2019年のやべえPVベスト5を振り返る

 掘れば掘るほどやべえセンスのやべえPVが出土するヘヴィメタル界隈ですが、2019年も豊作でしたね。蝗大発生の趣きがありました。

 本当はもっともっとたくさんあるはずなんですが、わざわざ野壺に手ぇ突っ込んで糞尿からよりやべえ糞尿を選び出す作業って、端的に精神刑としか思えない為、5つに縛りました。

UGA UGA / "UGA UGA UGA"
 目頭が熱くなるほど知性を感じさせない絵面というものもなかなかないわけですが、スカムな音楽を割ときっちり演奏していて及第点というのが実にこう、モチベーションがわからなくて不安になります。
「多分、PVに出て来る原始人がメンバーの中で一番頭いい」とは至言。うわー、ティラノサウルスみたいなのが火を吐くぞー!
 不味いコーヒーを棍棒でフルスイングするフォームは美しく、この作品の唯一の美点でしょうか。


Brothers of Metal / "One"
 アイコンの時点で何か凄く勘違いしているという事がひしひしと伝わってくる逸品。
 Brothers of Metalというバンド名だけど、わりかしがっちりとしたPagan Metalであり、鼓舞するような歌詞も好ましく思われます。
 しかし、画面上で起こっていることはなんか辺鄙な集落、いや、林でヘヴィメタルおしっこをしたり、ヘヴィメタル腕立て伏せをしたり、ヘヴィメタルミミズと遊んだりしているうちにギターを巡る殺人事件から内紛が起こり、なんか有耶無耶に。
 雄大な山に「いや、お前誰なんだよ」と言いたくなる半透明のデブが度々映り、説教を垂れるというビターな味わいを残します。


Gloryhammer / "Gloryhammer"
 なんだか鮮やかな緑の甲冑(?)を颯爽と纏い「カメムシかな?」と某界隈を慄然とさせたセンスを持った連中が、コンセプトはそのままでビッグバジェットになって帰ってきたぞ! 誰もそんな事望んでいなかった。
 SFなのかファンタジーなのかいまいちふらふらしていたのだけど、今作はハンマーを求めて宇宙へ元気よく射出されてるから多分SFなんでしょう。
 途中、変な白いのがたくさん出て来て、そのひとたち(?)を守るためにミサイルの尽くをハンマーで打ち落とす姿に三島由紀夫の魂を見た思いです。あと、キーボードが魔法陣みたいなのは格好いいと思いました。魔術師みたいなやつ。
 なお、このボーカルはかの"Valhalleluja"でもオーディン役で出演しており、やっぱりデカめのカメムシに見えます。


Demon / "The devil rides out"
 あの衝撃からようやく回復した頃に襲いかかるNWOBHMのあのセンス。
 最初こそモダンな映像に安心するも「アー!」という発声(発声としか呼びようがない)が飛び出したが最後、なんか赤や青のガビガビが全編を覆い尽くす、機材が壊れたみたいな映像が延々と続きます。
 なんか雑なコラージュみたいな風景も味わい深く、そもそも禿頭白塗り自体が面白い上に悪魔とそいつがスロットで並ぶシーンが散見されるのは専門医に検査された方がいい恐るべきセンスだと思います。


Angel Witch / "Death of Andromeda"
 上述の「あの衝撃」。冒頭こそ寒々しい現代風のタッチですが、安っぽい宇宙船とへんてこりんガジェット、そもそもアンドロメダ星人が金髪おかっぱに肌が緑色の二人組という時点でわたしたちは正気を失います。
 タイトルを素直に訳すと「アンドロメダの死神」なのだけど、とんちきなカップルにしか見えないあたりがチャームポイントでしょうか。
 特に理由もなく変な液体を飲まされたり、イグアナに手を噛まれて凄く腫れたりするのは早々に忘れ去られ、アンドロメダ星人が地球人に地球のヘヴィメタルを聴かせる事により、地球人の頭が爆発します(ラウド過ぎたのでしょう)。
 そして最終的にアンドロメダ星人の宇宙船も爆発します(ラウド過ぎたのでしょう)。意図もモチベーションも全くの埒外にあるものをわたしたちは「他者」と呼ぶのかも知れませんね。


 今年もたくさんのヘヴィメタルに恵まれますよう、ここに供養するものです。

なんかくれ 文明とか https://www.amazon.jp/gp/registry/wishlist/Z4F2O05F23WJ