての悲しみをまとったかのような禍々しい湿気を放っていた。
 え、これやん。犯人絶対これやん。てかこんな周りビチョることってある?上映後タオルを鞄にしまう時、私は確かに「うわめっちゃ湿ってんな」と思った。思ったが、タオル専用の入れ物や袋を持っているわけでもなし、そのまま鞄に突っ込んだのである。というか、そもそもそんなに深く考えなかった。洗った手を拭いたハンカチをしまう程度の軽い気持ちで鞄に入れただけなのである。それが、こんなことになろうとは。
 私は使わなかったハンカチを洗い、一応ポーチも洗い、鞄…一応…念のためちょっと乾かした方が良いかな…と思いながら陰干しし、ポケットティッシュの取り出し口に近い何枚かを破棄する羽目になった。私が困惑しながら片付けをする間、長女は5歳の次女に煉獄さんについて延々と語っていた。結果、次女の知ってる鬼滅キャラリストに「てんごくさん」という謎の人物が加わったのであった。 


総評

 以上の点を踏まえ、劇場版鬼滅の刃 無限列車編の総評をしたい。
 まず、ストーリーを追うのは鬼滅の刃初見の人でも大丈夫である。映画を見るのに最低限必要な情報は最初にきちんと開示される。映画は劇場版用ストーリーではなく物語本編なので、できれば物語の最初から観て欲しいとは思う。が、映画を見て気になったらテレビ版アニメを追ったり原作を読み始めるという順番でも全体の理解はできる。
 次に、作画は神。これだけでも一見の価値あり。
 そして、詳しくはとても言えないが泣ける。ただし、鬼滅の刃自体が往年のジャンプ的「ヒーロー最強」展開のお話ではないため、そのつもりで見に行くとえっ、てなると思う。親世代が子供向けのつもりで観るとびっくりするかもしれない。私の表現力がいまいち足りないので言いたいことが伝わるかはわからないのだが、何と言うか、非常に泥臭い作品なのである。そこが現代っ子の共感を呼ぶところでもあると思うのだがどうだろう。
 最後に、鑑賞に当たっての持ち物である。大き目のハンカチ、替えのマスクは持って行くに越したことはない。そして、ここが重要だ。私のようにクソデカ感情に支配されがちなオタクたち、ビニール袋を持って行け。涙を拭くのに使ったハンカチ、鼻をかむのに使ったティッシュ、びちゃびちゃになったマスクを入れて帰れ。それができれば、すべて世はこともなし。All´s right with the world. エヴァ最新作も楽しみですね。

レーティングPG12と鬼滅は怖いのか?について

 以下は、子どもに鑑賞させようか迷っている親御さん向けの内容である。
 ネタバレしないように書くつもりだが、ネタバレと感じるレベルは個々に違う気もするため1ミリのネタバレっぽいものも許さない人は念のため読まないようにお願いしたい。

 まずPG12指定の内容について。PG12とは、小学生以下には親の助言・指導が必要で、鑑賞の際はできるだけ付き添うようにしろというレーティングである。明確な指定基準はわからないが、親としてここを気を付けろって言ってんのかなと感じた表現を列挙する。

・流血表現
・殺傷行為
・自傷行為(ストーリー上納得できる展開の上で描かれている)

 ただ、グロテスクにならないようにという細心の配慮を制作側が持って作られている作品でもある。個人的には自分や他人を傷つけてはいけないという道理が分かっていて、現実と物語の区別がついており、流血を伴う戦闘表現に耐性がある子どもであれば鑑賞に問題はないと思う。
 ちなみに心配するような性的表現はないのでそこは安心して頂きたい。

 次に「怖さ」に関して。鬼滅の刃で怖いと感じられるのは先に述べた戦闘・流血表現と、何と言っても「鬼」だと思われる。鬼と言っても桃太郎の鬼みたいに分かりやすいものではなく、どちらかと言うと異形といった体である。なので自分の子どもが鑑賞に耐え得るかを判断する際は「子ども向けホラー」ジャンルとみなして判断されたらいいのではないかなと思う。実際劇場では怖くて途中で離席する親子もいると聞く。怖さ耐性があるか不安な子どもと観に行く場合は、ダメだったら途中で退席するとあらかじめ決めておくと臨機応変な行動も取りやすいのではないかなと思う。席も通路側を指定しておけば安心倍増だ。気になっているのなら、ぜひ工夫をして観に行っていただきたい。ストーリー、迫力、画面の美しさ、全てに感動できる映画である。

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