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「凡庸な教育格差社会」日本でホームスクール/ホームエデュケーション。大事にしたい3つのこと

「教育格差」(ちくま新書)を読みました。

「noteに書きたいことが盛り沢山だぞ!」と意気込み、まず下書きに入れたのは、京都のコワーキングスペース「QUESTION」が開催したセミナーのメモでした。
セミナー視聴時のメモから、「教育格差」を読んで考えたことなどをまとめます。

QUESTION TALK vol.9 『これからの教育』のメモ

https://question.kyoto-shinkin.co.jp/articles/articles-2254/

 「先生の学校」の三原さん、「Studioあお」の川村哲也さん、QUESTIONを利用している高校3年生の女の子の対談。
三原さん曰く、フィンランドでは不登校は0ではないけれど少なく、「ホームスクール」という概念があまりないと仰っていました。また、不登校関係の取材中に「アメリカなど、格差が大きく公立が崩壊している国ではホームスクールが多く、日本もその傾向がある」と聞いたとのこと。

ホームスクール/ホームエデュケーションの認知度を上げたいホームスクール&ホームエデュケーション家族会」の活動は、今の日本では公教育の崩壊を肯定してしまうのだなぁと複雑な気持ちになります。
「ホームスクール/ホームエデュケーションの学びに経済的支援を」と“短絡的に”考えるのではなく(もちろん支援は必要です!)、教育格差という指標も視野に入れながら、ホームスクール/ホームエデュケーションに本当に必要な支援ってなんだろう??と考えるのを辞めないのが、私にできる小さな行動。
「公教育の多様性担保」と「ホームスクール/ホームエデュケーション」は両輪で進んでいくはず。そうでなくてはならないですよね。


またアメリカでは「PBL型のチャータースクール」と「ガリガリ勉強する公立校」の二極化が進んでいると、川村さんが話されていたのも印象に残っています。

教育格差は子どもの能力の格差ではなく、親の経済力の格差。出世しなくても、誰もが尊厳を持って生きられる社会に舵をきらないと格差が広がるばかり。今はその過渡期にいるのかもしれない。

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ここまでが、下書きに入っていた文章です。
この半年後「教育格差」を読むことになるのですが、まさにこの対談と地続きの内容でした。

「教育格差」を読んで

 マイケル・サンデルさんの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」よりも先に出ている、日本のデータから教育格差の現実を解いている本。
格差は学校教育だけではなく、ホームスクールや不登校にもあると改めて思いながら読みました。

教育格差の要因は、親の経済力というより「住んでいるのが大都市か否か」「親が大卒(短大含む)か」。なんとなく思っていたことを、データと共に突きつけられます。

構造化されていない(割と自由で本人の意思に添った)日常生活を送ってきた生徒は、“他の生徒よりも低く評価される経験を積み重ねて、進学に対する現実味を感じることができなくなるのかもしれない”とあったのが印象的でした。
裏を返すと、構造化されていない(割と自由で本人の意思に添った)日常を送っていても、周りからの肯定的な評価があれば進学に対して前向きに捉えられるのかもしれない、と捉えてもよいのかな。

高校受験制度は格差の増幅機会

 私達には当たり前な高校受験制度は、世界的に見ると特異で、格差の増幅機会になっていると著者は言います。
日本の学力水準は高く、問題解決能力も上位(PISA)なのは義務教育や指導要領の良い面だけど、そこだけを見て政策を評価してはいけない。なぜなら、義務教育にも家庭&学校間に格差があるから。

落合陽一さんが著書で、「日本は士農工商を復活せよ」と書いていたのを思い出しました。どうやっても恣意的になってしまう「評価」基準自体を変えられたら、格差があるまま幸せに生きられるのかもしれません。

自由なホームスクールタイプの家庭でも、自覚しておきたい3つのこと

 学校教育から弾かれてしまいがちな発達障害や不登校の家庭でも、当然格差はあります。
本書を通読してみて、構造化されていない日常生活であっても、これを自覚しておくのがポイントなのでは?と思えた3点を挙げてみます。
・子どもたちに肯定的なフィードバック。
・できる限り親や教師以外の大人との関わり(ロールモデルどの出会い)。
・使える制度は使って、お金をかけなくても多様な体験を得る。

これらを担保できたら、義務教育や、所謂(いわゆる)高学歴の路線に馴染めなくても、その子なりに幸せに生きていけるのかも。
経済的支援は必要な気がしてしまうけれど、一律に支援があっても格差はあり続ける。ハード(お金)ではなく、ソフト(親子の関わりや視点)の支援のほうがいいのかもしれない。

格差のない社会はこの世に存在しない


「アメリカなど、格差が大きく公立が崩壊している国ではホームスクールが多く、日本もその傾向がある」と前述しましたが、本書ではデータを元に「日本は凡庸な格差社会」と結論します。
現実を突きつけられるのが辛くもありましたが、最後に著者が「人には無限の可能性がある」ことを肯定する熱意を強く感じました。学校の先生にも読んでほしい、また一緒に学びたい分野です。

おまけ・講演「現場に知ってほしい教育格差の実態と今後の展望」を視聴して

7/10のこちらのセミナーを視聴しました。


最後に、こちらの講演のメモを記録して終わります。

学校の数

・小学校:2万校
・中学校:1万校
・高等学校:5000校
・大学:800校

毎年何人が高校を中退している?

毎年4万人が高校を中退している(令和2年度の全日・定時・通信制の高校生は約330万人なので、約1.2%)。

学歴格差vs身分制度


「学歴格差を批判するなら身分制度に戻る」と話す著者。「学歴以外の選抜方法が出てこない限り、ずっと残る指標である」とも。
先述の、落合陽一さんの「日本は士農工商を復活せよ」と一致します。学歴格差よりいくらかマシなのが、日本にとっては士農工商・身分制度なのかもしれないという視点は持っていても良さそうです。

ほかにも、
・出身高校を褒める行為は、生まれた家庭を褒めていることになる。
「少人数学級が良い」は幻想
・1995年〜2019年で、日本人の平均学力は変わっていない。
・貧困対策は全体に効く。貧困対策は、人種や特別支援が必要な人のためになる。
・困ったことや課題は、政治家に陳情に行こう!

など、盛りだくさんの2時間でした。

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ホームスクール&ホームエデュケーション家族会では、定期的にZoomおしゃべり会を開催しています。
次回は9/22(木)14:00〜16:00です。日頃考えていること、悩んでいること、こんな工夫しているよ!などなど、ぜひ皆さまの気持ちや情報をshare,give&takeにいらしてください♪♪お待ちしております(^^)


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