柚月。❀·°

柚月 -Yuduki- Since:2023.8.23. 不定期で更新します。

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最近の記事

サクライト

木々が恋する儚い時期よ、写真におさまる準備は万端かな。 君の左手つかんで走り出した花道、春風が背中押してくれた。 涙なんて似合わないさ、笑顔の花咲かせようよ。 ほら、笑顔のが素敵だよ。 恥ずかしながらにみせたその頬にも桜色が見え隠れして、そんな些細な表情でこの気持ちを知るなんてね。 嬉しさを満開に咲かせて彩ってこの一瞬をフィルムに閉じ込めて振り返れたなら幸せだよね。 *** さくらの咲いたこの時期に結んだ糸はほどけないようにしっかりと結って(ゆって)いたい。 さくらの

    • 名前って宝物だと気づいた話

      「名前は親からもらえる最初のプレゼントなんだよ」 あれは何年前のことか覚えてないけれど、そんなことを言っていた人がいた。 でも、いつしか自分は自分の名前が嫌になっていた。 その理由は幼少期から「お前」と呼ばれ続けていたからなんだと最近気づいて納得した。 せっかく名前をくれたのに渡した本人がお前呼びかと、そんな風に思ったんだと思う。 執筆活動を始めたことで改めて気づけた良かったこと。 せっかく物語の中で名前を与えたなら可愛がってあげたいとそう思えたから。 改めて大

      • 好きという情の正体

        これは南雲湊斗の独白 タイトルは[好きという情の正体]とかにしよう。 少々くすぐったいくらいがいいだろうからな。 久々に原稿用紙にペンを滑らせる。 ちょっと緊張してきたな、緊張なんてしなくてもいいはずなのに不思議なものだ。 あれほど好意という感情から避けて、逃げ続けて来た末路がこれか。 僕は、もうわからない。他人の目なんか気にしないで生きていきたいのに。僕はまた助言を人に与えては成就を願う。別にこれが間違っているとは思わないし悪いことじゃないと思う。相談役を務めては絆創

        • 拝啓、弥生の桜たちよ。

          僕たちに例えばなんてないけれどもし叶うのなら… 気持ちを言えないまま桜が咲いた。 後悔してももう遅いのに、別れと次の出会いがもうすぐそこにあるのに。 悠長なこと言っていたなら手も届かなくなるだろうことはわかっていたのに。 春から始まった曖昧な関係を桜吹雪が邪魔をして紡いだ言葉すら届かずに、儚く散って舞い上がる。空に投げかけた後悔と第二ボタン。

        サクライト

          星のような君と、恋心を忘れた僕。

          自室の天井が霞んで見えて朝を迎えた。 「あぁ、そうか、もうこの世界に君はいないのか」 また僕はあの笑顔を夢で見る。 これで何度目の夢なのかもう数えきれないけれど、いつまでたっても忘れられない。 星みたいな笑顔を。僕にしか見せなかった些細な笑い。 静かに口許に弧を描くそんな君の表情。 僕はまだ過去に縋ることしかできないのかと自分が自分で嫌になる。 情けない話だとみんな笑うかもしれないけれどまだ僕は大切に仕舞い込んでいる。 あれから随分と年月を重ねたというのに。

          星のような君と、恋心を忘れた僕。

          カエルム

          雨上がり虹ひとつ 見上げた空青くて 「いつまで晴れるの?」 って問いかけた 晴天の雨宿り 水たまりに映るボク 曇った表情で立ち止まっている この先の話描くのは僕 想像膨らませ期待を込めて 歩きだそう君と共にナナイロの線路迷って 創造すればいいんだよ 君となら進んでいける気がするんだよ 僕たちの描いたセカイへ 雨上がり傘ひとつ 見上げた空青くて 「いつ雨降るの?」って聞いてみた 晴天のバスの中窓に映る僕の顔 晴れた表情で笑顔だった この先の未来歩くのは私 曖昧な道を

          橙日-トウヒ-

          夕日が今日も一日の終わりを告げて暗闇に僕たちを導いてくる。 僕は、まだ終わらせたくないよ。 この一日の幸せを。 また明日は来るけれど、君のこの表情を見れるのはこの瞬間だけで、また明日も声を聞けるかもわからない。 おはようも言えない日かもしれない。 “恋って濃い”んだなって、君にメッセージ送るときだって、緊張しちゃってるし挨拶するのだって一苦労なんだよな。 でもこの日々が濃厚で幸せなのかもな。 たくさん僕のこと観測してほしいし、君の人生という本のクレジットの最後にで

          橙日-トウヒ-

          苺一会 - いちごいちえ-

          「一期一会」 私の好きな言葉で、縁の始まり。 あなたに出会えてよかったと思う。 あなたはいつも素敵な笑顔を私に向けてくれる。 こっちまで笑顔になっちゃうよ。 ありがとうね。 あなたには感謝してもしきれないくらいで、もらいっぱなしで返しきれないよ。 彼女の名前は静玖ちゃん。 全然静かじゃないよく笑う子。 でも、そこがあの子のいいところで尊敬できるところ。なんてったってかわいいからね! しーちゃんはずっと柚伎のことをゆっちゃんって呼んでくれてる。 すごく優しいお

          苺一会 - いちごいちえ-

          部屋の片隅で綴った本音

          気づけば季節はもう冬らしい。私はまた一日という時間を無駄にする。あの別れから4ヶ月が経つけれどまだ心の整理がつかずに休職させてもらっている。会社の人に迷惑だと思ったから退職してもいいかなとも思ったけど、友達が「一旦休職して心と部屋の整理をしなさい」って足の踏み場もない部屋に目を落としながら優しく言ってくれて一応延命できている。 私は8月の初旬に突然別れを告げられて、連絡手段も全て絶たれた。私の話なんて聞いてくれなかった。いつだって自由な彼は私のくだらない話も聞いてくれた。す

          部屋の片隅で綴った本音

          冬空の下で傷んだ林檎

          真っ暗で曇った空にため息をついた。 星なんてなかった。 もう今年もラストスパートで、私の香水もラストノート。 クリスマスを前にして別れを告げた。 空は黒くて息は白い。私はあの人が来るのをずっと前からこの寒空の下で待っていた。 でもあの人は一向に現れなかった。 約束をする時はいつだって私からであの人は私に関心なんてなかったのかもね。 前に公園に呼び出した時にも約束の時間より数分遅れてきたっけ。 私たちはそこで縁を結んだはずだった。 私だけの君になったはずだった。 でも会う時は

          冬空の下で傷んだ林檎

          思い出の駅舎と晴れ渡る空

          十月初旬。夏が終わりを告げ、秋が香り始めて数週間経った頃。 長い間地元を離れていたけれど、仕事の関係でこっちに帰ってきた。 懐かしい匂いとちょっと新鮮な匂いが鼻腔をくすぐってくる。うちの地元は金木犀がたくさんあってこの季節になったら地域全体が金木犀の香りに包まれる。神無月なのに神様に守られているような気がして安心する。 なんてね。 金木犀の香りがするとちょっと嬉しい気持ちになる。 こっちに帰ってきて新居と実家を数日行き来して、やっと新居にも慣れてきた頃。 その日の私は先

          思い出の駅舎と晴れ渡る空

          ホシユメ

          ある日、今日は星降りの夜  君の笑顔輝いてる  星の見える美しい空  今日はなぜか浴衣の君いつしか言っていた「いつか浴衣で星を見よう」ってね あれから何年経ったのだろう あの時の僕はいつも楽しくて浮かれていた 流れ星も流れるふたりの世界 ある日、今日は星降らぬ夜 いつだってそうだった 夏になれば無意識に空を見上げる星のない空 あの時の記憶忘れたくても忘れられないよ あの時の君はいつも笑顔で僕も自然と笑顔になって あの時の僕たちはいつも楽しくて でもさ、ほら今の僕を見てよ流

          忘物の優しさと残酷な瞳

          Ep.5 鋭い眼差し 忘物の優しさと残酷な瞳 欠陥だらけのワタシはいつからか自分の名前すら忘れちゃった。名前なんて与えられたのかわからない。 ワタシが誰なのかココがどこなのか。 全部無くしてしまったみたいだ。 いじめられて嫌われて、なにもかも忘れてワタシには何も残っちゃいないよ。 鋭い眼差しの元に晒されたワタシの醜い姿。 何処かに捨ててきた優しさの心。 そもそもそんなものがあったのかすら今となっては怪しい。 ありがとうの意味、約束の大切さを教えてくれたあの人を探してまた

          忘物の優しさと残酷な瞳

          楓梛の黄色い日記帳

          私はたまに昔のことを思い出してアルバムを開いたり、写真を見返したりして思い出に浸っている。 寂しがりな私の落ち着ける大切なこと。 昔を振り返るときは必ず日記をつけるようにしようと思う。これまでこの振り返る時間はたまに取ってたけど日記なんて書かなかった。 最近部活で仲良くなった亜紀ちゃんが日記帳を部室に持ってきていたのがきっかけで私も書いてみようかなって思った。なんか楽しそうだし、素敵だなって思った。だから私も始める。 可愛い黄色のカバー付いてるの買っちゃったし始めるしか

          楓梛の黄色い日記帳

          亜紀の手紙

          最近は新生活に慣れることに必死で過去を振り返ることなんてしてこなかったけれど、やっと落ち着いて来たので少し振り返ってみようと思います。 中学を卒業してから地元を離れて誰も私のことを知らないところにきました。 送り出してくれた両親には感謝しています。 子供のように甘えてばかりじゃだめだと思って離れた地元にもう帰りたくなっています。地元の空気が恋しいです。 春にここに来て6ヶ月、桜が散るのを見る暇もなく、夏になってアルバイトに課題、友達と遊ぶとかいろんな予定に埋もれる毎日でした

          恋するっていいなと思った秋の夕暮れ

          16時30分 一日の終わりのチャイムが響いて放課後になった。 クラスメイトが帰り支度を始めていて、早い子はもう部活に行ったっぽい。 私も部活に行かなきゃな〜 「亜紀ちゃん部活いこーよ」 反応が亜紀ちゃんの方に視線を向けたら中途半端に片手を上げて固まった姿がそこにあった この姿を見るのはこれで何回目なのだろうか そんなに様子伺うならバイバイってまた明日ねって言っちゃえばいいのになぁ~ うふふがんばれ~ なんでこんなに友達の恋愛って面白いんだろうな 私も恋した

          恋するっていいなと思った秋の夕暮れ