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選手の視点に立ち、選手に寄り添った経営をするということ

僕は現役のプロバスケ選手ですが、3人制プロバスケチームを経営して6年になります。

3人制バスケ経営自体は非常にコンパクトな予算設計から可能になっており、果たして「経営」と呼んで良いレベルであるかどうか、自信を持っているわけではありません。

ですが、どんなスポーツチームに対してであっても、それがBリーグクラブに対してであっても、「負けていない」と考えている部分があります。

それは、選手の視点に立ち、選手に寄り添った経営をするということ。

いわゆる「アスリートファースト」や、フェンシングの太田雄貴会長が提唱している「アスリートフューチャーファースト」といったキーワードをチョイスして用いる場合もありますが、僕が心がけているのはもう少しレベルが低くて、原始的で、アナログで、泥臭い部分。

一言で言うならば、選手に対して誠実に向き合うということ。

選手にたくさんの報酬を支払い、科学的に最高の練習環境を用意し、精神的にも最高のパフォーマンスが発揮出来るチームとして迎え入れることが、選手にとってベストであることは間違いないでしょう。全てのチームがそれを理想に掲げ、目指しているだろうと思います。

しかし、最初からそれが出来るチームは限られていますし、「選手たちに最高の環境を用意することが出来ているか?」と問われたら、胸を張ってYesと言うことはまだ出来ません。予算も、取り巻く環境もまだまだ小さな規模です。今いる選手たちにも我慢してもらっている面が多々あります。

それでも僕に出来ることは、「もし自分が選手だったら、こうしてほしい」と思うことを自身の原体験から想像して、可能な限りそれを追求し、アップデートし、継続すること。今出来ることと出来ないことを明確に伝えること、チームの将来ビジョンと選手の将来ビジョンの擦り合わせを定期的に行うこと、嘘をつかないこと。

こういったシンプルなことが、選手に対して誠実に向き合うということだと考えています。そして、「いい子いい子」で選手を甘やかすことはアスリートファーストでも何でもないということも知っています。このわずかな肌感覚の差が、チーム運営では大きな差になってくると考えています。

さて、とても幸運なことに、うちには日本トップクラスの素晴らしい3x3プレイヤーたちが勢揃いしています。うちよりも予算があり、運営母体も素晴らしく、社会的な信頼性が高いチームも多くある中で、うちを選んでもらいプレーしてくれることには本当に感謝しかありません。

また、僕は現場で働くスタッフも「プロ選手」だと捉え、同じ価値観と基準で接するように心がけています。具体的な業務内容は異なりますが、向いている方向はプロ選手もスタッフも常に同じであるべきですし、その方向性を定める舵取りこそがチームスポーツの戦力を最大化させる秘訣だと感じているからです。

つまり、僕の中で選手(=プレイヤー)とは、広義の意味でのプレイヤーであり、タイトルもそのまま「選手・コーチ・スタッフ...etc」と読み換えて頂けたらと思います。

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僕は過去に移籍先のチームで初月から報酬が未払いとなり、そのままシーズン途中で経営破綻した経験があります。さらに多くの試練も重なり、あの頃は人生でもドン底の時期だったと思いますし、自身の価値観に今でも大きな影響を与えています。あれから数年、劇的に成長を遂げているバスケ業界ですが、まだまだ全体を見渡すと影の部分も数多く残されています。

今でも何か大きなことを成し遂げたわけでもないし、何か大きなことに影響力を持っているわけではないけれど、選手としての信念だけは曲げずに選択してきた自身の道と、この目で見て肌で感じてきた歴史と変遷だけは脳裏に焼き付いていて、これを誰かの何かに役立てていきたいと思い、まだしつこくコート上に立っています。

下記、夏選手のブログを読み、奇しくも自身と重なる部分もあって当時を思い出し、自分が出来ることと言えば彼の相談に乗ることぐらいかと無力さを感じると共に、正しいと思うことがあるならば、自分がそのやり方で結果を出すことでしか環境を変えることは出来ないなと。

そういう意味で、僕がこの業界で成し遂げたいことはまだ残っているのだろうなと強く感じました。


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