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アンという名の少女2から考える社会の変遷

NHKで放送中の「アンという名の少女2」が、当時の社会状況から現代社会を考えるきっかけになって結構おもしろい。というのと、シルバニアファミリーで育った私としては「私が夢見た北米」がまんま描かれていてなんだか見てるとギュッとなってしまう。(実際アメリカに住んで「なんか違う」と思った理由の一つはこの差だったのかも。)

1. 【現代につながる「キモくて金のないおっさん」の話】

第三話まではダンロップとネイトという二人の悪党の男たちの話で、これは見ていてスタインベックの「二十日鼠と人間」を思い出す話だった。(モンゴメリとスタインベックは生まれ年が20年近く違うし国も違うけど、年代的には被っているし、同じ北米なので、割と同じ社会を見ていたと思う。)

白人男性は社会通念的には支配者層にいるのにも関わらず、スタインベックに出てくる男性たちやダンロップたちは教養もなく、金も仕事もなくて、嫁がほしいのに結婚もできずにいて、実情は農奴や他の弱者と変わらなかった。見た目は優位な立場にいるのに実質は弱者。本人たちはそんな状況に気がつかなかっただろう。そうなるとああなるしかなかったんだろうなあとか思ったり。(そう思うと、ダンロップが「アボンリーに住むんだ!」と言ってアンを大切にしたのもわかる気がする。初めて人に受け入れられて優しさに触れたんじゃないだろうか。)
また、昔は社会に余裕がなかったから弱者をどうにかしようという考えはほぼなかったんじゃないかと思う。というよりも、できなかったというか。
イジメなんかも「イジメを受けるお前が悪い」って考えは2000年代くらいまであったし、弱いことは恥だった。現代は弱者に対する社会福祉の考え方ができつつあると思うけど、「キモくて金のないおっさん」のような、想定されていない見えない弱者の立ち位置や対応も変わってくるといいな。もちろん本人たちの意識も。

2.【北米や西ヨーロッパで養子縁組が一般的な理由】

アメリカに住んでいたときに結構びっくりしたのが、自己紹介で「私、養子なんだけどさ」ということを趣味を話すくらいの感覚で話してくることだった。日本だとカミングアウトくらい大きなことなので、最初はとても混乱した。でも、そのうちに慣れて、私もいつかは養子縁組ができればいいなと思っている。それで思ったのが、「どうして北米や西ヨーロッパでは割と養子は社会的に認知されてるのに、日本は違うんだろう? まだタブー視してしまうんだろう?」ということだった。それが、「アンという名の少女2」を見てなんとなく腑に落ちた。(たぶん1見てても腑に落ちたと思うけど、見てなくてですね……)

農場を営む年老いた兄妹のカスバート家は、元々労働力として男の子の孤児を迎え入れるはずだった。そこに間違えて来たのがアンだった。(しかも虐待受けまくって解離症状持ち。)労働力として使えないことにがっかりするカスバート家の老人たち。せっかく楽できると思ったのになあ……。

この描写にもある通り、当時の北米では労働力として孤児を受け入れるのが割と一般的だったんじゃないだろうか。現代の就職みたいな位置付けで養子縁組されていた。
前に、生きた牛痘を運ぶために、牛痘を自分の身体に感染させて遠征隊に加わった22人のスペイン孤児の話をナショジオで読んだときに、「いい里親に引き取られて愛されるといいな……」と思ってたけど、そもそも労働力として牛痘に感染した子供を里親が引き取ったんだろうなと思うと色々納得がいく。
私が小学生の頃に見ていた「ロミオの青い空」も児童労働と搾取と貧困の結構しんどい話だし、時代的にもモンゴメリの時代と被る。
昔は子供は労働力だった。日本の丁稚奉公的なものが、北米やヨーロッパの養子縁組みたいなものだったのではと思うと、なんとなくタブー視しないものわかる気がする。

一方、日本は養子を迎える=不妊や家の衰退を阻止する危機対応という、あまり大っぴらに聞けないことと関連付けられるためにタブー視されるようになったのではないかとも思う。そう思うと、私が「養子縁組したい」って言うと、年長者から反対されるのもなんとなくわかる。この辺はわかりあえないだろうし、彼らも実際いろいろ見てきたんだろうなあ。日本は血の繋がりが信用に値するくらい、かなり大切なんだろう。

なので、そもそも養子縁組の目的と始まり方が違うから、北米や西ヨーロッパだと養子縁組が一般的だと気がつけた。そりゃ家や家長制度の強かった日本で浸透させるのは難しいよねえ。

……とまあ、こんな感じで見てると色々発見があったり比較ができて「アンという名の少女」はかなりおもしろい。現代に生まれてよかったなあとも見るたび思う。来週が楽しみ。

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