本との出会い

 私がはじめて自分の意思で本を読もうと思ったのは小学6年生のころだったとおもいます。たしか、ダレンシャンを3巻ほど読んで、ハリー・ポッターを2巻ほど読みました。
 これらからはじまって、いまの自分がいるのだと感じると少し......たしかに恥ずかしいですね。

 8月25日に福井市東郷にある【トンデモ図書室伊藤堂】さんへいってきました。室長の伊藤さんとはほんの少し前から顔見知りで、いつものように優しく出迎えて下さる......との期待を指先に込めて玄関の扉を開けた。開かなかった。あれ? もう一度。開かない。そこで分かったのですが、どうやらこの扉、「かたい」みたい。勇気をだして両手で引いてみると案の定ギギギ、と。ありぁ、こりゃあしまったなあ、中では静かに本を読んでいらっしゃる方がいるだろうに、申し訳ない。とへこたれる目前に室長の伊藤さんの優しいメガネが微笑んでいました。

 まあ、なんて広い! 住める! 自由だ!
 Yes we can! 
 (いったい私はここで何をしようというのだ)というのはおおよそ冗談です。この日は台湾の雑誌「秋刀魚」の特別号の「青花魚」を読んで感想を言い合うというイベントがあったのです。ちなみに、青花魚は「さば」と読むらしいです。
移住でも定住でもない、微住、という言葉の如く、2週間だけ滞在してみる。というスタイルで福井のこと(ヨーロッパ軒、8番らーめん、県立恐竜博物館、芦原温泉、秋吉の純けいetc...)を紹介した雑誌でした。日本には在庫がもうなくて、そんな貴重な雑誌を伊藤さんは18冊持っている! と笑顔で語るのでした。
 
 イベントも終わって、それぞれが縁側や居間、側室で本を読んだりだべったり、1才9か月の女の子とそのパパも読み聞かせをしたり卵パンを齧ったり......。
 「せっかくなので2階も案内しましょうか」と伊藤さんに言われて上がるとこれまた広い! イーゼルがある!(いつかだれかがここで絵を描いてくれるかなあ~と期待して購入されたみたいです)マンガがいっぱい! (ここで『今日から俺は』を私も中学生の頃には読んだことがあって最後の30巻ぐらいで主人公たちがハワイに行って現地の怖い系の人と絡むのに爆笑したという話を一方的にする)

 最後に「利用料はホントにお気持ちだけでいいですから(^^)」と言われて私は財布に入っていた札束をこれでもか、というくらい利用料箱にねじ込んで帰ったというのは嘘、偽りのあるエピソードです。

 ちょうど、秋晴れの涼やかなお天気で、近くには小川が道路のまんなかを優しく分断するように曲がっていました。そこにかかる浅い橋から下をずっと鯉が泳いでいました(天然の鯉!?)。  

 車に乗り込み、しばらく古風な町屋が佇む沿道を走らせて越美北線の線路を渡った私は思いました。ここを右に曲がったらどの道につながっているんだろう。

 本との出会いはホントの出会いでした。営業日に福井市東郷を訪れたなら、もう私もあなたも本に出会う準備がすべて整っているのでしょう。
 伊藤さんがおっしゃってくれました。
「ここにある本をこうやって、でーんと広げて陳列しているのは実は恥ずかしいんです。自分をさらけだしているみたいで」
 
 トンデモ図書室伊藤堂の2階の大窓からみえるねむの木にきれいなみずみずしいピンクの花が咲いていました。それを眺めて、あ、こんな花はじめてみたと思えたのは正に人生ではじめてのことでした。
 あのピンクの花はどうなったかな~と思ったら、また来ます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?