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2年前に読んだ本ですが…

Facebookの思い出機能で出てきたのですが、とても良い本だったので、あらためてここでご紹介させてください。

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『愛する意味』上田紀行著(光文社新書|2019年)

16年前に発表され、ロングセラーとなっている『生きる意味』の続編として書かれた一冊。
人生を生きる上で、とても大事なことがたくさん書かれていました。

全編を通じて『愛すること』の意味や大切さについて、多面的かつ丁寧に述べられているのですが、個人的に心に残ったのは、以下の点です。
① 多くの人は『愛されること』ばかり気にしているが、大切なことは『愛すること』である
② 愛は物質ではなく、エネルギーの流れであり、貯め込もうとすればなくなる(諸行無常)
③ 愛にはもっと狂気があって良い
(日本は『他人に迷惑を掛けない』という教育のせいか、モラル感覚が行き過ぎている)
④ 恋愛が恋愛システムになってしまっている
(クリスマスなどのイベントにおけるプレゼントなどの金額の多寡が愛情のバロメータという理解が広まってしまっている)
⑤ スリランカには「悪魔祓い」が残っており、そのお陰で、誰のせいにしないでも済むため、心の健康を取り戻しやすい

本書にも書かれていますが、現代は「損得」に縛られ過ぎている面があるんだと思います。
だから、愛も物質的に捉え、愛した分だけ愛されないと損だとか、プレゼントも相応のものがもらえないと損だとか、と考えてしまうのでしょう。
 (この執着度が強いとストーカーになるのかもしれません)

しかし、自分の人生を損得やコストパフォーマンスで考えることになんの意味があるのか…。
似たような話で、最近の大学では『授業の評価基準を明らかにしてほしい』という要望が多くの学生から出るらしいのですが、これとて「評価されないことをするのは損だ」という考えが表出したものとすると、つまりは「良い評価を受けるために勉強する」ということになってる訳で…。
冷静に考えれば、ちょっと変な世の中になってますよね。

あと、日本では些細なことでもネットで叩かれることが多いと感じますが、その理由が、例えば「○○として非常識」といった、叩く側の「常識」から見て「間違っている」ということだったりします。
こうした他者への不寛容性が、心の病気になる人を増やし、そして社会から居場所をなくしてしまっているとの著者の指摘はそのとおりだと感じます。
その意味で「悪魔祓い」は良い仕組みだと感じました。

著者の上田紀行さんは、医学博士で、かつ東工大リベラルアーツセンターの教授でありながら、仏教研究も行っており、常に幅広い視点から物事を捉えられている方なのですが、本書の最終章『あとがきにかえて~愛することに一歩踏み出せない君への手紙』は、本当に愛情溢れる内容になっていて、まさに『愛すること』を実践されています。
きっと、あらゆる年代の人にとって、自らの人生を考え直すきっかけになる一冊だと思います。

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