見出し画像

「壁を高くしたい」と言われたら……

道路に比較的近いところに家が建っているお宅でエクステリア(門構え)の設計を依頼されるとき、よく要望であげられるのが

「通りから見られたくないので、道路に沿って高い壁を立ててほしい

というものです。このように言われて素直に高い壁を立てたプランを描くと例えば次のスケッチのようになります。


通常の重量コンクリートブロックを積んで立てられる壁の高さは2.2mまでですが、一般的には2m以内とすることが多く、このスケッチでは1.9mの壁を立てているのですが、肝心の目隠しをしたい窓まで壁は届きません。窓は1.9mより上にあるのです。(赤丸のところ)
これでは目隠しの意味がありません。こちらのお宅は地盤が40cmくらい上がっていたので道路と同じ高さに家が建っている場合よりも窓が高い位置にくるので尚更です。
この窓の内側はダイニングルームで、窓のすぐ内側にダイニングテーブルが配置されているのです。
ダイニングルームから道路側はよく見えるので余計に道路からの視線がきになるのだと思います。

でも本当に道路からダイニングルームは丸見えなのでしょうか? 答えはノー! 一般的に背が高い男性でも180cmか190cmくらいですよね。壁が1.9mなら、背が高い方でも目の位置は壁より下になり壁の向こうを覗くことはできません。それにこちらのお宅では、窓はさらに上なので、赤丸のついた窓から部屋を覗くことは不可能です。
唯一この窓越しに室内を覗くことができるとしたら、お隣の二階からだけなのです。
でも、物理的にそれが正しいとしても、中に住む人は通りの気配が気になり、目隠ししたいとおっしゃいます。

その場合実際に高い壁を作るより効果的なのが次のスケッチのようなプランなのです。

お客様が「高い壁」と言っているのに、敢えて壁は低くして花壇を作り、そこに季節感が感じられる高木を植えるのです。
1枚目と2枚目の赤い丸のところを見比べてください。2枚目だと例えお向かいの二階からでも木の影になって、室内を覗くことは難しくなるのです。このアイディアが良いのはもう一つ理由があります。ダイニングから窓越しに木が見えるということです。花が咲く季節には窓越しに花を楽しめ、真夏には木漏れ日がチラチラと美しくダイニングテーブルを彩ることでしょう。秋には紅葉が楽しめ、葉っぱを落とした後の季節には小枝越しにたくさん陽の光が差し込み暖かい気持ちになれるのです。

そうです! 高い壁を作らずともちゃんと目隠しをすることができるのです!

ところで通り沿いに「高い壁」を建てたい理由って目隠しだけでしょうか。他には?

通り沿いに「高い壁」を建てたいと思う理由は多分次の3つが主だと思います。

1.目隠し
2.侵入防止
3.家を豪華に見せたい

上にも書きましたように「目隠し」したい場合には2枚目のスケッチのように手前に花壇を作り高い木や植物をアレンジして植えるのがもっとも効果的で、雰囲気も良くなります。デメリットは植木の手入れが必要になることくらいでしょうか。植木の手入れについてはまた別のところでお話しします。

それでは2,の「侵入防止」が目的のとき2枚目のスケッチでは効果がないでしょうか? NO!   そんなことはありません。木立の間や下草を掻き分けながら敷地内に入っていくのは結構大変なことです。善意の来客はそんなことするはずがありませんし、悪意を持った侵入者なら、例え高い壁を立てたとしても容易に侵入することができるでしょう。外回りでのセキュリティは「家の中と裏の庭」に入られないこと」と割り切って、門周りの計画を進める方が豊かなデザインが生まれます。

それでは最後の「家を豪華に見せたい」という場合、次のスケッチのようなプランも考えることができます。

石積み風の壁の上に豪華なロートアイアンのフェンスをつける。洋風なイメージの建物ともよく調和します。


「壁を高くしたい」という一言でもその真意? 本音? は様々です。

言葉の裏側にある本音を会話の中から引き出してからプランを考えるようにしています。

一番最初にあげた「高い壁」を作る理由が「目隠し」の場合、ブロックを積み上げたのでは窓が隠れないときに

この写真のような目隠しフェンスを3段重ねたデザインのものを配置するような計画はNGです。

せっかくの家の趣が台無しになってしまいます。

「高い壁、高い壁」と依頼して、もし最後の写真のフェンスのような提案が出てきたら、ちょっと残念ですね。

「うちは予算が少ないから」などと諦めないで、嫌なものは嫌だとはっきり伝えるようにしましょう。これは予算の問題ではないからです。

以上「壁を高くしたい」について考察してみました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?