[読書]革命前夜

コロナ禍で在宅勤務、便利なことも多いけど、
一日中画面でメールや資料を見て、
音声での会議を繰り返す日々。
文字を見飽きて、活字から遠のいていました。

そこに、noteの読書感想文募集のお知らせ。
良い機会なので課題図書を何冊か買い込みました。
これはその一冊。初めましての著者です。

舞台は、東西ドイツ統一直前、
日本から東側に留学したピアニストの卵シュウジが、
時代の動きに流されながら、成長していく物語。
と言って間違っていませんが、複数の要素が絡み合い、
内容も詰まっていてページ数もあるものの、
一気読みしてしまいました。

まずはミステリー要素に引き付けられます。
当時の東側政府(DDR)の状況もあり、
誰が本当の姿をみせているのか、
本当のことをいっているのか、
そして本心にそぐわない行動をとっているのか、
全く最後まで、心の中は最後でも、わかりません。

次は歴史的な背景の情報量に圧倒されます。
私が子供の頃、ベルリンの壁は当たり前にそびえ、
東側の人の本当の生活は、全く見えませんでした。
高校生のときのベルリンの壁が崩れた映像は、
今でも頭に焼き付いています。
その向こう側で何が起こっていたであろうことが、
たくさん描かれています。

それから音楽の描写の美しさ。
言葉なんかで表現できないことが、音楽の美しさ、
だのに、文章を読んだだけで、聞きたくなる演奏が。
どの演奏も、どう素晴らしいのかが伝わってきます。
私が聞きたいのは、スレイニェットのシューマン。
そう、選曲も絶妙で、クラッシック音楽が好きな人は頷きながら読むでしょうし、
これで興味を持って聴いてみても間違いのない選曲です。

そして最後に若者の成長物語。
どんな分野でも天才は、なぜだか人を惹き付けます。
音楽の道を志す人たちは、
更に強く、天才でありたかったと思うでしょう。
でも、誰にも壁がある。
それを乗り越えるのか、立ち止まるのか、
よじ登る人もいれば、進路を変えるひともいます。

とても読みごたえのある作品です。
ミステリー要素に気を取られ、一度目は速読、
次は歴史的要素の読み込みに焦点あてて、再読しようと思います。

☆☆☆

著者 須賀しのぶ
刊行 文藝春秋
刊行年 2015年単行本 2018年文庫
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167910310

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