ゆういち@証券アナリストの『私的な企業分析』

証券アナリスト歴20年以上。日経新聞とは一味違う企業分析をはじめ、魅力的な経営者のキャ…

ゆういち@証券アナリストの『私的な企業分析』

証券アナリスト歴20年以上。日経新聞とは一味違う企業分析をはじめ、魅力的な経営者のキャラクターやアナリスト業界のあるあるなどを紹介しています。企業や投資に興味のある全ての人たちへ。稚拙ながらも心を込めて書いた文章が、少しでも息長く面白いと感じていただけたら幸いです。

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No.57 『人見知りと戦うアナリストの頭の中』

今回は企業ではなく『自分のこと』を分析してみたいと思う。 他人からどう見えるかはともかくとして、必ずしも社会にしっかりと適応しているほうではない。少なくとも自分ではそう自分を理解している。組織に身を置く立場でありながら、職場の人間と会話を交わすことが億劫だ。ましてや、仕事の都合で初対面の人に会わなければならない日など気が重くて重くて仕方ない。 歳を重ねればそのうち人との付き合いにも慣れて、「あの頃の自分は若かった」などと自分の未熟さを温かい眼差しで振り返れる日がやってくる

    • noteへの投稿をおやすみします

      かなり久しぶりに4月から運用業務の世界へ戻りました。立場上、これまでの気楽な企業分析はちょっと難しいかなと思っています。あと、しばらくは勘を取り戻すリハビリテーションに専念したいこともありまして 素人の文章に目を通していただきありがとうございました。みなさんには本当に感謝しています。またお目にかかれる機会を楽しみに。それまでどうぞお元気で

      • No.139 『日立製作所』 恐竜との訣別宣言

        日立製作所の個人投資家向けWEBセミナーの見どころは、冒頭5分の河村CFOの話にあると思います。一言でいえば、「環境変化を生き抜くためには変わり続けなければならない」。なにを今さらそんなこと。そう思われたでしょうか。でも、頭で理解していても、実際に行じるのはなかなか難しい。ましてや、日立は創業100年、売上高8.8兆円、従業員数30万人の超老舗巨大企業。並大抵の覚悟ではないと感じました。 「強い者が生き残るのではない。環境に適応できた者が生き残るのだ。恐竜と人間ではどちらが

        • No.138 『東芝』 苦難の末に得たもの

          まったくもってルネサスエレクトロニクスは不運としか言いようがないですね。火災のあった那珂工場といえば、ちょうど10年前に東日本大震災の影響を大きく受けた主力拠点。確か当時は3ヶ月の操業停止を強いられたと記憶しています。なぜルネサスだけがかくも試練を与えられるのか。これは偶然か、それとも必然か。「目先の需給が逼迫しているからといって、車載用半導体にはあまりのめり込みすぎないほうがいい。かつてのパソコンや携帯電話と同じ憂き目を見ますよ。なるべく産業用途に力を入れなさい」。そんな宇

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        No.57 『人見知りと戦うアナリストの頭の中』

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        • 「みこちゃん出版」から電子書籍が出ました
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          No.137 『スター精密』 社長の分析と嬉しい出来事

          スター精密の12月期決算説明会を動画で視聴しました。説明してくださった佐藤衛社長とは過去に何度か対話したこともありますが、決算説明会のプレゼンテーションを聴くのは今回が初めて。静岡の「みのもんた」、強烈なキャラクターが人気を博した佐藤肇会長の後ではさぞかしやりにくいだろう。半ば同情する思いで耳を傾けてみると、意外にも、といっては失礼ですが、非常に好印象でした。 温厚にして理知的。繊細にして誠意的。育ちの良さが毛穴から滲み出ている。さすが我が母校、青山学院大学の卒業生。「えー

          No.137 『スター精密』 社長の分析と嬉しい出来事

          No.136 『プロのタクシー運転手さんに教わったこと』

          先日、表参道の骨董通りからタクシーに乗る機会がありました。渋谷駅までのわずか10分あまりの乗車時間でしたが、運転手さんが話してくれた内容が実に興味深い。思わず身体が前のめりになる。そして相槌も自然と大きくなる。ありがたい一期一会に感謝いたしました。 「車内が寒く感じられるようでしたら、窓を閉めていただいてもまったく大丈夫です。感染対策は万全ですから。お客さまの目の前にあるのが、それぞれ用途の異なる5つの除菌スプレー。足元にあるのが強力な空気清浄機。そして、ダッシュボードに見

          No.136 『プロのタクシー運転手さんに教わったこと』

          No.135 『パナソニック』 片山CSOの知られざる一面

          パナソニックの常務執行役員でCSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)の片山栄一さん(54歳)は、わたしが株式運用部でお付き合いをいただいていた人物のひとりです。当時は野村証券で民生用エレクトロニクス(民エレ)業界を担当するアナリストでした。同じアナリストを名乗るのが申し訳ないくらいにあらゆる意味で格の違う人ですが、機関投資家としての当社の影響力を背景に仲良くしていただいていた次第です。実にありがたい。 優秀なアナリストというのは、その能力がセクターに必ずしも紐づかないと思

          No.135 『パナソニック』 片山CSOの知られざる一面

          No.134 『HOYA』 鈴木CEOのおもしろコメント5選

          HOYAの鈴木洋CEO。わたしが勝手に好きな経営者のひとりであることは以前の投稿でご紹介しました。良い意味で良い加減。言葉に本音と建前がない。経営のセンスが抜群に優れる・・・鈴木CEOを形容するポジティブな表現には枚挙にいとまがありません。 第3四半期決算説明会の音声配信でもその魅力の一端が表れておりました。印象に残ったコメントを列挙してみましょう。鈴木CEOのちょっと怖い側面も垣間見ることができます。 ① みなさん、いろんな場所からミーティングに参加されていると思います

          No.134 『HOYA』 鈴木CEOのおもしろコメント5選

          No.133 『日本電産』 永守会長が語る産業構造論

          日本電産の第3四半期決算説明会を音声配信で聴きました。「例によって資料の棒読みはいたしませんので、ポイントだけをお話したいと思います」。永守会長の口火はいつもこのフレーズで切られます。いいですね。冒頭の無駄な挨拶は一切なし。伝えたいことだけを自分の言葉でクリアに表現する。しかも内容がトンデモなく濃い。関社長の説明も実に簡にして要を得ている。ソフトな口調ながら言葉がズシリと重い。説明の時間はふたり合わせてもせいぜい15分。こんなにコッテリで濃厚な説明会はほかにないように思います

          No.133 『日本電産』 永守会長が語る産業構造論

          No.132 『ライオン』 獅子の疾走を待つ

          「ライオン」の個人投資家向け会社説明会をネットで視聴しました。前回の「松風」に比べたら圧倒的に馴染みのある企業でしょう。トイレタリー・日用品の業界については門外漢のわたしにとっても説明会の暖簾をくぐりやすい。気楽な気分で感じたところを書いてみたいと思います。 まず印象的だったのが掬川正純(きくかわまさずみ)社長の声。聴き心地が非常に良い(別にソチラの趣味があるわけではありません)。音声配信のみの説明会だったので、聴覚に意識が集中する分だけ余計に美声が際立ちます。プレゼンテー

          No.132 『ライオン』 獅子の疾走を待つ

          No.131 『松風』 風流さにインパクトを

          「松風」の個人投資家向け会社説明会を視聴しました。通常の決算説明会とは異なって、会社の概要や市場の動向、今後の戦略に多くの時間を割くのが個人投資家向け会社説明会の良いところですね。企業に初めて接する投資家・アナリストには実にありがたい。大半の説明会で経営のトップが説明してくださることも、企業に対する定性的な評価に立体感を与えてくれます。 松風の読み方は「まつかぜ」ではありません(事業再生のコンサルに「まつかぜ」と読ませる同名の企業があるようですが)。正しくは「しょうふう」で

          No.131 『松風』 風流さにインパクトを

          No.130 『人物雑感』 わたしの会社の尊敬すべき人物

          わたしが勤める金融機関の尊敬すべき人物を今回はご紹介したいと思います。もともと関西の血筋が色濃い企業なものですから(というのも語弊がありますが)、いわゆるシュッとしたエリート銀行員のみならず、「ナニワ金融道」を地で行くようないぶし銀の人たちも少なくありません。 社内向けに配信している内容を加筆修正したものなので、外部の方にとってはピンと来ないのであまり面白くないかもしれません。年末の余裕のある雰囲気のなか、「銀行にはこんな人もいるんだなあ」くらいの寛容かつ温かい気持ちで軽く

          No.130 『人物雑感』 わたしの会社の尊敬すべき人物

          No.129 『幸楽苑』 一見の印象

          幸楽苑ホールディングスの決算説明会を動画で視聴しました。アナリストとして幸楽苑に特別の思い入れがあるわけではありません。一般消費者としてお店を利用させていただいたこともありません。ただ、なんとなく面白そうと思い、説明会ののれんをくぐった「一見さん」であります。 「幸楽苑」。改めて社名に意識を向けると実に良い響きですよね。「幸せで楽しい」。まさに人生の「パーパス」が一言に集約されている。それにしても、ラーメン屋の店名に「幸楽」が多いと感じるのはわたしだけでしょうか。TBSのテ

          No.128 『本社にまつわる話とか』

          これは本当に雑感なのですが、本社にお金をかけない企業を投資家は評価する傾向が過去にはあったように感じます(今でもあるのでしょうか)。 「えっ、このシャビーな建物が本社なの?粗末なたたずまいがたまらなくイイねえ。サイコー!」。 外食業や小売業であれば店舗に、製造業であれば工場にお金をかけるのが本道であり、基本的に利益を生まない本社にはできるだけコストをかけない企業こそが望ましい。 実際、2000年代の初頭に株式市場から高く評価されていたワタミとヤマダ電機の本社を訪問したことが

          No.127 『スター精密』 名経営者との交友録

          スター精密の佐藤肇さんはわたしが最もお世話になった経営者です。初めてお会いしたのは2000年代の初頭、佐藤さんがまだ常務取締役の頃と記憶しています。わたしが勤める信託銀行の受託部門は当時、外苑前から歩いて5分の場所にオフィスを構えていたのですが、禁煙に対する世の関心が高まる中でもクリスタルガラス製の灰皿を応接室に置いている寛容な組織でした。「お、タバコが吸えるとは珍しい会社だねえ」。ソファにどかっと座るなり、当時の社長を差し置いてタバコをうまそうに吸い始めた佐藤さんの姿を鮮明

          No.127 『スター精密』 名経営者との交友録

          No.126 『決算レビュー』 「レンガ」の企業はどこだ

          3月期決算の企業による中間決算の発表が続いていますね。日々の決算説明や新聞報道にみなさんはどのような印象を持っているでしょうか。「コロナの影響はやはり厳しい」。確かにそうですね。航空業界の決算を見るにつけ、売上高の減少に対する限界利益の落ち込みがいかに大きいかを改めて実感させられます。 わたしにとって馴染みのある電機業界の決算を俯瞰して思うのは、「逆風の中においてこそ競争戦略の巧拙が鮮明化する」ということです。まあ、取り立てて新味のある感想でもありません。外部環境の風向きが

          No.126 『決算レビュー』 「レンガ」の企業はどこだ