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地域で働く

こんにちは、グラフィックレコーダー、とんぷです。ただ、今回はグラフィックレコーダーではなく、地域おこし協力隊として、書いていきたいと思います。
僕は今年の4月から岩手県九戸郡にある洋野町という人口1万5千人ほどの町で仕事をしています。岩手県と青森県の県境に位置する小さな町です。

奥さんの実家からも程よい距離で、イラストの仕事も並行して続けられるということで、この町に地域おこし協力隊として移住してきました。

自分の中で、将来どうやって働くか考えて、色々調べつつ、地域おこし協力隊という形を選択しました。2023年が終わろうとしている中で、地域おこし協力隊としての活動だったり、自分なりに考えていたことをまとめてみました。今後、地域おこし協力隊として働くことを考えている人の一つの参考になればと思います!

そもそも地域おこし協力隊って

総務省によると「地域おこし協力隊」とは、主に都市部に住んでいる人が少子化や過疎化などが進んでいる地域に移住して「地域協力活動」を行いながら定住・定着を図る取り組みです。
要するに、人口が減っている地域に働き手に移住してもらい、その地域で継続して働いてもらおう、という制度です。各自治体が申請して、国から活動に対するお金をつけてもらい、募集を行っています。
よく地域おこし協力隊は市町村の税金を使って募集や活動が行われている、と思われガチですが、実際には国からの補助金が使われて、地域おこし協力隊の報酬や活動費が出されています。

2009年(平成21年)から始まり、現在は卒業した人を含め、全国で6000人以上の隊員がいるそうです。

地域おこし協力隊には、任期があり、募集している自治体によりますが、1年〜3年の活動期間を経て、卒業という形になります。
仕事内容は主に「農畜産業、林業、漁業」といった一次産業や「伝統文化・技術」を継ぐような仕事、「地域コミュニティ活動」「地域産品の開発」「地域の情報発信」などになります。

長くても3年後には卒業し、仕事がなくなるため、その任期中に地域の中で仕事を作ったり(起業)地域の企業に就職したりしてしますが、定住自体は強制ではないため、実際にその地域や近隣市に定住するのは、約6割くらいのようです。

地域おこし協力隊で起業する際は、起業支援金として100万円補助がつくことから、その地域で起業する人も多く、起業目的で地域おこし協力隊になる人も多いものと思います。

地域おこし協力隊の雇用形態

大きく分けると2つになると思います。(細かく見ると自治体ごとに違いあると思いますが)
それは雇用型委託型です。

総務省が発行している「地域おこし協力隊の受入れに関する手引き」では、こう書かれています。

各地方自治体の地域おこし協力隊の任用の形態等については、主に以下の2つになります。
① 会計年度任用職員
② 地方自治体が任用せず、委託関係を締結

①が雇用型、②が委託型ですね。

雇用型
月〜金で役場に出勤して働く、ほぼ公務員に近い働き方になると思います。そのため、メリットやデメリットも公務員に近いです。
移住者向けイベント企画や空き家相談など、仕事内容も決まっていることが多く、役場からの指示を受けて、仕事することが多いようです。地域おこし協力隊の募集形態もやってほしいことがある程度決まっているためか、雇用型の方が圧倒的に多いです。

ただ、公務員とほぼ同様の扱いになるため、基本的に副業することは難しいものと思います。役場の外に出て活動するにも、許可どりが必要になってくるので、自由に活動したい人にとっては少し窮屈かもしれません。

ただ、副業できるかどうかはその自治体の副業規定にもよってきたり、担当者によってもだいぶ変わるので、全く自由じゃないというわけでもありません。事前に雰囲気をリサーチできるといいと思います。

委託型
こちらは、個人事業主に近い働き方になります。誰かから具体的に指示をもらうのではなく、自分で考えて、自分で仕事を作るタイプです。
雇用型と違い、副業などについても柔軟に対応できるケースが多いです。

自由度がかなり高いですが、マジで仕事の指示とか一切ないので、会社員が長い人とかは結構びっくりするんじゃないかな、と思います。
全部自分で考えて、自分で動くタイプ。それができないと自由度が高すぎてきついと思います。移住して、もし知り合いがいない地域にポツンとほっぽり出されたらきついですよね。

もちろん、自由度が高いと言っても、やることについてはしっかりと自治体に活動報告する必要があります。なんでもありの制度ではないので。
自分で考えて、コツコツプランニングできる人なら、副業も可能なので、卒業後も協力隊のミッションと並行して、起業準備もできるタイプだと思います。

洋野町での自分の仕事

多分、前述の雇用形態の書き方でわかるかもしれませんが、僕は委託型の方で洋野町で働いています。
自治体には直接雇用されず、地域のまちづくり会社の中に所属しながら「空き家の利活用」をミッションとして、空き家改修にとりかかっています。

洋野町では、自由提案枠という募集があり、自治体に洋野町でこういうことがしたいです!とプレゼンを行い、それが通ると採用されるというもの。
僕は、簡単にいうと「空き家改修を通じて、洋野町に訪れる人を増やしたい」というプレゼンをちょうど去年の12月ごろに行いました。

そのため、仕事内容はそのプレゼンに基づいたものです。自分で提案したのだから、自分で考えて動いています。(もちろん定期的に上司や役場に相談しに行ってますけど)

元々2年間グラフィックレコーダーとして、個人事業主をしていたため、自分で考えて動くことには多少慣れていましたが、その経験がないと少しきつかったかもしれないです笑。

9ヶ月間でもかなり色々チャレンジさせてもらった

もちろん大変だったこともありますが、色々役場に提案させていただく中で、かなり楽しく仕事をさせていただけたな、と思っています。ざっくりですが、4月から12月までの活動を載せます。

4月 地域の方々にご挨拶
着任してからは、まずは地域への挨拶。新しく地域おこし協力隊として移住してきました!というのを洋野町の飲食店に行って話を聞きに行ったり、空き家の情報を伺ったりしていました。
挨拶でイラストつき名刺を配っていたのですが、イラストが描けるということで、地域マップ制作なども仕事として担当させていただきました。正直、空き家改修担当というより、イラストの方で顔を覚えられたと思います笑

5月 範囲を広げて岩手全体を回る
洋野町から移動範囲をさらに広げて、岩手県内各地やさらに足を伸ばして、宮城県内の空き家にまつわるイベントまで視察してきました。近隣の地域おこし協力隊でSNSをやっている方などにも連絡して、挨拶に行かせてもらったり、お互いの情報やできることをシェアしましょう、ということで動いていた月になります。

6月 空き家の改修作業に取り掛かる
4、5月で空き家の情報なども収集する中で、どの空き家で改修作業をするか、また宿泊業許可などの手続きについて調べていた月です。改修にかかる経費や、申請手続きでのNGなどで、着手する空き家について二転三転しました。空き家で宿泊業をしたい、となった時は、なかなか全ての条件が整う理想の空き家というのは見つからないもので、空き家改修でゲストハウスしている人は本当にすごいと思います。(DIYより申請手続きの確認の方が疲れたかもしれない)

7月 初めてのおてつたび
本格的にDIYスタート。この月から空き家改修にずっと利用したかった「おてつたび」について、許可をいただき、漆喰塗りの作業を手伝ってもらいました。作業以外にも木工体験やみんなで花火をして、洋野町にまた来たい!と言ってもらえたし、実際に洋野町にプライベートでまた来てくれる人が現れたので、その効果は絶大だったと思います。

8月 おてつたびとクラウドファンディング
1回目が好評だったこともあり、すぐに2回目のおてつたびを募集。漆喰塗りに加えて、フローリングはりを手伝ってもらったり、夜には天文台近くまでみんなで星空を見に行きました。また、空き家改修について、協力隊の活動費だけでは改修できないことから、クラウドファンディングを実行。ページ作りや毎日の発信、協力のお願いなどで肉体的にも精神的にもバタバタした月。渋谷のラジオにもクラウドファンディングの告知をさせていただきました。

9月 クラファン100万円達成
クラウドファンディングは、空き家の改修費を集めると同時に、洋野町について、広く色んな人に知ってもらう、という目的がありました。リターンの準備やどうやったら支援いただけるか、悩み、試行錯誤した月です。おかげさまで、8月15日から9月30日までの45日間でのべ114名の方にご支援いただき、目標金額を大幅に上回る勢いで達成することができました。

10月 埼玉県狭山市で洋野町フェア
地元である埼玉県狭山市にあるカフェの店長から、洋野町の商品をフェアという形でうちで出さない?という提案から始まった企画。空き家とは全然関係ないですが、洋野町の関係人口作りとPRも兼ねて、取り組みました。どのお店のどの商品を置くか、考えつつ、お店に企画を提案しに行き、カフェと繋ぐ、ほぼバイヤーの動きをしていた月。おかげさまで売れ行きは好調で、追加発注もあり、フェアは来年の1月末まで行うことになりました。

11月 クラウドファンディングのリターン発送
クラウドファンディングは支援をいただくものなので、支援に対しては感謝の意も込めて、当然リターンを発送します。めちゃくちゃありがたいことに114名のご支援をいただいているので、リターンとしての商品発送やイラスト制作でガリガリ活動していました。洋野町の特産品等を送らせてもらったので、洋野町のPRにもなれば、と思います。あと私ごとですが、この月に入籍しました。

12月 1階床の改修作業再開
1階の床改修で高さが合わない事案が発生。素人ながら、工務店さんに聞きに行ったりしながら、高さ調整にどうしたらいいか調べながら、木材の調達をしたりしています。
今月中に土台の床改修ぐらいできればいいな、と思っていますが、寒さで筋肉が硬くなりがちなので、基本的には無理なく改修作業をしている感じです。

+α インスタグラムの発信
4月から個人で使っていたインスタグラムを洋野町の活動レポート発信に変えて、投稿していました。4月から7月末までは毎日投稿していて、その間でフォロワーが300人くらい増えましたが、8月ごろからマジで毎日の投稿ネタを探しながら生活するのがキツくなってきて、今は結構サボっています。
毎日投稿すると見られやすくはなる、というのがよくわかったので、投稿内容を練り直して、また企画的に発信に使いたいな、と思います。

4月の着任時に、年間のざっくりとした活動スケジュールを出すのですが、そこまで軌道修正はしないで、進められていると思います。もちろん、洋野町フェアのように、突然の声かけから始まったこともありますが、洋野町をPRする活動やイベントについても、スケジュールに盛り込んでいたので、そこまでハズレまくってはいないんじゃないかな、と思います。
何かしら活動の参考になれば。

地域で働く感覚

地域おこし協力隊は基本的には、3年間そこで仕事を行い、さらにそこへ定住することを目的としている制度です。その地域に住み着いて働くことになるので、もしその地域と感覚が合わない場合、3年間は結構悲惨だと思います。地域の人と話が合わない、やりたいことができない、同世代の知り合いが増えない、など。

僕自身も実際2年前から、実際に洋野町に来たりしながら、町の雰囲気や、その町での地域おこし協力隊がどういう見られ方をしているかなど、ヒアリングした上で、洋野町に来ることを決めました。

協力隊になるまでに夏と冬で合わせて3回洋野町にきています。もちろん色んな理由を考慮して、洋野町を選んでいますが、もし地域おこし協力隊になりたい場合は、事前に知れることは直接見に行ったり、聞きに行って、選択する事をお勧めします。

あと、できれば先輩の地域おこし協力隊がいる地域で、先輩にどんな状況か確認できるのが望ましいと思います。SMOUTなどのサービスで、地域おこし協力隊の担当者などに連絡がとれるので、そこを通じて、地域に話を聞きに行ったりしてみてほしいな、と思います。

地域おこし協力隊で起こるトラブルについて

ここから先は、僕の話ではなく、事前に調べたり、聞いたことのある話についてです。
地域おこし協力隊になる前に、それなりに情報収集はしていました。YouTubeでも「地域おこし協力隊」と検索をかけて、上の方に出てくるのは「地域おこし協力隊の闇!!」といったタイトルのもの。
どういうケースで揉めることがあるか、またどういう注意が必要か、そこを考えておく必要はあると思っていました。こんなケースで揉めるかも、っていうことを載せておきます。

ケース1 活動費の勘違い

地域おこし協力隊では、隊員1人あたりの活動に対して、上限480万円の補助金がつきます。自治体にもよりますが、そのうちの約280万円が報酬費、いわゆる給料になります。

じゃあ残りの200万円は活動費に充てられるのか!ならめちゃくちゃ色々事業ができそう!!と思われガチなのですが、実際に活動費に使えるのは、自治体にもよりますが、よくて50〜100万円くらいなんじゃないかなぁ、と思います。

というのも、200万円は保険料や住居手当、パソコンや社用車などの労働環境のリース代などに使用されるので、ガッツリ減ると考えた方がいいです。

また、活動費については、基本的には公共の利益になるものにしか使えません。活動とは関係のないものや、地域おこし協力隊卒業後に自分の所有物になるものには原則使えません。

そこを知らずに、200万円を活動に使えると思い、揉めるケースも多いそうです。

ケース2 住民との距離関係

首都圏だとあんまりない、と思っているんですが、地方だと結構知らない人とも道ですれ違う時に挨拶します。まぁ、それだけ人通りが少ない、というのもあるんですけど、人との距離感が都会よりグッと近い、と思います。

そのため、自分のやりたいことだけやってればいいや!とか、必要ないものはいらない、しない、って感じだと揉めるというか、普通に嫌われると思います。

嫌われても別にいい!仕事さえすれば!と思うかもしれないですが、人間関係から派生して、仕事に影響が出るケースもあるようです。

YouTubeで見た事例だと、地域に人が来る仕組みを作りたい若者と、地域の慣習や手伝いをお願いしたい住民でバチバチにやり合っているケースって結構あるんですよね。

若者は今まで通りのやり方じゃ人は来なくて、地域が廃れる!!ってスピード感を持って仕事しようとするけど
住民は今までの習わしを大事にしているために、それに参加しない人を冷たくみたり、そもそも人をたくさん呼びたいわけじゃなかったり、とか

そのまま、地域のトップに嫌われ、住民から無視されたり、嫌がらせを受けて、精神を病む、みたいな。

僕自身は、割とその地域のスピード感に合わせることとか、別に参加の義務がないとしても、地域行事に出ることって結構大事だと思っています。少なくともそこで住んで生活していくつもりなら。

ケース3 急な変更や中止

地域おこし協力隊から空き家改修して、ゲストハウスやカフェにみたいな事例って結構調べると多いんですけど、元々空き家の持ち主が使ってないから、って貸してくれていたものが、空き家改修後に「やっぱり返して」ってなるケースもそれなりに見たり、聞いたりします。

改修した側からするとタダ働きで空き家を改修させられて、溜まったもんじゃないと思います。
だからそういうケースがあるもんだと割り切ってやるか、事前にしっかり契約などを取り交わしておく必要があると思います。ぶっちゃけ立場はオーナーの方が強くて、返せ!って言われたら、返さないといけないんじゃないかな、と。

僕も空き家の改修をしていますが、今の空き家については、前者で結構割り切って取り組んでいます。持ち主がまたそこで住みたい、というならそれでもいいかな、と。

僕自身の考えは、この空き家改修を通じて、洋野町に関わってくれる人を増やすことなので、今年だけでもそれなりに満足はしています。

自分がやりたいことをやる制度ではない

これは、個人的な考えではあるんですけど、地域おこし協力隊は、人が減ってしまっている地域のための制度であって、地域で起業を考えている人のための制度ではないと思うんです。

田舎ぐらしに憧れて、移住してから

住んでみてやっぱり違った!
この地域に人を呼ぼうと頑張ったのに!
この地域は最悪だ!


ってSNSとかで言いふらすのは違うかな、って。

その地域で住むことを考えるなら、ある程度下調べしておくか、もしくはある程度の関係性を持った上で、その地域に移住する方がいいんじゃないかな、と思います。
もちろん、住んでみたり、表面上ではわからない事もあると思いますが。

ただ、地域との空気感、距離感を理解しつつ、その地域で起業、就職するには、めちゃくちゃ働きやすい制度だとも思っているので、上記を踏まえて、自分の行きたい地域というものを探してもらえたらと思います!

最後に、洋野町に移住してよかったことと悪かったことだけ書いて終わりにします。

よかったこと
・海産物がめちゃくちゃ美味い。びっくりした、飛ぶぞ
・夏は比較的涼しい。首都圏と5度は違う
・夜の星がめっちゃ見える綺麗
・飲食店に顔出すと暖かく迎えてくれる、嬉しい
・Gが家に出ない
・お店が少ないから逆に選択肢に迷わなくて楽。あと無駄遣いが減った
・自然の景色がきれい。山も海も平原もある
・案外声をかけると知り合いが遊びに来てくれる

悪かったこと
・テレ東の坂道の番組が見れない
・冬の朝は道路が凍る。寒い。5度違う
・海が近いから、窓際にステンレスのコップ置いていたら錆びた
・ハサミも錆びた
・セルフのガソリンスタンドが近くにない。ガソリン代めっちゃかかる
・都心とかで美味しいと思っていた海鮮物が、そこまでじゃなくなる
・居酒屋が21時ぐらいには閉まる




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