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空虚な街、東京

「どこへ行っても人でごった返している。」「眠らない街、東京」とはよく言うが、全くそんなことはないと僕は思う。あるいはこの街には誰もいないのかも知れない—。

とはいえ東京には、そこを礎にして長年自分たちの暮らしを送っている人たちが一定数存在する。僕もその部類に属していたのであるが、四半世紀以上その暮らしを続けていて感じることは、その人たちの"あきらめ"である。

東京は日本の首都であり、経済や文化の中心といえる。しかし、その渦を起こしているのは街そのものではなく、紛れもなくそこにいる人々である。
そういった人たちが東京という街に風を吹かしているし、それは何らかの意思に基づいているものと思う。
僕が住んだ町も、ここ5年位で様変わりした。かつては何でもなかった住宅地を練り歩く同世代の若者を目にすることが増えた。この変化は皆が感じるものであるかは分からないが、にわかに吹いている風を僕は感じざるを得ない。しかし、先住の人々はその風に抗うことをしない。この先どこへ向かうのかを知ろうとしない、ゆらゆらと漂うだけの精神的流浪の民。

東京という街は、空っぽな器。経済や文化を牽引するための土壌でしかない。この街の未来は、ここにいる意思ある人々の手に掛かっている。なんて数奇な街であろうか。

哀愁と愛執を撹拌させつつ、僕はこれを書いている。おそらく日本で1番人が行き交うであろう交差点を見下ろしながら。
東京—。あぁなんて空虚な街なんだろう。これから何年もその姿を見ているよ。ゆらゆら。

#エッセイ #コラム #ひとりごと #東京 #好きな街