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【ブランド戦略論】ブランド構想とその構成要素(後編)

【ブランド戦略論】ブランド構想とその構成要素の後編です。

前編では、『ブランド構想とは何から生まれるのか』について書いています。そちらから読んでいただければ、より理解しやすいと思いますので、ぜひ読んでみてください。

(※)本記事の内容は、日本マーケティング本 大賞にて大賞(1番)を受賞している、ビジネスパーソンやマーケターのバイブルとなる一冊と言われている名著「ブランド戦略論 (著)田中 洋」の一部内容を元に、筆者が要点をまとめて執筆します。
(※)少々値段は張りますが、1次情報を得る意味でも、この値段でも安すぎるほど、非常に情報密度と情報深度が高い書籍です。ぜひお手に取ってみてください。

ブランドの構成要素

ブランドの構想は4つのカテゴリーからできています。
※ブランドの構想ついては前回記事を参照ください。

(1)事業カテゴリー 
どのような事業をなすべきか、どのような市場に参入すべきか
(2)商品性能・機能
その商品はどのような機能や性能を持つべきか
(3)事業カテゴリー 
誰に対して何をなすべきか
(4)事業カテゴリー 
その事業は社会や生活者にとってどのような意味や意義を持っているのか

こうしたブランドの構想は、次の3つのパターンでブランド構築に役立ちます。

① どのようなブランドにすべきか・ブランド全体の基礎になる
② ブランド戦略の創出や選定に関わるガイドラインの役割
③ ブランド構築の関係者の中で共有認識を持つ

①に関しては、そもそもブランド構想がないと始まらない話なので、特筆すべきことはありません。

②は重要なポイントです。ガイドラインは、ブランド戦略の案がたくさん出てきた時、どの打ち手を選ぶのか、またブランド戦略を変更するとき、どのような基準で選ぶのかの基準となります。変化させるべき部分と変化させてはならない部分を区別するために、全ての基礎となるブランド構想は必須となります。

③に関しても重要です。ブランド関係者が多くなるほど、個人の価値観が影響してきます。SNSで発信するにしても、デザインを作るにしても、色々な感じ方があるでしょう。しかし、『誰に、何を、なぜ』届けたいのか。共通の認識を持つために、議論が生まれた時は、一度原点に戻って考えたり。ブランド構想は、組織に求心力を持たせる役割を持っています。

ブランド構想はどのようなものであるべきか

ワシントン大学・オーリン・ビジネス・スクールのドット・ゼンガーさんは、企業の持つべき「企業セオリー」として3つの項目を提示しています。

優れた企業セオリーは3つの戦略的「サイト」(洞察)を提供する。1つ目は、業界の発展を見通す「フォアサイト」(将来展望)。たとえば、関連する技術の変化や消費者の嗜好の移り変わりを予測できることだ。2つ目は、自社の特徴的かつ価値のある資産や経営資源を認識する「インサイト」(本質を見抜く力)。3つ目は、「クロスサイト」(既存資産との組み合わせ)――すなわち、隣接領域にある資産のなかで、自社のみに価値があるもの、あるいは他者には見出せない価値を有するものを認識できることだ。
引用: "What Is the Theory of Your Firm?"

ブランドの構想にはまず『予測』として、社会経済的に変化する将来を予測し、顧客の好みや考え方の変化に対する見通しが含まれていることが望ましいとされています。つまり、現在は顕在化していないが、近い将来出現するであろう消費の動きについての洞察が含まれていることが求められます。

日本でセブンイレブンを創業した鈴木敏文氏は、1978年にセブンイレブンで「おにぎり」を販売した当時、誰からも売れないと言われたにもかかわらず、食堂などの外食施設の利用者が徐々に増えていたという事実を知っていたため、お昼で外食を済ませるような時代が来るという仮説を立て、おにぎりの販売を継続して成功しました。

次に、ブランド構想には顧客が潜在的に考えているが、顧客自身が言語化できていないような欲求やインサイト=『洞察』が含まれていることが求められます。もちろん顕在化している欲求に答えることも重要ですが、こうした領域は往々にして競争が厳しいため、まだ開発されていない顧客ニーズに着目する力は重要でしょう。

P&G社の「ファブリーズ」ブランドの構想には、生活者は自分の家のニオイがしないと思っているが、他人の家のニオイには敏感であるというインサイトが含まれていました。

また、ブランド構想には、自社が必要とする『補完』すべき資源がどのようなものか、明示的に示されていることが、その後のブランド展開のために有利であるとされています。

前述の住友不動産の「新築そっくりさん」では、リフォーム事業立ち上げのために自社に欠けていた人的な資源やノウハウを得ることが必要と示唆されていました。そのため、同社は、たとえば、その後何年かあ欠けて専用の大工を育成するといった、事業ブランド構築に必要な企業資源を醸成する活動を行なっています。

もちろん、最初から優れたブランド構想が存在することは、ほとんどの場合ないでしょう。三菱や三井のように歴史的に体制と結びついてできたブランド、あるいは政府などの公共機関から制度的に生まれたNTTなどのブランドは、このようなブランドがなくてもブランド化されます。

しかし、優れたブランドを構築するためには、優れたインサイトに基づく構想がベースとしてある方が、ブランド構築の家庭で強いリーダーシップを生み出し、周囲を巻き込むことによってその後の展開がより有利になると考えられます。

『優れたブランド構想』はどのようにして得られるのか

最後に、優れたブランド構想はどのようにして得られるのかについて、書籍より引用して書き記します。

優れたブランドを生む『創造的瞬間』が生まれるためには、Sternberg & Lubart (1991)の創造性に関する「投資」理論を基礎として、次の5つ要素が必要とされています。

(1) 専門知識
学習によって積み重ねられた知識が多いほど、さまざまな要素を組み合わせて想像が可能となる
(2) 想像的思考スキル
物事のそれまでとは違った見え方を得るためには、基礎的知識を元に、その問題を新しい視点で再定義するスキルが必要である
(3) 大胆な個性
リスクを受け入れ、諦めずに試みる
(4) 内的動機づけ
自分の趣味や満足のために動機づけられると想像的になる
(5) 想像的環境
科学者を対象とした研究によれば、「孤独な天才」はほとんど」いないとされる。天才は他者から教えられ、ネットワークをもち、他社からの刺激を得ることが必要である

ブランドに関する優れた直感やひらめきを得るためには、上記の要素を意識しておく必要があるでしょう。

ここではごく一部しか解説できていませんので、気になった方はぜひ本を手に取ってみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました!


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