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Web3でも道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である

2021年からNFTを切り口に市場が盛り上がった暗号資産の市場ですが、完全にベアマーケットとなりました。次のブレイクスルーに向けて、世界的にプロジェクトの開発が行われています。また、今回の市場の冬の到来は暗号資産の市場だけでなく、世界経済も方向性を失っており、益々先行きが不透明になっています。

2021年のバブルだけでなく、2017-2018年のICOブーム以前から言われていることですが、ブロックチェーン技術(分散型台帳技術)のトークンを活用したプロジェクトはその高い投機性について、業界内外から厳しく言及されています。

また、2021年のHypeではVCも積極的に投機に参加した結果、これまでのスタートアップの資金調達と同様の見出しで巨額の調達が行われています。VCは他人のお金を預かって独自の情報に基づいて投資を行うビジネスです。一部のファウンダーの主張では「自分が開発しているプロトコルは公共財である」と言いますが、公園に投資するVC(特に日本で)はなかなかいません。真に公共財であるプロダクトは非常に限定的であると考えています。

資本主義は地続きであるため、不適切なバリュエーションをつけて巨額の資金調達をした人の首が回らなくなるような例が出てしまうことを懸念しています。


売上根拠のない巨額の資金調達

国内の起業家やベンチャーキャピタルに勤めている方と話したりインターネット上の記事を読んでいると、Web3という用語を活用して資金調達を行う例が非常に増えていることがよくわかります。

数ヶ月前からブロックチェーン技術への理解や開発力を特長としたベンチャー企業が「Web3」という看板を掲げ、他業界では類を見ないレベルの資金調達を行なっていますが、売上の規模やその成長規模とは計算が合わない(これら情報は公開情報から類推)ことが多々あります。

「Web3はグローバルが前提」というのが合言葉になっていますが、お金の流れを明らかにすると実態としてはSaaSと同じKPIになったり、トークンを活用しているからこそ生まれるネットワーク効果を活用できず、営業で1件1件開拓する必要であることがあとから判明することが多くあります。

また、市場の行く末の不確実性と売上の低い成長率が重なっていた場合、スタートアップは業界全体に傷を残してしまう可能性があります。

例えば、市場規模が100億円しかないにも関わらずバリュエーション80億円で資金調達を行うと、その分、投資家から期待される利回りと起業家が出すべきパフォーマンスの実現可能性が低くなります。市場規模が伸び悩んでしまうと、出資者側としても起業家側としてもステークホルダーに説明するのが難しくなります。

巨額の調達を行うことそれ自体は会社の次のフェーズに向けて必要であることもありますが、計画のない資金調達は投資回収の見込みが立たなくなってしまう可能性があります。意図せず十字架を背負う起業家が増えないことを祈るばかりですが、投資の失敗となって業界に傷を残してしまった場合、日本国内のWeb3スタートアップの資金調達環境は中期的に冷え込むことは容易に想像できます。これらの行為はエコシステムに対して不誠実です。


Web3も売上で見られる世界になる

タイトルのようなことをSNSで言うと「公共財を作っているのでそれは間違いである」と言われそうですが、ほぼ全てのブロックチェーン技術を活用している企業・プロジェクトは売上(Protocol revenue)の概算あるいは実績で資金調達の根拠を出すようになると考えています。

そもそも、トークンの販売は多くの場合、株式の販売と同じような仕組みであることが多くあります(全てのプロジェクトがそうではありません)。

VCからの資金調達でもDEXでの売り出しでも、1トークンあたりの価格と総発行枚数によって時価総額を概算できます。時価総額は、主に上場企業においてはPER、PSR、PBRなどの指標によって株価の割高/割安を判断しますが、DAO・DeFi・NFTプロジェクトで発行されるトークンが割高か割安かなどの議論は現時点ではされません。(一部、ブロックチェーンのレイヤーにおいてはいくら資金調達をしたから価格はこれ以上上がらないだろうという話は聞きます)

どんなプロジェクトでも、トークン価格の乱高下を中心に注目され「いいプロジェクト」や「悪いプロジェクト」だと判断されます。しかし、企業が売上や純利益をもとに株価の良し悪しを判断されるように、トークンを活用しているプロジェクトもProtocol revenue(プロトコルが生み出す売上)をまずみて投資判断がなされるようになってくると考えています。

企業が財務三表によって企業の健全性を測るのと同様に、トークンを発行するプロジェクトでも同様のことを行えます。Protocol revenueがいくらTresuryに回され、支払いがどれくらい発生しているのかといった情報の透明性があがるため「知識のある投資家が投資しやすい」状態が生まれるだけであり、トークンだから儲かるといったことはこれから少なくなっていくと考えています。


多くのプロジェクトは集権化していくが、ガバナンスは整っていく

コアチームがシェアのほとんどを持っていることが悪とされていますが、プロトコルが崩壊するリスクを上げるよりはコアチームに権利を集約させてしまい「n年以内にコアチームが売却した場合は持分のx%の強制的にバーンする」などのペナルティを設けることによってガバナンスの崩壊を避ける方向に動くようになると考えています。

公共財(Public goods)の性質を持つプロジェクトは、コアチームが莫大な富を築くようなインセンティブを持ちにくく、純粋な利益を求めるVCからも忌避されることが多くなっていくと考えられます。しかし同時に、事業性の高いプロジェクトや財団からのサポートやヘッジファンドからの流動性提供を受け、エコシステムを拡大していくようになっていきます。

ブロックチェーンを活用したプロジェクトでは事業性の高いものと公共性の高いものは異なるインセンティブを持つため、マスアダプションに近づくに連れてそれぞれ異なるエコシステムを構築し、異なる行動原理でそれぞれのコミュニティを形成していくようになるでしょう。


さいごに

資金が急速に流れ込むという意味でHypeそのものが完全に悪いとは言えませんが、HypeをHypeと理解しながらプロジェクトを波に乗せることと、Hypeを使って必要以上の資金を呼び込むことは異なります。後者はプロジェクトの質や資本効率が下がる大きな要因のひとつになります。

ビジネス的な観点で言えば、ブロックチェーン技術を起点に発生するネットワーク効果がトラクションに反映されたものが時価総額に反映されることでトレンドとしてのWeb3は熱狂から落ち着いていくと考えています。

道徳と経済、双方に配慮をするのは難しいですが、健全なエコシステムとして業界外から評価をいただくためには道徳と経済が揃うように努力していかなければならないと考えています。

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