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見える少女の相談【後編】
コトン。
薄い朱色の陶器を置き、風に飛ばされないように気をつけながら、髪の毛を入れる。
「ここの守りと、鑑定はします。後は、頼みますよ?」
「うっす。頑張ります」
新に言われて、満は首から下げていた笛を思い切り吹いた。4本の尻尾が風に揺れる。
「人間を守ることができるやつは集まれー」
ピィー。
笛の音が響き渡ると、ぽつぽつと妖が集まってきた。ひそひそと話し声が聞こえる。
「……
見える少女の相談【前編】
コンコンコン。
満がドアを開けると、高校生くらいの少女が立っていた。
「どうぞ。こちらにお座りください」
手のひらで椅子を示すと、少女は会釈して腰を下ろした。店内をきょろきょろと見回している。
「どのような用件でしょうか?」
満が優しく訊くと、少女は俯きながら小さな声で言った。
「その……私、色々なものが見える体質で……生活にも支障が出始めてしまって、その、どうにかしたくて」
「
中学校内失踪事件【後編】
「よいしょ」
辺りはすっかり真っ暗になっている。新が器用に門を登って、学校内に侵入した。満に合図を出すと、豪快に跳んだ。
「……隠してますけど、できるだけ音はさせないでください」
「ごめんごめん」
ぺろっと舌を出す満に、新はあからさまにため息をついた。気を取り直して、校舎を見上げ始める。真っ黒な瞳を見開く新に、満も静かに同じ方を向いた。
「3階。3階に何かいます」
瞳孔を開いたまま
中学校内失踪事件【前編】
コンコンコン。
ドアを叩く音が部屋に響く。茶髪の青年がドアの方をチラリと見る。
「どうぞ、お入りください」
疲れた表情の男性がドアを開けて、店に入ってきた。男性を見て、茶髪の青年は黒い目を細める。男性は40を超えているだろう見た目だ。一方、青年は20歳前後だろうか。
「ひとまず、お座りください」
「すみません……」
今にも倒れそうな男性を見つつ、茶髪の男性は店の奥に声をかける。