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博士と妻 第七回 はんこ

妻は結婚して名字が変わった。

となると必要なのがハンコである。

よくある名字であれば、たとえ持っていくのを忘れても、そこら辺の100円均一の店で買うことが出来る。

しかし、

「粟谷」という名字はそうはいかない。

タワーのような印鑑売り場ですら「粟田」「粟飯原」「粟野」「粟津」はあれど粟谷はない。

ふたりでハンコ売り場を見つけるたび、駆け寄っては肩を落とすことを繰り返していた。

やはり特注せねばならないか......

そう思っていた矢先に、なんと伊丹のイオンの文房具売り場で、ある機械が目に止まった。

ハンコ作りマシン。

その場で10分程度で自動作成してくれるというもの。

しかも1本500円から。

彫っている途中経過を見ながら待つ時間はなかなか楽しく、ピンクのアワタニハンコを妻は手に入れた。

珍しい名字の人は試す価値ありである。

他のイオンモールにもあるようで、妻の上司が「俺は茨木のイオンで作ったで〜」と、嬉しそうに話してきて盛り上がったそうだ。

これで銀行の手続きもバッチリと思いきや、妻はこういうこともあろうかと、銀行印は下の名前のハンコなのだそうだ。

やるな。

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