マガジンのカバー画像

机上の空論シリーズ

4
比較的まとまった文章をシリーズ化したものです。 音声化を歓迎しています。 詳細は、各作品の末尾をご覧ください。
運営しているクリエイター

記事一覧

机上の空論シリーズ「アストロノーツ」

――――――――――――――― 人は星 言葉は光 光ったと思えば 星はもう 今は何をしているのか 何処にいるのか 遠い 遠い 「楽しかった」も 「哀しかった」も 受け取った時にはもう ずっと ずっと 遠く 光っているのか 消えているのか わからないまま 知らないまま 星と笑いたくて 星を温めたくて アストロノーツは宙を征く 大気圏は熱く 真空は重くとも 微かな光の形跡を 追ってゆく 負いにゆく 「星と出逢おう」 ただそれだけを

机上の空論シリーズ「水底の消息文」

――――――――――――――― 拝啓  朝や暮れの空気が少し冷たくなって参りました。  そちらは相変わらず、ひんやりと暗いのでしょうか。  少し前のお話ではございますが、寂しさに喘いでいた私にあなたが、心は器だと仰ったとき、私にはよく分かっておりませんでした。人の器という言葉は良く耳にいたしますので、そういうお話かと思い違いをしていたのです。  今、はっきりと分かりました。心は器なのですね。澄んだ硝子でできた球体で、上の方に小さな口が開いているようなものではないでしょ

机上の空論シリーズ「星は遠く」

――――――――――――――― 星を見ていた 小さな星を 大事にされるには えらくちっちゃいじゃないか そう思っていたら となりに星を取るおじさんがきて 「今日はまた一段と遠いなあ。」 なんて言いながら 星取り網を長くのばして 小さな星をすくってとった おじさん、あの星は遠いのかい? 「ああ、ずいぶん遠いよ。」 「あんなにちいちゃくなっちまって。」 遠いと、ちっちゃくなるのかい? 「光って見えるもんは、みんなそうさ。」 「お前さんも、ずいぶんと

机上の空論シリーズ「あるいはそれをナルシズムと」

――――――――――――――― 「必要とされたいの?」 「必要とされたいの」 「誰に?」 「必要としている人に」 「それって誰?」 「誰か」 「分からないの?」 「分からないの」 「必要としたいの?」 「……」 「分からないの?」 「分からないの」 「必要とされたいの?」 「必要とされたいの」 「誰に?」 「必要としている人に」 「いないんでしょ?」 「……」 「私じゃだめなの?」 「……」 「なんで?」 「君は私だから」 「私があなたじゃだめなの?」 「……」 「なぜ