寒い夜空と暖かい約束

口約束ってなんだろう。人によってはその場しのぎの守る気のない約束で、人によってはどんなものよりも重く感じる約束なのだと思う。

わたしは今大学3年生。今年の一月に成人式を迎えた。その日の夜、近くの会場を貸切って中学の同窓会が行われた。わたしは県外の大学に進学を決めたため、地元に帰ってきたのが久しかった。だから同窓会の時間が近付いてくるにつれ心臓がばくばく暴れ始めたし、柄にもなく緊張していた。

会場内には人が溢れていた。化粧で誰だかわからない女子もいれば、全く変わっていない男子。よくわたしを叱った先生。懐かしい空気があった。「久しぶり」「生きてたのかよ〜」それぞれが相手を懐かしむ優しい声があちこちから聴こえてくる。わたしも例外ではなく、仲の良かった女の子たちに抱きつき、挨拶を交わした。

みんながお酒を手にして、好きに会話をし、集合写真をとり、クラスごとに分かれ二次会が行われ、気づけば日付が変わっていた。何も言わずともわかる。もう終わりの時間だ。三次会、四次会と続くクラスもあったが、時間が伸びれば伸びるほど終わりの時間が悲しくなることを知っていたわたし達のクラスはその場でお開きになった。

みんな離れたくなかったのかもしれない。バスを使えば10分ちょっとでつく家まで歩くことになった。

「楽しかった」と誰もが口を揃えてほんのちょっと前の、あの現実離れした時間を懐かしんだ。夜風に火照った頬が当てられた。一般的には季節は冬なのに、寒さは感じなかった。





「またしよう」


誰かが言った。悲しそうな、寂しそうなそんなみんなの顔が上がる。


「うん、しよう」

「当たり前だよ!」

「やるなら夏休みかなぁ」

弾む声が次々と上がる。どこかほっとしていた。そうだ、私達にはまだ「また」がある。またいつか、また今度。それは単なる口約束にしか過ぎないけど、どんな言葉よりもわたしの悲しい気持ちを溶かしてくれた。

ひとり、またひとりぽつぽつと人が抜けていく。家路につくために輪を離れていく。その度にみんなが手を振り、言った。「またね!」笑顔で。

言霊ってことばがあるように、文章で書いて、印鑑を押したきっちりした約束ではなく、口に出しただけの約束はわたしの中に深く残っている。

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