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映画のトップが「映画」であってほしい感情 ◆ 水曜日の湯葉73 [4/26-5/2]

僕が推薦文を書いた宮野優さんの『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』が今週発売。「ループもの」という使い古された枠組みに新解釈を与えた傑作である。

帯とは別に長文レビューを書いたので、それもいずれ公開されると思う。5章構成で5人の異なる主人公による一人称視点なのだが、文体やキャラクターが器用に書き分けられていて「同一人物が書いたゆえの不自然さ」がほとんどないのは作家目線ですごいと思った。


4月26日 水

仕事が進まないので「新しいパソコン買おうかな〜」と8時間くらい考えたり調べたりしていた。4年使った iMac をそろそろ替えたいとか、AI を回すための GPU マシンが欲しいとか、そこそこスペックのある携帯機がほしいとか色々な理由だが、要求がバラバラすぎて焦点が絞れなかった。とくに現行機の iMac は「家にでかい機械が置いてある」という独特の安心感をもたらしてくれる。

Netflix で映画『パッドマン』を見た。生理用品がろくに普及していない2001年のインド(2001年!?)で、妻のために輸入ナプキン買ったらクソ高くてブチ切れてバカ安いナプキン量産するおじさんの物語。前半は「生理用品に熱意のある中年男性」という存在がとにかく気味悪がられ、村八分にされたあげく一家離散してドン底に落ちるが、そこから安価なナプキン生産機を開発して生産と販売のネットワークを確立して世界的な有名人になっていく過程がとにかくテンポがいい。RTA動画を見るような爽快感がある。

雰囲気は全然違うけど、日本映画の『おくりびと』を想起した。あれも社会で必要とされながらなぜか蔑視される職業を描いた映画だ。

生理用品というのは単に性能が良ければ売れるというわけではなく、その存在にまつわるさまざまな偏見やタブーを乗り越えなければならないので、商品開発がやたらドラマチックで読み応えがある。日本でいうとアンネナプキンを開発した坂井泰子の話がこの本↓に詳しい。


4月27日 木

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