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No.126 『決算レビュー』 「レンガ」の企業はどこだ

3月期決算の企業による中間決算の発表が続いていますね。日々の決算説明や新聞報道にみなさんはどのような印象を持っているでしょうか。「コロナの影響はやはり厳しい」。確かにそうですね。航空業界の決算を見るにつけ、売上高の減少に対する限界利益の落ち込みがいかに大きいかを改めて実感させられます。

わたしにとって馴染みのある電機業界の決算を俯瞰して思うのは、「逆風の中においてこそ競争戦略の巧拙が鮮明化する」ということです。まあ、取り立てて新味のある感想でもありません。外部環境の風向きが悪くなったとき、直ちに素直に吹き飛ばされてしまう脆弱な「わら」の企業と、固有の強みで向かい風に力強く抗える「レンガ」の企業との格差をまざまざと見せつけられる決算と感じています。

「レンガ」の企業とはどこでしょうか。個人的には、日本電産、日立製作所、ソニーの3社を挙げたいと思います。

日本電産は言うまでもないですね。電気自動車への技術的な変化を早くから予見し、EVモータの量産化を強力に進めてきたほか、日産自動車から関社長を招聘して永守会長とのツートップ体制を整えてきました。電気自動車の業界で「Nidec Inside」と言われる日もそう遠くないでしょう。また製造コストの低減についても秀逸です。人件費や材料費の削減などその場しのぎの一時的な策ではなく、設計や製造の合理化という継続的な策が中心といっていい。つまり、外部環境の変化に対して常に「主体的」「能動的」「先行的」であることが日本電産の凄さではないかと思います。

「この木なんの木 気になる木」。日立製作所という大樹はその枝葉を着実に代謝させ強くなっていると感じます。グループ企業の再編はもちろんですが、今回の決算で印象的だったのがITサービスの存在感が強まっていることでした。具体的にいうと2QにおけるITセグメントの営業利益率は13.5%。この環境下で2ケタの利益率を稼ぎ出したのは驚きに値します。しかも過去最高。ITサービスに注力するNECや富士通と比べても倍の収益性ではないでしょうか。単なる構造改革の効果だけとは考えにくい。おそらくハードウェアで築き上げた顧客基盤に対してITサービスを上手に提案できているのでしょう。外部環境に左右されやすいかつてのイメージはもはや後景に退きつつあると思われます。

電機業界の中でソニーはやっぱりキャラが立っていますよね。さすが「It’s a Sony」。テレビやパソコンなどの汎用事業はすっかりと影を潜め、差別化された精鋭たちがずらりと顔を揃えつつあると感じます。なかでもゲーム事業の存在感は圧倒的。全社利益の4割程度を稼いでいます。しかも営業利益率は20%。「プレイステーション」の中核部品である半導体への過大投資に苦しんだ時期もありましたが、ソフト開発やオンライン対応などビジネスモデルに磨きをかけてきた成果といえるでしょう。ソニーにとってはコロナも向かい風というより追い風かもしれませんね。ビバ!巣ごもり需要。また、とかく「水もの」と呼ばれがちな音楽や映画ですが、ヒットを予見する嗅覚に優れることもまた事実のように思います。ビバ!米津玄師、ビバ!鬼滅の刃。

一方、「わら」の企業とはどこでしょうか・・・決算説明を聞いていると、パナソニックや日本電気はちょっと心配ですね。まるで「千と千尋の神隠し」に登場する「カオナシ」のよう。アイデンティティを見失い、逆風の中を彷徨っているように感じられます。

かくいうわたしも偉そうに言えた義理ではありません。「Wanderin’ Destiny」・・・

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。


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