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ケース2 『優香21歳』※出会い系シリーズ 

待ち合わせは街中のカフェ。
彼女の指定はスタバやタリーズではなく英国屋だった。
落ち着いた雰囲気の喫茶店で彼女と対峙する自分の姿を想像してみた。

『ジャケットで行くべきだな』

意気揚々と現地に向かうと、彼女は既に席に着き1260円のシフォンケーキのセットを注文し終えていた。

『先に注文しちゃいました』

屈託なく微笑む彼女。
きっと良家のお嬢様なんだろう、むしろ清々しいくらいで好感が持てた。
スレンダーというよりガリガリにも見えるその華奢な体にニットのセットアップが良く似合っていた。

僕はミルクティーの単品を頼み、ひとまず単価をナンピンした。

才媛らしく、彼女はサバサバと過去の男性遍歴を披露した。直近は医者とお付き合いしていたと言う。

『都度都度5貰ってました』

僕は努めて平静を装ったが、ティーカップを持つ手が小刻みに震え、アールグレイの津波はソーサーを超えてテーブルにまで及んだ。

お付き合いする為には金が要る。そう学習した僕は、前回と同じ轍を踏まぬようさりげない口調でこう切り出した。

『初回なので今日は3でどうでしょう』

彼女を得る為に出せるギリギリの額を提示した。

彼女は拍子抜けするほどあっさりと、『いいですよ』と僕の愛のカタチを受け入れた。
こうして初対面から30分後、僕たちはめでたくラブホテルを目指した。
道中彼女は決して横に並んで歩こうとせず、縦列のスタイルを所望した。おかげで会話は随分としにくかった。

空き部屋のパネル表示をサッと俯瞰した。
さりげない仕草でDランクの部屋のボタンをスマートに押す。

第一関門はクリアした。満室時の対応を用意していなかった僕はここまでの流れに胸を撫で下ろす。全ては自然な雰囲気の中進んだ。
部屋に入ってすぐに彼女の育ちの良さを再認識した。彼女は自分のミュールと僕のスニーカーを揃え、出る時に履きやすいようくるりと回して並べた。

『参ったな』

僕は彼女の内面の美しさに脱帽した。
入室後の彼女は実に手際が良かった。

『先にシャワー浴びてくるね』

彼女は自分のポーチを掴み、脱衣所へと消えた。
15分で出てきた彼女は備え付けのガウンを着、ポーチ片手に、

『シャワー浴びて』と僕を促した。

早くも僕を欲しているという彼女の気持ちが伝わり、承認欲求は大いに満たされた。
脱衣所に行くと洗面台の真ん中付近に未使用の歯ブラシが置いてあった。彼女の気遣いにまたもや舌を巻いた。よく見るともう一つの歯ブラシも使用したようだった。後でもう一度磨けるようキチンと置かれている。

歯磨きとシャワーを済ませてベッドへ向かうと、ベッドルームは彼女の手によって既に薄暗く調光されていた。

『恥ずかしがり屋なんだな』

そう思ったのも束の間、彼女はやおら僕自身を口いっぱいに頬張り、そしてしごいた。
じっくりと焦らしながら愉悦のポイントを探り当てるイメージトレーニングをしていたにもかかわらず、彼女は僕にそうはさせなかった。

請われるままに正常位スタイルでひとつになった。
彼女は僕の背中で脚を組み、まるで騎手が手綱を捌くような見事な呼吸で僕の上下運動を加速させるべく脚を動かす。
喘ぎ声は規則正しいリズムを刻み、彼女は顎を突き出した。時折『大きいっっ』と合いの手も入った。
数分後、すっかり彼女のペースに飲み込まれた僕は呆気なく、果てた。

『ま、少し休んでリベンジすればいい』

目を閉じてからほんの1分後、しばしのまどろみの中で彼女の声を聞いた。

『先に3いいかな?』

急用を思い出したと言い、裸の彼女はポーチを掴み一人で風呂場へと向かった。
洗面所から彼女の歯磨きの気配がした。急ぐ割に入念に磨いている様子だ。入れ替わりにシャワーを済ませ風呂から出ると彼女はすっかり身支度を整えていた。先ほどまでのタメ口はなりをひそめ、彼女は英国屋の待ち合わせの時のような敬語に戻った。

『今日はありがとうございました。またよろしくお願いします』

紋切り型の挨拶が僕を現実に引き戻した。

『もっとしたたかに行かなきゃダメだな』

繁華街の喧騒を尻目に、僕は途中下車した彼女探しの為の電車に再び乗り込み、次の停車駅を目指した。

【解説】

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