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ベンゾジアゼピン減断薬 -「脂論(あぶらろん)」

割引あり

ベンゾジアゼピンに関するインターネット上の玉石混淆の情報の中でしばしば目にするのが「ベンゾジアゼピンは脂溶性が高く体脂肪に蓄積しやすいので~」で始まる「脂論(あぶらろん)」。
結論から申し上げると僕は現実のベンゾジアゼピンの減断薬の臨床において「脂論」は意味があるお話ではないと思っています。

ベンゾジアゼピンを含む向精神薬が脂溶性が高い薬剤であることは事実です。脂質に溶けやすい薬物は中枢神経系(脳)への移行性が高くなるためです。そして、脂溶性が高い薬物は脂肪組織に蓄積しやすく、体脂肪が多い患者さんでは薬物の体内分布容積が増加し、消失半減期が延長されることもまた事実です。

それで、そうだとして、そのことがベンゾジアゼピンの依存の成立や離脱症状の強弱、減断薬の難易度と関係があるでしょうか?
僕は「否」だと考えます。

ベンゾジアゼピンが体脂肪に蓄積することによる曝露時間の延長が依存成立を促進するだろうか? 慢性投与においては誤差の範囲と言えるでしょう。

痩せている患者さんではベンゾジアゼピンが「脱けやすい」ために、太っている患者さんより離脱症状が起こりやすい? 仮に万が一そうなのだとしても半減期が長いベンゾジアゼピンを用いれば影響は限定的であるはずです。

ただ、ネット上で散見されるこの2つの理論()には体脂肪への蓄積による曝露時間の延長⇒依存形成、あるいは体脂肪率の低さ≒ベンゾジアゼピンの体内からの消失半減期の短さ⇒離脱症状の現れやすさといった擬似的な因果関係を見出せて、不安になる方もおられるだろうと了解できることも事実です。

どうにも理解できないのが脂"デトックス"論(あぶらでとっくすろん)。

こういうのですね。

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