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顧客接点を持つ流通がPBでどこかで見た商品を出す問題について

こんなツイートを見かけました。

AmazonのPB(プライベートブランド)の問題は、色々他でも取り上げられています。海外でも前から話題になってはいました。

プラットフォーマーが、オリジナルメーカーの商品を模倣してPBで発売するパターンでは、こんなのもありました。

結局、Amazonにしても、ナチュラムにしても、プラットフォーマーとして人々の購買データを大量に集められる立場にあります。

そのデータを活用して似たような商品作って販売しちゃえば、ほとんどリスクなく売れる商品が作れてしまうわけです。どれぐらい売れるのかもある程度予想出来るでしょうし、戦略的な価格設定も可能だし、かなり有利であることは間違いありません。

しかも、プラットフォーマーはすでに確固たる顧客接点を持ってます。これやられるとメーカーはすごく辛いです。オリジナル商品を生み出してプラットフォームで販売することが、プラットフォーマーへの貴重なマーケティングデータ提供みたいなことになりかねないわけですし。

最近、僕が知り合いのSNS投稿で一番笑ったのは、「激落ちくん」と思って買ってきたのが、全然違うものだったというものです。

激落ちくんは、もともとはレックが展開するメラニンスポンジのアイテムです。この太眉のキャラクターが特徴です。

これにそっくりなのが、ダイソーの「落ち落ちVキング」です。

これもレックの商品を、そのまま流通大手のダイソーが真似したものでしょう。似たような商品が出るのは仕方ないと思うんですが、このキャラクターまで似せてくる必要はないんじゃないかと思うんです。

これは消費者にあわよくば「激落ちくん」と勘違いさせようという意図があるように、僕には思えます。実際、知人は間違って買ってました。

木村石鹸にもクラフトマンシップシリーズという洗剤シリーズがあります。

痒い所に手が届く、ニッチな専用洗剤シリーズが、このブランドのコンセプトです。シンプルな白地のデザインに、各場所や用途が分かるようなアイコンがあしらわれているのが特徴です。(ちなみに、このアイコンは一筆書きになってます)

シンプルなデザインですが、シンプルであるがゆえに上質にするのはかなり難易度の高い仕事で、それはクリエイターの方なら理解頂ける方も多いのではないかと思います。ただ、白地に文字とアイコン並べてるだけ、にしか見えないとしたらかなり残念ですが、かなーり細かいところにも気を配ってデザインしてます。

さて、大手ホームセンターのカインズさんも少し前に、「プロが使う洗剤をご家庭で簡単に」というシリーズを出されました。

これがクラフトマンシップシリーズに似てるなぁと僕は思うわけです。シンプルなデザインなので、たまたま似てしまっただけなのかもしれないですが、ただ、全くクラフトマンシップシリーズを知らずに、ゼロからこのデザインに行き着いたというのは、ちょっと考え難いんじゃないかと、僕は勝手に思ってます。

この場合は、クラフトマンシップシリーズが売れてる(カインズさん規模から考えたら、僕らの売上なんて雀の涙以下です)から真似たというものではなく、単に、PBを作るのに、手っ取り早く、それっぽいデザインを参考にした、と言う風に、僕には思えます。(あくまでも想像です)

カインズさんのこのシリーズのほうがデザイン的に洗練されてる、デザインとして良い、好きだ、と言う人もいるかもしれませんが、おそらく多くの人は、クラフトマンシップシリーズと較べると、荒っぽいデザインだと感じるのではないかと思います。

でも、このシリーズがメディアなどで紹介されるときに、「パケ買い必死」とか「見た目も汚れ落ちも良き」なんて語られるのです。

この記事のライターが、僕らのクラフトマンシップシリーズを見たら、どう思うでしょうか。もしかしたら、僕らが真似た、パクったと思われてしまうかもなぁと心配になります。

流通がPBやるのは良い。でも、安易な模倣は...

コンビニにしても、ホームセンターにしても、GMSにしても、今はとにかく皆、PBです。何でもかんでもPB作って、PBの比率を高めようとしているわけです。

流通にとっても、PBの方がコントロールしやすいですし、自社商品のほうが色々融通が利きます。PBそのものにファンがつくことによって、その流通が選ばれる理由にもなります。

流通の生き残り戦略としてPB強化という流れ、これは仕方ないところがあるだろうなと思います。

でも、PBやるのに、メーカーが創意工夫して開発したものを、そのまま安易に模倣するのはどうなのかと思います。機能上の工夫にせよ、デザインにせよ、コンセプトにせよ、出来上がってしまえば、「当たり前」のように見えるものでも、それを生み出して形にするためには、ものすごい時間をかけてたりするものも少なくはありません。

そういうものの上積みだけを手っ取り早く掬い上げて、「それっぽく」商品にする、みたいな、そういう安易な商品化には、やっぱり憤りを感じます。

模倣するなら、少なくとも、インスパイアと言えるレベルに、オリジナルを凌駕するような工夫や改良が欲しいなと思います。

僕らみたいな中小零細メーカーはどうしていくか?

さて、それが「インスパイア」と呼べるものであっても、大手流通が中小の個性的なオリジナルブランドを参考にしたPBをつくる、というのは、今後も続いていくでしょうし、むしろますます激化していくはずです。

そんな中、僕らみたいな自社商品を開発して販売している中小零細メーカーはどんな風に立ち向かっていくべきなのでしょうか?

基本は、ユニークな商品を生み出していくことだとは思うのですが、戦略的に、模倣が難しい、模倣が意味ないような要素を強化していかないといけないと考えてます。

機能面や表面的なデザインは、簡単に模倣されてしまいます。でも、ベタで抽象的な言い方ですが、コミュニケーションだとか、関係性だとかは、模倣できないし、模倣しても意味がないようなものだと思うのです。

例えば、「短パン社長」こと奥ノ谷さんが手掛けられてる「Keisuke okunoya」というブランドは、服そのものの機能やデザインよりも、奥ノ谷さんと顧客の関係が特別なもので、それがこのブランドのコアになっています。

Keisuke Okunoyaの短パンを模倣することは、どこの大手アパレルブランドも出来るとは思いますが、Keisuke Okunoyaと顧客の関係や、奥ノ谷さんと、顧客の関係は模倣することはできません。

あるいは、よなよなエールビールのヤッホーブルーイングさんはどうでしょうか? ヤッホーさんと顧客との関係も、僕には他の大手では真似できない、模倣しても意味がないものだと思います。事情は良くわからないですが、キリンビールがヤッホーに資本を入れるのも、キリンビールでは、ヤッホーさんのようには出来ない、やれないと分かってるからじゃないかと思うんです。(やれたとしても、すごく時間がかかる)

僕自身もまだよく分かってないところではあるのですが、模倣PBだけの問題に限らず、商品の機能や性能やデザインだけでは差別化できなくなってきてることは確かで、そんな中で、僕らがやらないといけないことは、どうしたらお客さんにとって特別な存在になりえるかを徹底して考えることなんだろうなと思ってます。

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