繋がれたイヤホン

私の髪の毛は先っぽ5センチくらい、黒髪の中に少し明るい茶色の髪が混ざっている。

私の髪の毛が全て茶色だったあの時、隣には煙草が好きな彼がいた。

いや、彼がいるようになってから茶髪にしたんだっけ。

煙草を吸う人は嫌いだったけど、好きになってしまってから居酒屋で「吸ってもいい?」なんて言われちゃってから、何でもない日のプレゼントに、いつも吸ってる煙草をプレゼントしたら喜ぶかな、なんて、胸ポケットから見えた英語を覚えて携帯にメモした。

電車の中ではよく一緒に音楽を聴いた。

彼の携帯にイヤホンを繋げて、いつもleftの方を私の耳に入れてくれた。私の茶色い髪をかき分けて。

ある日私は黒髪にした。

真っ黒の髪を見て、「いいじゃん」と言ってくれた彼は、やっぱり煙草を咥えていた。

レイトショーで適当に選んだ映画が始まる前、YouTubeで一緒に予告動画を見た。何も事前知識がなかったから。

彼はいつも通り、leftの片側のイヤホンを耳に入れてくれた。私の黒髪をかき分けて。

顔を寄せて、イヤホンで繋がれ小さな画面を見ていた私たちは、レイトショーの中の男女が突然別れを迎えてしまったみたいに、離れてしまった。

※※※

服に煙草の匂いが染み込むことも無くなった今、私はやっぱり黒髪だけど、先の方だけ、少しだけ茶色い髪が混ざっている。

色が抜けた先の部分を指で挟んで見つめては、そろそろ切ろうかな、といつも思う。

まだ、いいか。

簡単にゴムで束ねて整える。

誰とも繋がることもないワイヤレスのイヤホンを両耳に入れて、歩き出す。

最後まで読んで下さりありがとうございます。いい日になりますように。