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たとえ自分の首を絞めてでも(2)

開発中の商品に、何とか付加価値をつけるため、今の仕様で可能な遊び方を見出した。

ただ、それを実現するには、追加予算が必要だ。
想定外の仕様を説明するため、追加イラストを発注しなければならない。

事情をメーカーの担当者に伝え、何とか工面していただけないかを相談したが、既に稟議も通っている案件なので、追加予算の工面はほぼ不可能とのこと。

悩んだ末、スケジュールのこと、そして何よりも、商品のこと、買ってくれる子供たちのことを考え、採算性を下げてでも、遊び方を説明するイラストの発注を決めた。

作画に必要な資料として、あらゆる方向から写真を撮り、イラストを描いていただくのに不便がないよう、出来るだけの用意を進める。
続いて、仕様を説明するための文面をまとめる。

…と、そこに1本のメールが入ってきた。
メーカーの担当者からだ。

「依頼したい新規案件があるので、そちらに乗せる形で調整します」

とのこと。ありがたい!!
これで採算面に関する問題は何とかなる。

ただ、ひとつだけ「お、おぅ…」という文面があった。
別の玩具セットの一部パーツを、違う形で取り付けたいので、その絵も一緒に起こして欲しい、とのこと。

まぁ、確かにそうした方が、商品としての見栄えが良くなるのも事実。
イラストレーターさんには申し訳ないが、事情をお伝えし、併せて描きおこしをお願いすることにした。

それが昨日の夜の話。
そして、今日。

午前中には、追加イラストが送られてきた。
さすがプロ!仕事が早い!!

念のため、不備がないかチェックして、すぐにお礼のメールを返し、版下を作成してくれている社内デザイナーに、指示をまとめてイラストのデータを送る。

あとはこれでメーカー監修を受け、問題なければ入稿になる。
週明けに最終サンプルが自分の手元に届くそうなので、それと照らし合わせる必要はあるが、大きな問題はないだろう。

ビジネスはお互いに利益(これは金に関わらない部分も含め)が必要なので、自分の選んだ「多少自社の利益が減ってでも」という手段、そして考え方は、本来使うべきではない。

しかし、どうしても譲れないものもある。
それが、今回の仕様追加だった。

メーカーの担当者も、こちらの意図を理解して、厳しい条件の中、色々な根回しをしてくれたのだろう。ありがたいことだ。

今月中には、他のデザイン物含め入稿となる予定。
まだ発売は先の話だけれど、今から楽しみで仕方がない。

(ひとまずおわり)

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