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食事しながらの打ち合わせは味わいたい気持ちとの葛藤

ひとりでカフェに寄った昼下がり。そこで見たなんてことない風景。


スーツを着た中年男性と若い女性が向かい合って資料やらタブレットやらを見ながら話し合っている。

想像するに、仕事の打ち合わせだろうか。新しい商品の企画開発について話しているような感じ。

私は視界に入ってくる2人を遠目に観察することにした。勝手な想像もしながら。(会話の内容は聞こえていない。)

中年男性は注文した食事をすでに終えていて、空になった皿が脇によけられている。空腹を満たしたからなのか言葉が饒舌なようで身振り手振りを交えながら熱を込めて若い女性に語っている。

一方で若い女性は日替わりメニューの特製ハンバーガーにかぶりつきながら話を聞いている。わりと大きなハンバーガーなので食べづらそうだ。

かぶりつく、相手を見る、ちゃんと聞いていますよというアピールのようにうなずく。

その一連の動作が繰り返されていて、操り人形のようだ。(失礼を承知)


中年男性の上司の話を聞き流すまい、でもハンバーガーもしっかり食べたい、2つの気持ちが交差する若い女性の葛藤が見える。


ああ、もどかしい。せめてハンバーガーを食べ終えてから話をしてほしい。あなたがどんなに熱を込めて話した内容も、ハンバーガーのおいしさには勝てないわ。ふかふかのバンズと溢れそうになる肉汁とチーズとシャキシャキレタスのハーモニーを邪魔しないで。
とりあえずお腹を先に満たさせてよ。話はそれから。あなただって先にきたスパゲティを私が資料に目を通している間にあなたのペースで食べていたでしょう?


若い女性はだんだんとかぶりつくペースを上げて、最後には口を念入りにふきながらも中年男性の話にうなずくことを決してやめなかった。


今度はひとりでこっそり食べにこよう...。

そそくさと食べ終えた皿が下がらないのを横目で気にしていた中年男性は自分の食べたスパゲティの味を1週間後、果たして覚えているだろうか。

熱をこめた商品の企画が通ればスパゲティの味なんて単なる通過点なのだろうか。

肉汁が今にもこぼれそうなハンバーガーに必死に食らいつく若い女性の姿を見ても思うことはなかったのだろうか。

打ち合わせに選んだこの店に何を求めて来たのだろうか。それが、社内ではない別の場所でいいという理由だけなのであればこのカフェだともったいない気がする。


若い女性が次はここでプライベートでゆっくり食事ができることを祈りつつ、私は席を後にした。

書いているとエネルギーを使うのか、甘いものか揚げ物が欲しくなるんです。 健康を害さない程度につまみたいと思います。