[読書]四畳半神話大系

長女の通っていた高校で、この作家は大人気でした。
生徒ではなくママたちに、です。
勧められて「ペンギンハイウェイ」は楽しく読み、
長女も気に入っていました。

この本は、本屋さんでチラリと開いた時、
硬い文章が、大量の情報を詰めて並んでいて、
なんだか、ヤバそうだ。と、手に取らなかったもの。
著者の京都大学卒という経歴に、
やたら頭の良い人に振り回される気がして、
ちょっと回避したい、というのもありました。

が、今週末は怪我をして、ベッドに寝たきり。
読書の秋の課題図書で手元にあったので、
これも運命と、読みはじめました。

ヤバい本でした。
著者の得意なパラレルワールドもの。
そして、内容があるというか、ないというか、
哲学的な含蓄を込めているのかいないのか。
表面だけ見ると、超高偏差値の大学に入った若者が、
良く回る頭脳を非生産的なことに使う話です。

(ここからはネタバレあり)

主人公は理系の大学3年生。
入学の高揚感も抜け、就職の圧力もまだない、
中弛みの時期です。
自分が青春の時を無駄にしているのではないか?
悩むところから始まります。
他の選択をすれば、
薔薇色のキャンパスライフを送れたのではないか?
社会に有用な人材になる鍛練をできたのではないか?
というところ。

最初は映画サークル。
うまく輪に入れないのか馬鹿な騒ぎをして、
変な先輩同士の戦いに巻き込まれて、
親友小津の骨折を見舞う場面で終了。

次は怪しい先輩師匠へ弟子入り。
下らないことに情熱を注ぎ、
先輩同士の戦いは、何代も続いた代理戦争と明かされ
先輩師匠は旅立ち、また小津は骨折。

その次は、ソフトポールと見せかけた宗教サークル。
女性を巡ってやたら悶々とした上、
また不毛な騒動を起こして、小津は骨折。

最後は、怪しい大学自治組織。
その上、四畳半の自室から出られなくなり、
各パラレルワールドの四畳半を巡る旅。
もちろん最後に蛾が大量発生し小津は骨折。

何度も同じような2年間を過ごしている様が描かれます。
同じエピソードや独白が文章ごとコピーされて現れ、
間間に違う世界で起きることが挿入されます。
多少選択を変えても
狡猾な小津さんは近しい友達で、
後輩明石さんとは良い仲になり、
樋口先輩や城ヶ崎先輩たちは彼らを振り回し、
無為の2年間を送るのです。

まあ、その文章と情報量の多いこと。
パソコン時代の作家で良かったね、と思います。
でも、そんな手法が全く破綻していないのが
すごいことだと思います。
例えば、占い師のおばあさんとのくだり。
たぶん四篇とも全く同じです。
でも、占い師とはそうしたもの。
なので、客を誉めて適当なことばかりいう
占いのおばあさんとのシーンは大好きでした。

今は全然旅のできない時期。
四畳半を旅した世界を味わうのも悪くないかもしれません。
京都の町の雰囲気も憧れます。

☆☆☆

著者 森見登志彦
刊行 角川書店
刊行年 2005年(文庫)
https://www.kadokawa.co.jp/product/200603000258/

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