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アイドルと仕事

podcast番組「アイドルと法律」!
この記事はvol.3「アイドルと仕事」の書き起こしです。番組の内容を文字でまとめています。
有料部分には、収録後の感想や補足情報を【ゆっふぃーからひとこと】、【深井先生からひとこと】として載せていますので、ご興味ある方は併せてお楽しみくださいませ。

Spotifyでの音声配信はこちらからどうぞ。

<参考資料>
日本加除出版「地下アイドルの法律相談」
深井剛志・姫乃たま・西島大介/著 
https://idol-horitsu.com

深井剛志 X アカウント @TSUYOSHIFUKAI
https://x.com/tsuyoshifukai

寺嶋由芙 Xアカウント
@yufu_0708
https://twitter.com/yufu_0708



寺嶋 podcast「アイドルと法律」!この番組では、ソロアイドル10年目、フリーランスのアイドルとして働くゆっふぃーこと寺嶋由芙が、アイドルの労働問題に詳しい弁護士としてご活躍の深井剛志先生から、アイドルが知っておくべき法律を学びます。
日本加除出版株式会社から発売されている「地下アイドルの法律相談」著者でもある深井先生が、働くアイドル・ゆっふぃーに、アイドルが直面しがちな労働問題をわかりやすく説明してくれます。

整えよう!あなたの推しの労働環境!

ということで、今回もよろしくお願いします。古き良き時代から来ましたまじめなアイドル、まじめにアイドル!ゆっふぃーこと寺嶋由芙と、

深井 弁護士の深井剛志です。お願いします。

寺嶋 よろしくお願いします。
さあ、この収録自体は第3回なんですけど、すでに第1回を、先日配信したということで。早速感想ツイートなどをいただいているので、 ちょっとご紹介していこうと思います。「#アイドルと法律」でツイートしてくださった皆さん!もうツイートじゃないんだ、これ何回もやってるこの下り…でも頑なに「ツイート」!「ツイート」してくださった皆さん、ありがとうございます。

深井 ありがとうございます。

寺嶋 まずは【黒山羊園芸】さんです。 「昨日から配信が開始されたゆっふぃーの新番組。本の内容に沿いつつ、ゆっふぃーが疑問に感じたことから話が展開したり、深井先生の実例など興味深い内容でした。サンリオの話から始まったのがゆっふぃーらしかったな」と言ってくださってます。はい、ありがとうございます。

深井 ありがとうございます。

寺嶋 サンリオは「みんななかよく」の会社ですからね。アイドルと弁護士の仲良しも繋ぎました。シナモンどうですか?その後。

深井 もうあれですよね、総選挙が始まってね。

寺嶋 そうなんですよ!

深井 今4連覇でしたっけ。V5ということになるかなと思ってます。

寺嶋 うちの子がね、ずっと2位を支えてるので、今年こそはちょっと頑張ってポムちゃんが上がっていくのではないか…「ちむぷり」もね、応援してるんで。
そして続きましては【ゆう】さんですね。「これ興味深いし、今後のテーマも楽しみ。ステージ上の人たちがちゃんとした契約で前向きに仕事できているのかは、応援する方にとっての関心事でもあるしな」と言ってくださってますね。

深井 はい。

寺嶋 こういうヲタク、ありがたいですね。

深井 そうですね、やっぱり「地下アイドルの法律相談」の冒頭にも書いたんですけどね、やっぱ持続可能な仕事じゃないと、応援する方もね、 応援できませんからね。やっぱりアイドルの仕事ってのは持続可能なものであるということが非常に大事じゃないかなと思います。

寺嶋 あとは、せっかく応援してる気持ちとか時間とか、もちろんお金とかが、ちゃんと応援したい本人に届いてるシステムの方が健全だなと。ヲタクする側としても。

深井 ですよね。なるほど。

寺嶋 私は、「推してもらう側」としては、「こんなにみんながやってくれてるのに、こんなかたちになっちゃってるのは辛い…」みたいな経験もあるので、うん、なんかそれは嫌だなと。「せっかく使ってくれたお金がこういう風に使われるのは嫌だな」とかですかね。「どうなっちゃってるかわかんないのが嫌だな」とか。別に悪いことに使ってなくても、「あれどうなってるんだろう?」みたいなことが続くと、 「せっかく(ヲタクに)やってもらったのにな」って、いろんな方向に対して思っちゃって残念になるから、そうじゃない方がいいし。「推す側」としても、ポムポムプリンの幸せをいつも私は願ってるわけだから、ポムちゃんのためになる、ポムちゃんが働きやすい環境だといいなと思ってます。はい。

では続きまして、同じように言ってくださってる 【大宇宙の無限GEM】さんについてですね。「我が推しが始めた新しいpodcast。度々問題になる、アイドルと事務所の契約問題について、本では届かない人に向け、音声コンテンツならと、全10回ぐらいでまとめてくれるらしい。自分の契約が大丈夫なやつか各自で自衛してほしい。ヲタクは心配することしかできないので」と書いてくださってます。そう、なんか心配させるの悪いから、心配なく活動できるようにしていきたい。私はあんまり心配ない側だと思うんですけど。

深井 そうですね、アイドルの方の経済状況とかで度々問題になりますからね。ちゃんとお給料もらってんのかなって心配しながらね、応援するのも心苦しいと思いますので、 この辺りはね。

寺嶋 楽しいことを楽しく受け取ってもらえるようにしていかなきゃいけないなと思っております。ありがとうございます。
うん。そして、【アスパラ】さんですね。「『整えよう!あなたの推しの労働環境!』とコールで始まるラジオ。コンビニでの売買契約、口約束での契約、プレゼントの譲渡契約。色々となんとなく理解してたものを、改めてきっちり理解できていくのは心地よかったな」と書いてくださってます。

深井 そうですね、結構、一般論としてはなんとなく知っているっていうことはあるかもしれないですけど、「法的に整理するとこうなんですよ」というのは、あまり馴染みない方も多いかもしれないですね。

寺嶋 「根拠あるんだ!」と思ってびっくりしました。プレゼントを渡したのは返してもらえないとか。

深井 根拠ありますよ。ちゃんと法律に書いてある。

寺嶋 そう、法律ってめっちゃいろんなこと書いてありますね。すごい。法律って、「そんなことまで決まってたんだ!?」みたいなことがちゃんと決まってて面白いです。

深井 そうですね。確かに1番身近な法律である民法と言われてる法律だって1000条以上ありますから。

寺嶋 弁護士の方は、それ全部覚えてるんですか……?

深井 ま、これよく言われますけどね、 全部暗記はしてないですよ、もちろんね。ただ、どういう場面でどういう法律を使わなきゃいけないのかっていうことはちゃんと頭に入ってるので。

寺嶋 (法律書の)引き方が分かるのか。

深井 問題が生じた時に「ここを見るんだったな」っていうことで六法を引いて調べると。そういう訓練をしてると。

寺嶋 そして【#猫とタイカレー】さんですね。 「たくさんのアイドルさんや、委託契約で働いている個人事業主に届いてほしい素晴らしい番組!」と言ってくださってますが、 これ目指していきたいと私も思ってます。アイドルの話をきっかけに、アイドルが聞いて役に立つ番組にしたいっていうのが大前提だけど、それを聞いた、個人事業主として働いてるヲタクの方とか、 そうじゃなくても、働いてる人たちのお役に立ったら1番嬉しいかなと思ってます。

深井 そうですね、この本、「地下アイドルの法律相談」もそうなんですけど、これ、「地下アイドルの」って書いてありますけど、個人的にはいろんなね、エンタメ業界で働いている声優さんだったり、舞台俳優さんだったり、モデルさんだったりにも当てはまるようなことを書いたつもりです。でも、それにとどまらずね、エンタメ業界だけにとどまらず、いわゆるフリーランスで働いているような方々にも届くようなものにしていければいいなという風には思ってますね。

寺嶋 ねえ、なんかお役に立てたら嬉しいなあと。契約の形態がアイドル本人、演者とは違うかもしれないけど、そのアイドル周りで働いてるスタッフさんとかの助けにもなったらいいのかなって。私は(思ってます)。

深井 アイドル周りで働いているスタッフさんはどうなんですかね。

寺嶋 多分、労働者っていうかたちで会社に雇われてる方が多いんですけど、1人何役もやらなきゃいけないとか、 いろんなこと、「大丈夫かな」って思う。働いてる時間とか、請け負っている業務内容とか、「ちょっとおひとりへの負担が大きいぞ」みたいなところも見受けるので、そういう方がご自身の働く環境を考えるきっかけになったら、より良くなっていくのかなと思ってます。

深井 そうですね。労働契約であるということであれば、ダイレクトにね、労働基準法が適用されるんですけど、まだまだそれが守られてない会社もたくさんあるんで、そういう人の働き方を見直すきっかけにもなればいいなと。

寺嶋 ほんと、「整えよう!あなたの推しと、推しの周りの労働環境」です。ほんとに。うん。ね、自分も含めてちゃんとしてかなきゃなと思うんですけど、 その…労働基準法。今お話に出た、労働基準法の話、前々回とかいろいろ聞いて、 「労働者、すごく守られてる!」って思いました。

深井 そうですね。労働基準法は、経営者の方から見ると「守りすぎだ」と思うのかもしれないけど、それはね、やっぱり歴史的に、労働者の方が非常に虐げられていたというところを守るということから、こういう規定になってるということですよね。

寺嶋 歴史的にかなり虐げられてた時代があるから、 もしこの労働基準法をなくしちゃったり、緩めちゃうと、またあの時代に戻っちゃうかもしれないから、ちゃんと守らなきゃってこと?

深井 そうですね。よく経営者側の人がSNSとかでね、「こんな労働基準法なんてない方がいいんだ」とかっていう風に言ってる人たまにいますけど、それだと 前近代に逆戻りですよと。我々人類は、そのね、経験を持って、今こういう法律を作ってるわけなんだとっていうことをよく考えますね。
(※この辺りは前回の書き起こしnoteの有料部分【深井先生からひとこと】もご参照ください)

寺嶋 そういうことなのか。私は自分のこの放送を聴いて…今、vol.1と2が出てると思うんですが、それを聴いて、 私、アイドルの味方をしてるようで、「でもこういう運営さんの事情もわかるんですよ…」みたいな、ちょっと(運営側に)忖度しすぎかなって反省したんですけど、どうですか?

深井 僕は聞いててそうは感じなかったですけれども、やっぱりそれは「いろいろな立場の人のこともあるんですけど、それはどうですか?」って、単に疑問に思って聞いてんのかなと思ったんですけど。

寺嶋 疑問にも思いつつ、なんかその、「やむを得ない…」みたいな事情も見てきたから、 「あんまりそこまで私たちが主張しちゃいけないのかな?」みたいなところで、 飲み込んできたことを…飲み込まざるを得ないよねみたいなことで成り立ってきた部分があるのも見てきたから、「あんまりそんな『権利がある!法律がある!』って言っても、無理なことあるよね」みたいなマインドが自分の中にまだ残ってるのかなと思って反省したんです。

深井 現場をね、見てきた方からすれば、当然、大変な経営者の方、大変な現場も知ってると思うんで、それからすると、ちょっと仕方ないんじゃないかなと。そういう感想を抱くのはやむを得ないのかなという風には思いますけれども。だからといって、じゃあ「アイドル側の方が、本来法的に認められる権利をないがしろにされていいのか」っていうのは、違うんじゃないかなってことですね。

寺嶋 そうなんですよね。そこの矛盾というか、守らなきゃいけないこと、ちゃんとやらなきゃいけないこと、でもやむを得ないこともある…みたいなことずっと考えてた中で、でもそもそも「やむを得ないとかがダメなんじゃない?」っていう気もしてきて。
ちゃんとしたその全部守って整えて、「きちんとここで安全に楽しく仕事ができます」よって環境作れないんだったら、アイドル運営やっちゃダメなのでは?って思ったんですが。極論すぎます?

深井 でもね、やっぱりかなりね、特に若い女性が使われてる業界多いと思うんで、そういう方々の将来などの重要な時期を預かる立場としては、確かにしっかりとした労働環境を整えるというのは非常に大事なんじゃないかなと僕自身は思いますし、やっぱり普通の業種っていうか、芸能関係じゃなければ、ちゃんとできてない会社って淘汰されていくものであると思うんですけれども、そういう市場原理がはたらきにくい業態ですよね、エンタメ業界っていうのは。

寺嶋 なんででしょうね、それ。

深井 うん、それはなかなかやっぱり芸能関係での、芸能業界での特殊なルールみたいなのが未だにあったりする、みたいなのも影響してるのかなとは思いますけれども。

寺嶋 そうですよね。かと言って、全部の環境を…ほらまた、「かと言って」って、こう、なんか謎の運営目線を立ててしまうんですけど!なんかこう、「全部の環境整えて、完全にバックアップしてできますよ」っていう状態まで会社を整えてから、「はい、新人さん募集!こっから育てます!」っていうのも、すごい大変なことだっていうのはわかるんですよ。それこそ、「なんか別の業種でめちゃくちゃ成功して、人的リソースもお金も余裕がある会社が芸能部門を作ります」とかだったらできるけど、今、いわゆる地下アイドル業界でやってる方って、運営さんも「夢追いかけてる系」の方が多いじゃないですか。「こっから俺の事務所おっきくしていくぜ」っていう。そういう方が熱意を持って新規参入してくる時に、「全部は整ってない、でも今いるメンバーと一緒に上を目指していきたい」っていう、それがすごくいい相互作用になってるのもなくはないと思うから、どうしていったらいいのかなって思ってます。

深井 「きちんとした箱とか人的リソースが整ってないと会社作れない」とか、「アイドル事業できない」っていうことになると、「じゃあ新規参入もできないのか」って話になってしまうので、ある程度はね、やっぱり「これから立ち上げるぞ」っていう層があっても仕方ないのかなと思うんですけど。やっぱりそういう方がね、これまで、その、経営とか、人を使ったりとか、そういう経験がない方も結構多いので。なかなか人を使うってのは難しいので、そういったノウハウだったり、知識的な部分は最低限は身につけてほしいなという風には思いますけど。

寺嶋 そりゃそうですね。うん。よし、じゃあ「やる気があって、新規参入したい、今から頑張るぞ!」って思ってる運営さんは、まずその知識と、環境、やっぱり整えていただくってこと(が大切ですね)。

深井 そうですね。アイドルさんが相談に来た時に、すごく、「コンプライアンス意識とか法律の知識全然ないな」って思う、そういう運営さんのところにいるアイドルさんもいるんですけど、 そういう人の経歴聞くと、やっぱり人を使った経験ってないんですよね。だから法律も知らないし、法律以外の「人の使い方」みたいなもの、やっぱりちょっと知らない。だからどうしても、人との対応の仕方がパワハラ的になってしまったりとか、脅すじゃないですけども、すごく高圧的な言葉で人を従わせるようなことしかできないような人も結構いますよね。

寺嶋 うん。そういう人はやっちゃダメだな。

深井 そういう人はね、「まず人の使い方を覚えてから来てくれ」っていう風になるんですけどね。

寺嶋 アイドルのレッスン場みたいな感じで、運営の育成の場も必要だな。スタートアップの勉強会みたいのあるじゃないですか。会社作る人、企業する人、それのアイドル版みたいのが、なんかこう、運営さん同士の情報交換の輪みたいなのがあってもいいのかもしれない。

深井 うん、多分してるんだと思うんですよね。現場で会った時に、「あの運営は知り合いだよ」とかいう風に言ってる運営さんとか社長さんもいるように聞いてますので。

寺嶋 で、その輪をちゃんとコンプライアンスとかの話もできるような輪にしていかなきゃダメなんですね。「コネクションがあるよ」ぐらいじゃなくて。

深井 その時に、芸能界の悪習みたいなものを互いに情報交換し合って、同じような扱いをしちゃってるだと非常に困りますけど。

寺嶋 そうね、交換する情報はいい情報じゃないとな。

深井 そうですね。だから結構ね、アイドルの人って(運営から)同じような対応されるじゃないですか。
契約違反したら解雇とか。解雇するときはSNSに解雇理由書かれるとか。で、違約金請求されるとか。もう判を押したように同じような対応されるんですけど。

寺嶋 そういうもんだと思っちゃってる。

深井 ですよね。だから、そういうやり方をSNSを通して知るし、他社のやり方を知るし、そういう情報交換してんのかなって感じはしますけどね。

寺嶋 そうですね。ちゃんとした勉強の場がないから、なんか間違った「それっぽい」、「こういうことするのがアイドル運営っぽい」みたいな間違った情報が回っちゃってて、「それっぽい」ことになっちゃう。

深井 それはあると思いますよ。やっぱり。だってね、ついこの間も「辞めたアイドルの実名を公表しちゃった」みたいなの見ましたけど、

寺嶋 そんなの絶対ダメですよね。

深井 ねえ。「解雇した、したらその解雇理由を発表する」みたいなのがなんかもう、アイドル業界のお作法みたいになってますけど。それは間違ってると思う。

寺嶋 そういう人達も気軽に相談できるようになったらきっといいんですよね。今だとほら、私が最初の時も危惧してたことだけど、「アイドルの権利を守ろう」って言ってると、「じゃあ運営と喧嘩しよう」みたいな話に見えたらすごい嫌なんですよ。一緒により良くなりたいから、運営さんも「アイドルが知恵をつけてきたぞ」みたいに思う人は多分ダメな人で、「アイドルも勉強してるから僕らも頑張らなきゃ」って思ってくれる人が増えるといいなってすごく思います。はい。

などと思いながら前2回の編集をしたり聞き直したりしてたんですけれども。
じゃあ、前置きが長くなりましたが、本日のテーマでございます。第3回本日のテーマは「アイドルと仕事」です。仕事。いっぱいありますけど。

深井 基本はライブに出るとか、イベントに出るとか、特典会、握手会。そういうのに出るっていうことが仕事ですね。

寺嶋 そうですね。あとは、音楽出す時にレコーディングをするとか、その関連した撮影をするとか、取材を受けるとか、 いろいろあります。写真集とか出す子もいるし。あとは、こうやって配信でいろんな番組に出る子もいれば、テレビに出る子もいれば…などなどです。このたくさんの仕事の中で、トラブルになりがちなものってあるんですか。

深井 これまで相談に来た中では、やっぱりちょっと露出をするような写真ですね。簡単に言うと水着の写真とか。それを強要されたという相談は受けたことがありますね。

寺嶋 強要は絶対ダメですよね。

深井 でも、どうなんですかね?地下アイドルの方って、僕ちょっとあんまり業界には詳しくないんですけど、水着の仕事の依頼とかって結構来るんですか。

寺嶋 来る子もいるし、自分からやる子もいる。撮影会みたいな…自分からなのか、運営さんからなのかわかんないですけど、 結構こう、積極的にやってる子もいます。

深井 撮影会っていうのは、水着の雑誌に出るとかそういうのとは違うんですか?

寺嶋 (雑誌に)出るとかもあるけど、撮影会はアマチュアカメラマンの方、ファンの方がカメラマンになって、時間制なのかな?とかで写真を撮ってくれるっていうやり方をしてる子もいます。

深井 なるほど。だから、プロのカメラマンの前でだけでなくて、ファンの方の前で水着になって写真を撮ってもらう。そういう仕事ですね。
で、そういう仕事はちょっとね、「嫌だな」って思う人がいてもおかしくないかなと思いますけど。

寺嶋 ですよね。そういうのって、断りたいことがあった場合に、断るのすごいエネルギーいるのも経験上わかるというか…めちゃ大変です。

深井 うん。

寺嶋 「ならもう(アイドルを)辞めろ」って話になります。

深井 そうですね、だから、前回のお金のね、第2章、お金の話の時にも少し言いましたけれども、 そういった仕事を断ることができるかどうかという点が、労働契約なのか、業務委託なのかの、1番大きなポイントですよって言ったと思うんですけれども、やっぱり、そういう強制力が働いているっていうか、断りにくい環境でもいいんですけど、「この事務所の仕事は断れないな」というような状況になってくると、やっぱり労働契約に近づいてくるということですので、事務所がね、「いや、労働契約じゃなくてこれ業務委託なんだ」というんであれば、ちょっとそれを逆手にとってね、

寺嶋 「それは委託されたくないです」って言う!

深井 そうそうそう、「業務委託なのであれば仕事断る権利ありますよね」と言って、そういう仕事を断るということは法的には考えられますよ

寺嶋 ね。でも、法的にオッケーでも、断った後めちゃくちゃ気まずいとか…嫌がらせをされるとか…。

深井 今僕が「法的に」っていう風に言ったのはまさにそのところで、法的には確かにそうだけど、「じゃあ実際、現場で事務所の人を前にしてそんなこと言えるか」というのは、大変よくわかるなという。

寺嶋 でもそこで「これはやりたくないんです」っていう話がちゃんとできない時点で、信頼関係築けてないから。それを1つの、「ここに居続けていいのか?」っていう基準にしてもいいのかもしれないです。「そんな簡単に辞めらんないよ!」っていう気持ちもめちゃくちゃわかるけど。うん。

深井 実際どうなんですかね。そういう仕事が来た時にちゃんとアイドル側の意向を聞いてくれる事務所とかって、どのくらいあるんですかね。

寺嶋 私は今の事務所…今、事務所ないや、今フリーランスだ(゚ω゚)
でも、今ソロになってからの環境で、嫌なのに水着になったこと、1回もないです。

深井 それはフリーだからってこと?

寺嶋 いや、過去、事務所に所属してた時も水着の仕事あったけど、嫌だったことないです。で、「どの程度の水着を着るか」とかまで相談させてもらいました。

深井 なるほどね。うん。

寺嶋 で、撮った写真も全部自分で確認して、「この写真を使ってもいいです」っていうのは、みんなで話し合ってできました。

深井 なるほど。例えば、「こういう水着の撮影の仕事があるんだけど、やる?」とかっていう風に聞いてくれる感じなんですか?

寺嶋 聞いてくれました。最初、雑誌の水着グラビアの時も、マネージャーさんが聞いてくれて。それ最初だったんで、すごい悩んだんですけど。でも、 そのマネージャーさんのことも信頼してたし、雑誌社の方も知り合いだったんで、「みんなで相談しながらできます」っていうお話だったから受けて、実際相談しながら綺麗な写真選んでもらえたし。
その後も、例えばミュージックビデオで水着になるとか、夏のライブイベントで水着になるとか。
でも、たまにですよ。私、多分アイドルの中で10年やってて、水着すごい少ない方だと思うんですけど。それは「需要がないから」とも言えるんですけど、 でも需要がないから、「嫌な気持ちになってまでやらなくていいや」って思えたのもあります。

深井 なるほど。

寺嶋 自分がすごいグラビア的に引きがあるタイプのアイドルだったら、 なんかこう、「知名度上げるために頑張らなくちゃ」とか、「みんなが待っててくれてるからやらなくちゃ」とか、そういう部分でもしかして悩んで、自分が抱えられるキャパ以上に水着をやろうとしたかもしれないけど、全然そんなことなかったから。「夏だしそろそろ1回ぐらい水着やっときますか!」みたいなくらいの感じ。「そうですよね、1回ぐらいやりましょうね!」みたいな。結構楽しくというか、自分もノリ良くできたから、あんまり問題になるようなやり方は、ソロになってからはしてないです。

深井 あ、ソロになってからですね。

寺嶋 そう。そうですね。ちょっとそれはなんていうか、ちゃんと言いたい。「ソロになってからは」してないです。

深井 なるほど。

寺嶋 で、ソロになる前も、別にめちゃくちゃ嫌なのにやったことっていうのは…なくはないけど、1番嫌なことはちゃんと断りました。「ここはやっちゃいけない」っていうことは断ってました。

深井 なるほど。

寺嶋 でも、断ったら、その後辛い思いはしましたけど。

深井 なるほどね。だから、これまでね、相談に来てくれた方で、 自分がその水着の仕事を断ったことでかなり嫌がらせを受けたと、そういうような方もいたんですけれども、その時の聞き方というのが、 「いや、これ断るとかないから」とかですね、「これは事務所の指示なんだから強制だよ」みたいな感じで言われていたので、やっぱりなんかそういう強制力を背景に水着の仕事を命じられていたと、そういう事例はありましたね。

寺嶋 でも、本当は労働者契約じゃない、業務委託契約なんだから強制力なんかないし、 仮にもし労働者契約だったとしても、嫌なことをやらせちゃダメですよね?

深井 というのがやっぱり法的な処理になりますよね。

寺嶋 よかった!

深井 この「地下アイドルの法律相談」にも書いたんですけれども、業務委託であろうと労働契約であろうと、「その人の意に反してまで命じることができない業務」というのはある、という風に裁判所は判断していて、これちょっと極端な例かもしれないんですけど、そういうのが争いになった事例は、「モデルで契約したんですけれども、アダルトビデオに出演させるというようなことが契約書に書いてあって、それを断ることができるか」ということが問題になった事例はありますね。

寺嶋 でも、それやらせようとしてる側はなんで、「そんなのダメに決まってる」ってわかんないんだろ?

深井 一応ね、契約書に書いてあったんで。

寺嶋 だって、契約書に書いてあってダメでしょ!そんなの!書いてあったらいいんですか?

深井 「契約書に書いてあるから」。これ、法の建前ではですよ、契約書に書いてあったら、その契約書に書いてあることは一応やらなきゃいけない。双方が合意したという約束ですから。事務所側からしたら、「約束したことだろう」ってことでアダルトビデオに出演させようとしたと。
で、それを断ることができるかっていうね、そういう事例があったんですけど、裁判所は、「それは意に反してまで命じることのできない仕事だ」ということで、「労働契約であっても…それは労働契約だっていう風に認められたんですけど、労働契約であっても命じることはできない仕事だ」という風に言って、「その人がアダルトビデオ出演を断ったことは、違法じゃないよ」っていう判断しました。
で、それはアダルトビデオで極端な例かなと思いますけど、じゃあ、水着はどうかと。「水着のグラビアの撮影ならいいけど、撮影会はちょっとな」とか、いろいろあると思うんで。

寺嶋 ありますよね。あと、「ビキニは嫌だけど、ワンピースの水着ならいいです」とか。

深井 うん。で、まあね、これ個人的な見解ですけど、私個人の見解ですけど、じゃ、水着になるってことがね、一般人だったら、誰もが、「別にやっても構わない」と思える仕事かどうかと言うと、僕は、そうじゃないんじゃないか、そうじゃないと思うんで。嫌がる人は絶対いるはずなので。そうすると、「出たい」とか、「水着になってもいいよ」っていう人は別だけど、「水着になりたくない」、「撮られたくない」って思ってる人にまで、意に反して命じることができる仕事かっていうと、 「それはちょっと違うんじゃないのかな」という風に僕は思ってます。

寺嶋 そうですね。あと、私がすごい思うのは、 本人が「やりますやります」って言ってても、その子が何歳か?とかはちゃんと考えなきゃいけない。

深井 そうですね。

寺嶋 私がね、今「水着やります!」って言ったら、さすがに自分の意思じゃないですか。もう完全に成人してて、大人だし。でもこれを10代のアイドルちゃんとかに「水着をやろうね、可愛く撮ろうね」って言って、本人が「可愛く撮ってくれるなら」って思ったとしても、 やっぱり10代の時に判断できることと、大人になって判断できることって違うから。アイドル、(特に)地下アイドルって言われてるアイドルは割と大人が多いけど、でも、アイドル業界ってちっちゃい子も結構いる中で、そこは結構…なんていうのかな、シビアに見なきゃいけないし、「そもそも10代の子の水着必要ある?」とかも考えなきゃいけないし。とかは、自分が大人になったから、より思います。

深井 うんうん。「どの年になったら正常な判断ができるのか」って、別に線引きがあるわけじゃないので、難しい問題ではあるんですけれども、 やっぱりね、自分の意に反してできるできないっていうことを考えた時に、じゃあその人の本当の本意でやってるのかどうかっていうところは、当然問題になってくると思いますね。

寺嶋 なんか、その、年齢的なこともそうだし。前回、お金の話で、「ちゃんとアイドルが報酬をもらえてない場合がある」、「すごい忙しく働いてるのに、働いた分だけのお金がもらえてない場合がある」っていう話があって、そうすると、「じゃあ代わりにバイトをしなきゃいけない」とか、もしかしたらもうちょっと、「なんか危ないことでお金を稼がないといけない」みたいに追い詰められてた場合、判断力ってどんどん鈍っていくじゃないですか。その中で、「水着やりなよ」とか、「もっと過激なことやりなよ」って言われていたら、断る正常な判断力がなくなっちゃうんじゃないかなと思っていて。
そういうのとかもちゃんと、誰かが見てあげないと怖いなと思う。

深井 その時にね、1番判断してあげるべき人は本来運営なんですけどね。

寺嶋 そうなんです。

深井 だからね、出版社とかカメラマンとかからこういう仕事が来た時に、その人のマネージメントを請け負ってるわけですから、本来は、その仕事はできない、できる、っていうことをちゃんと(本人の)意思を確認して、しっかり話し合った上で、その仕事を受ける、受けないっていうのを決めなきゃいけない。(その役割は)本来ね、運営であるべきなんですけども。今の問題は、その運営が命じてくるとかそういう風になってきちゃってるからね。

寺嶋 それはちょっと違うなと。アイドルと運営さんはチームであるべきなのに、どうしてもこう、対立しちゃう問題が出てきがちじゃないですか。

深井 そうですね。今切り取ってる事例だと、仕事を命じる側と、それをやらなきゃいけない側ということで。

寺嶋 それはなんか違うなって、すごく、いつも思うんですよね。
だから、そうやって判断力が落ちてる時にいろいろ言われて断り切れなくてやっちゃったとか。それはすごい、あるだろうなと思うし。あと、撮影しちゃったり、物ができちゃった後で、 「でもやっぱりちょっと販売するのはやめてほしい」って。例えば、「脱いだ写真集撮っちゃったけど、あの時はもう言われるがままに撮っちゃったけど、どうしてもその写真を販売されるのは嫌だから、やっぱりこの仕事無かったことにしてほしい」ってそこで言っても、 「いや、じゃあカメラマンのお金を出してください」とか、「賠償してください」とか、きっとなるんですよね。

深井 うん。1回出ること承諾した後にね、「やっぱり嫌だったから」は結構大変。

寺嶋 じゃあ、やっぱやる前に、なんとか止めなきゃいけないんですね。

深井 そうですね。

寺嶋 うん、そうですよね。しかも、「やめてほしい」って言っても出されちゃう時あるし。やっぱ、できれば、やりたくない場合は、 ちゃんとやる前に断れるようにするのがいいんだろうな。大変だけどね。でも、「断るのが大変な環境っていうのは、おかしい環境なんだ」って気がついた方がいいんだろうな。

深井 そうですね。だから、そこがやっぱり事務所との間の信頼関係っていうとこに繋がってくるのかなという風に思いますけど。

寺嶋 …悲しくなってきました(´°ω°` )
じゃ、今すごいこう、嫌なパターンの、話を聞いて、「断った方がいいだろうな」って、明らかに、客観的に見ても「ちょっとそれは嫌なら辞めた方がいいよ」って思うような事例でしたけど、「そんなひどい仕事じゃないんだけど、 自分のポリシーに反してる仕事」みたいなのが来た時に、どこまで断れるんですか?アイドル。
例えば…なんか…例えば…難しいんですけど。

深井 ちょっと難しいですね。一般論で言うと、僕はアイドルさんは基本的には労働契約だと思ってるんで、 通常のアイドルさんであればね。そうすると、基本的には、事務所が言った仕事っていうのはやんなきゃいけないんじゃないかなっていう風には思ってるんですけれども。その仕事がね、あまりにも逸脱してる仕事だったり、一般人だったらそれ嫌がる人がいて当然だよねって思うような仕事じゃなければ、やるべきなんじゃないのかなとは思ってますけどね。

寺嶋 うん。

深井 ちょっと今、寺嶋さんがどういうね、仕事をイメージしてるのか、ちょっとわかんないですけど。

寺嶋 なんかこう、自分のブランディングにちょっと違うな、みたいな。
例えば…でもこれは絶対断るもんな〜。例えば、私が「ゆるキャラ大好きアイドル」で、こうやっていろんな方とお仕事させてもらってるのに、「着ぐるみの頭を取ります!」みたいなおもしろ仕事をもらったとして。有名な番組のドッキリ企画で頭取るとか。「アイドルとしてメディア露出はすごい増えるけど、でも私は絶対やりたくない」みたいなことってあるじゃないですか。でも、私じゃないアイドルちゃんだったら絶対それ、やってもいいことなんですよ。みたいな場合に、それを断れるのかな?
でも、私のマネージメントをもし誰かがしてくれてて、私のブランディングを、「ゆっふぃーちゃんはゆるキャラを大事にしてきたアイドルだから」っていうことを共有できてれば、「それを絶対やりなさい」とは、きっと言われないですよね。

深井 そうでしょう。

寺嶋 でも、そこまで共有してない(相手が)、「あなたが売れるためにだってこんないい番組に出れるんだよ」とか言って、「売れるために、その全国ネットの番組でをちょっと着ぐるみの頭取るだけじゃん〜」みたいな話だったら、すごい断りづらい…かな?どうだろう?
(※とか言いつつ絶対断ると思う)

深井 僕は法律家なので、法的な観点から言いますと、原則はね、仕事断れないのが労働契約、断れるのが業務委託契約、みたいな話をしたので、 労働契約であるアイドルさんであれば、基本的には仕事は断れないっていう話になるのかもしんないですけど、 じゃあ、そういう仕事を、もう有無を言わさず、アイドルに命じるとか、そういう環境ってのが、やっぱりちょっと不健全ですよね。だから、やっぱりね、そういう、「もうとにかく事務所が一方的に命じて、アイドルはそれに従うだけ」っていうのが、法的にはそれで正しいのかもしんないけど、やっぱそうならないように(働きかけていかないといけないね)。

寺嶋 それだと、誰でも良くなっちゃいますもんね。アイドル側が、その子がやりたいこととか、その子が得意なこと伸ばしていくっていうのも、 ブランディングとしてというか、他との差別化としてすごい大事なことなのに、「言ったことをただやればいいんだ」だと、ちょっとそれができなくなっていくから。

深井 なので、やっぱりね、そういったところをきちんとその事務所と話し合って、で、その仕事を受けるのかどうかってところから話し合える環境を作っておくっていうのが基本になるんじゃないのかなという風には思います。

寺嶋 そうですね。うん。「なんでやりたくないのか」をアイドル側もちゃんと説明できるようにならなきゃいけないし、それをちゃんと運営さんも聞いてくれるような環境を目指す方がいいですね。じゃ、信頼関係がやっぱり大事だと。
じゃあ、「信頼関係がない人に勝手に使われちゃった場合どうしたらいいかな」っていう話も聞きたくて。今までの話は、運営さんがアイドルに「これやれあれやれ」って言って、アイドルが「ほんとは嫌なんだけどな」みたいな問題だったけど、全然関係ない、例えば「メイドカフェの看板に自分の写真が使われてる」とか、「マッチングアプリに自分が使われている」とか。アイドルってどうしても顔写真を出して仕事してるから、それ拾って勝手に使われちゃってることあるんですよ。不本意なかたちで。それは削除してもらえますか。

深井 それ結構聞きますね。僕も相談で受けました。マッチングアプリの写真に使われてる、です。

寺嶋 えー、ひどい話!でも、使われちゃったアイドルとしては…私使われてないけど、使われたアイドルは多分、超有名だったら使われないじゃないですか。バレるから。「この子ぐらいだったら気がつかれないだろうな」みたいなことで舐められて使われてるのとかも、結構傷つくと思う。

深井 まあね、テレビによく出てる地上波全国ネットで出てるレベルのアイドルだったら、さすがに使われないからっていう、そういうことですよね。

寺嶋 そうです。なんかそういう意味でもめちゃくちゃ失礼だなと思います!

深井 なるほど。そういう場合はね、当然、「自分の写真を勝手に使うな」ということで削除要求することできますね。法的な根拠としては、「肖像権を勝手に侵害した」と。「自分の肖像を勝手に使われない権利」っていうのがあるんだということで、それを侵害されているということで、削除を要求するということはできますね。

寺嶋 それは大丈夫。じゃあ、ぜひ、そういう不本意なかたちで許可してないものに使われてたら、そうしましょう!
と、思うんですが。これは、マッチングアプリとかメイドカフェとか、自分の本業と関係ないところで写真が勝手に使われちゃった場合。じゃあ、ちょっと関係ありそうなかたちで無断転載されてた場合はどうかな?っていう…。

深井 関係ありそうな?

寺嶋 なんか、例えば、「アイドル図鑑」みたいな感じで、誰かがホームページにまとめてるとか。「寺嶋由芙ちゃんこんなアイドルです、紹介します」って言って、アーティスト写真が使われてるとか。で、それに例えば広告がついてて、広告収入が入るようになってたりしたら、「むむ( •᷄ὤ•᷅)」って思うのかな。

深井 なるほど。その人は、その他人のアイドルの写真を自分のホームページに掲載して、広告収入を得たりとか、そういうことをしてるってことですよね。他人の写真を使って営業してる、経済的利益を得ている、そういうことになるんですけど。それはですね、さっきの肖像権と考え方が似てるんですけど、ちょっと説明の仕方が変わって。「パブリシティ権」っていう権利が侵害されたっていう風によく言いますね。パブリシティ権というのはどういう権利かっていうと、「自分の顔写真とか、自分の姿、形、容貌とかを経済的に利用できる権利」。それを使って収益を得たりすることができる権利。それを パブリシティ権と言います。経済的権利ですね。肖像権と何が違うかっていうと、肖像権というのは、「自分の人格に関わる権利、 自分の容貌を公開されないたための権利」で、人格に関わる。それを使って営業したりとか利益を得たりとか、そういうための権利とはちょっと異なる権利とされてるんですね。ただ、肖像権っていうのは、その人独自の人格的な利益ですので、「他人に渡すことはできない」とされてるんです。だけど、パブリシティ権は、営業する権利なので…

寺嶋 事務所に渡してもいいんだ!

深井 事務所に渡して、自分の肖像とかを使って、 そういうこと(営業活動)ができる権利。

寺嶋 じゃあ、私たちが事務所とかレーベルさんとかに預けてるのは、パブリシティ権なのか!

深井 そうです。

寺嶋 肖像権じゃない!

深井 そうです。「肖像権が事務所にある」とか、そういう風に書いてある契約書ありますけど。それね、多分法的にはおそらく間違いで。

寺嶋 あ、そうなんだ!

深井 うん。肖像権っていうのは、基本的にはその人個人に属する権利で、贈与の対象にならない。

寺嶋 もう譲れないもの。

深井 うん、「譲渡の対象にならない」と言われてるんですね。

寺嶋 へえー!

深井 ですから、 「肖像権が事務所にある」って書いてある契約書は、僕の理解では間違ってる。パブリシティ権なら合ってるんじゃないかなと思います。で、そのパブリシティ権っていうのは、 基本的には本人がね、持ってる。当然ね。寺嶋さんだったら寺嶋さんが持ってる。だけど、それを事務所に預けて、事務所が管理することは契約でできるよ、ということになるわけ。

寺嶋 うんうん。

深井 じゃあ、さっきの「アイドル図鑑」ですか。「アイドル図鑑」の人にパブリシティ権を与えるとか、自分の容貌を使って利益を得る権利を与えてはいませんよね?

寺嶋 与えてないですね。

深井 すると、それはパブリシティ権の侵害だということに繋がっていくわけですね。

寺嶋 これが利益を得てなかったらどうですか?「ほんとに広めてあげたいんだ!」っていう気持ちで、「ただ俺はアイドルを盛り上げたいんだ!」っていう気持ちで無料公開してたら?

深井 その場合は肖像権の問題。

寺嶋 ああ、そうだ。じゃ、結局ダメなのか。

深井 だから、基本ダメですよ。

寺嶋 やっぱりそうなんだ。

深井 すごい細かいこと言うと、SNSにアイドルさんがあげた写真を保存して、それを自分のアカウントで投稿するとか。

寺嶋 そうなんですよ。

深井 別のとこに転載するとか。それもダメ。本来ダメです。

寺嶋 それめちゃくちゃ難しいんです。アイドル側は、本来ダメなのわかってるんですけど、例えば「お誕生日おめでとう」とか言って私が昔あげた自撮りとかアー写とかにみんながメッセージ書き込んで画像を加工してアップしてくれたりするのを、ダメなんだけど、嬉しいんですよ。「ありがとう、気持ちはめちゃわかる、でもダメ、どうしよう。」みたいな感じで、結構触れられないアイドル多いと思います。

深井 ま、そうですね。広めてくれてるのはありがたい。

寺嶋 そう、ありがたいし、お気持ちもありがたいし。全然悪用でもないし。だけど、「無断で写真使わないでね」っていう。
もうこれだけ無断転載なものが多かれ少なかれ広がっちゃってる中で、多分私のファンの方ってこのpodcastで「無断転載やったらダメなんだよ」って言ったら、「ダメなのか!もうやめます!」ってぴしっとやめてくれる方が多いんですよ。
そうすると、私の写真、ほんとにSNSに私があげたものしか残らなくなって、で、もうちょっと緩くやってる方々がいっぱい拡散されるのを、多分もどかしく思ってくれる人もいるだろうなと思う。

深井 なるほどな。宣伝効果としては。

寺嶋 だから割ともう「これは宣伝になるから」とか「愛情ありきのものだから」って言って黙認してるアイドルは結構多い。

深井 でも実際もうSNSってそういう場になってて、「法的に見たらそれもうアウトですよ」っていうことがまかり通っていても、それが取り締まれなくなってるね。そうなってるのは僕も否定しませんので、「法的に所属権侵害だからダメだよ」ってことはね、法的な見解聞かれればそう答えますけど、じゃあ実際ね、それを取り締まるべきだとか、全部辞めさせるべきだというところまで意見を持ってるかというと、別にそういうわけじゃないですね。

寺嶋 法的にはダメだけど、もっとダメなこといっぱいあるから、そっち先に片付けた方がいいですね。
すごく、そういうのはね、日々モヤモヤしながらやってます。で、私、割とそういうのを理解してくれてる人が多いから、私の周りに。ヲタクの皆さん含めて。だから「きちんとやっていこうね」って思ってるけど、「きちんとやってるから損してる」みたいに思っちゃう時も、多分ある。うん、損じゃないんだけど。

深井 確かにね、ファンの人が写真を転載したりとか、そういうことに使ってるのに対してね、それが肖像権だからどうだとか、パブリシティ権だからどうだとかっていうと「なに野暮なこと言ってんだ」みたいな、そういう空気にはなってますよね。

寺嶋 それがすごく卑猥な加工をされてたとか、明らかに悪意がある場合だったら、もちろん、このパブリシティ権を行使して…肖像権かもしれない?肖像権を行使して、「そんなことやめてくれ」って言っていくけど、そうじゃないパターンも今いっぱい出てるから、難しいなって思います。はい。
というのが今日の話でした。「仕事を断れるか断れないか」っていう話から、問題になりがちな仕事の内容とかをご説明して、問題にするほどじゃないけど、気になってたこと聞いて。という流れでございました。いかがでしたか?

深井 僕は、アイドルの人の現場の状況とか、そこまでは知らなくて、どんな業務指示関係かとか、そういうところについては(相談を)持ちかけられることがあるんですけれども、 アイドルさんがどういう点に困っていて、どういう場を持ちながら、仕事してるのかってのは、今日結構知れてよかったなという風に思います。

寺嶋 ありがとうございます。 というわけで、今回のテーマは、「アイドルと仕事」でした。この番組を聞いてくださった皆さん、感想は是非「#アイドルと法律」でポストをお願いいたします。

この番組で取り上げてもらいたい匿名相談がありましたら、深井先生にDMをお願いします。で、「番組では取り上げられたくないけど、ちょっと困ってます」っていう方も連絡していいそうなので、深井剛志先生のダイレクトメッセージにご連絡をください。
役に立つかは分からないけど、ゆっふぃーと話したいという方はinfoのメールアドレスが公開されてますので、そちらからご連絡ください。

この番組でお話した内容は後日活字にしてnoteで公開予定ですので、そちらもぜひコメントなどいただけると嬉しいです。
それでは、今回もお聞きいただきましてありがとうございました。次回のテーマは、「アイドルと禁止事項の話」です。次回もどうぞお楽しみに!
ここまでのお相手は、ゆっふぃーこと寺嶋由芙と

深井 弁護士の深井剛志でした。

深井・寺嶋 ありがとうございました〜。



↓以下、有料部分では、「世の中に公開されてしまった写真を、アイドル引退後等、公開から時間が経って取り下げてもらうことはできるのか?」という疑問を切り口にした深井先生からの補足情報や、法律を知ることの大切さを噛み締めながら無断転載にもやもやするゆっふぃーの感想コラムをお読みいただけます。(1818文字)

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