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手作りマドレーヌ VS ベルグの4月(続き)

ベルグの4月の庭

※実際のお客様の話ですが、お名前は仮名にしております。トップの写真はイメージです。今から8年くらい前のお話です。

メキシコの思い出を詰め込んだ庭が完成する頃、井上さんの家の前で巻き髪が美しい女性に声をかけられました。
「國正さんですよね? 井上さんからきいたのですが庭のこと相談に載っていただけませんか?」
それが谷さんとの最初の出会いでした。谷さんは井上さんのお隣。これから建つ方ではなく井上さんより3年ほど前に家を引っ越して来たそうです。

谷さんのお宅の庭は、最初に建てた時にはよくわからないまま芝生と道路側は生垣の代わりにコニファーという針葉樹の種類を並べて植えてあったのですが、虫が大の苦手で手入れをほとんどしなかったため、芝生は雑草の中に埋もれてしまい、コニファーは太って道路の方にはみ出すように生えていました。ざっとお庭を見せていただいた後、ゆっくりお話ができるように部屋にあげてくださいました。

玄関ホールに入るとすぐに正面にアートフラワーのリースがかけてあります。グレイッシュカラーのグラデーションのセンスのいいリース。

インテリアは全体に白を基調にした中小花柄のローラアシュレイの壁紙が空間を引き締めています。
その中にオフホワイトのスタンドピアノがありました。そのピアノの脚が、なんと猫足です。私はそんなピアノがあることすら知りませんでした。
「このピアノは特注なのですか?」思わず聞いてしまいました。
「ああ、これね。これ既製品で出ているんですよ」

室内の仕上げから調度品まで全てが、白、オフホワイト、ブルーグレイの3色で統一されていて、ディテールがとにかく瀟洒でした。

「さっき駅の方に行ったので「ベルグの4月」のガトーショコラ買って来たんですよ」(「ベルグの4月」はその辺りで有名なパティスリーです)と言いながら、保温カバーを被せたテイーポットとウエッジウッドのカップとガトーショコラを載せたお揃いのお皿をリビングのテーブルに運んで来られました。

ガトーショコラをいただきながらお話を聞くと、谷さんはアートフラワーを習っていらっしゃるそうです。今は習うだけですが、教えられる資格も受かったので将来はご自宅でアートフラワーのサロンを開きたいと。
メインはリビングを使う予定ですが、心地よい天気の日にはお庭でもお教室が開きたいとも思っていらっしゃるようです。
小学校2年生のお嬢さんが一人っ子なので、遊べるようにもしたい。お休みの日にはバーベキューをしたがるご主人。そんな話をしてくださいました。
谷さんのお宅のインテリアを見ていて私はその頃から使い始めていたあるものが頭に浮かんでいました。
それは、発泡スチロールです。発泡スチロールをお庭で使うというとギョッとするかもしれませんが、発泡スチロールの上にウレタンを吹き付けて固めると表面が硬くツルツルになります。意図的に尖ったもので穴を開けたりしない限り、屋外に置いておいて壊れることはまず、ありません。

発泡スチロールは自由な形に成形できるので、谷さんがお好きな瀟洒なインテリアの装飾をお庭で演出できると思いました。

谷さんも最初は半信半疑でしたが、実際にサンプルで作ったひまわりの形のレリーフをお見せして納得してくださいました。数回の打ち合わせをしてできたのが次の写真のお庭です。

太ったコニファーを全部伐採して道路側が背もたれとなるベンチを作りました。その壁にレリーフとニッチ(アーチ状の凹み)そして室内と呼応するようにエレガントな雰囲気のモールもつけました。雑草だらけだったお庭は白いタイル貼りのテラスに。テーブルを出せばベンチでお茶をしたり、少人数のアートフラワーの教室もひらけます。


こうしてお隣どうし、趣味が全く違う奥様同士のお庭は全く違う雰囲気で完成しました。

メキシカンな雰囲気の食器と手作りお菓子とパイン材の家具
ブランド物の食器と有名店のケーキと瀟洒な猫脚の家具。

お庭のご提案のために最初にお客様に行ったとき、お客様のどんな言葉より雄弁に好みを物語るものは、インテリアや食器なのです。
このお二人はたまたまかもしれませんが、訪れた私をもてなしてくれるお菓子もなんとなくインテリアの嗜好と合っているような気がします。

よく「○○風にしてください」とおっしゃる方がいますが、それはとても危険です。○○風ってその人によって捉え方がずいぶん違うので。

「モダン」「ナチュラル」「シャビー」(シャビーって日本ではプラスのイメージで使う方の方が多いけど、海外の暮らしが長い方は「貧乏くさい」というような意味で使われることが多いので特に要注意なワードです。)「地中海風」「北欧風」……

わかったようでわからない言葉。とかく使ってしまいますが、それよりお茶を飲みながら趣味のお話などを聞かせていただく方がプランのイメージに直結しやすいのです。

一見すると楽しい女子会のようですが、遊んでいるわけではありません(笑)


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