ゆきの

消えないように小説を投げるだけのアカウントです。 あまり顔は出しません。

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最近の記事

見える少女の相談【後編】

 コトン。  薄い朱色の陶器を置き、風に飛ばされないように気をつけながら、髪の毛を入れる。 「ここの守りと、鑑定はします。後は、頼みますよ?」 「うっす。頑張ります」  新に言われて、満は首から下げていた笛を思い切り吹いた。4本の尻尾が風に揺れる。 「人間を守ることができるやつは集まれー」  ピィー。  笛の音が響き渡ると、ぽつぽつと妖が集まってきた。ひそひそと話し声が聞こえる。 「……該当者なし」  新が言った。暗闇と同化する黒い目が静かに光っている。満は、その

    • 見える少女の相談【前編】

       コンコンコン。  満がドアを開けると、高校生くらいの少女が立っていた。 「どうぞ。こちらにお座りください」  手のひらで椅子を示すと、少女は会釈して腰を下ろした。店内をきょろきょろと見回している。 「どのような用件でしょうか?」  満が優しく訊くと、少女は俯きながら小さな声で言った。 「その……私、色々なものが見える体質で……生活にも支障が出始めてしまって、その、どうにかしたくて」 「なるほど。これは俺の手には負えないかなぁ。少し待っててください」  奥に戻り、

      • 夢の中の少年

         ふと目を覚ますと、トバリは知らない場所にいた。足元の床は、水面のような柄で心なしか揺れているような気がする。 「……あぁ、夢か」  そう思った途端、体が自由に動くようになった。トバリは自虐気味に笑う。 「化け物も夢は見るんだな。まぁ、出口でも探すか」  水面のような床を歩くが、水が跳ねる音はしない。何とも不気味だが、夢なんてそんなものかと納得させた。  しかし、歩いても歩いても景色は変わらない。時間の流れは分からないが、10分くらいは歩いた気がする。足を止めた瞬間

        • 恋愛と結婚のおまじない

          「あの! トバリさんですか!」  こげ茶色の髪色をした、元気な女性がトバリに声をかけた。スーパー帰りのトバリは驚きつつも、返事をする。 「はい。依頼でしょうか?」 「本物だっ。はい、そうです!」  目を輝かせて女性が答えた。あまり関わらないタイプの女性だ。そんな人が一体、何の依頼だろうか。不思議だが、少し興味をそそられる。 「では、場所を変えましょうか。着いてきてください」  パチン。  指を鳴らし、いつもの薄暗い店に女性を招く。そこでも、女性は明るい表情のままだ。

        見える少女の相談【後編】

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        • 双子の何でも屋
          4本
        • 呪い屋トバリ
          5本

        記事

          中学校内失踪事件【後編】

          「よいしょ」  辺りはすっかり真っ暗になっている。新が器用に門を登って、学校内に侵入した。満に合図を出すと、豪快に跳んだ。 「……隠してますけど、できるだけ音はさせないでください」 「ごめんごめん」  ぺろっと舌を出す満に、新はあからさまにため息をついた。気を取り直して、校舎を見上げ始める。真っ黒な瞳を見開く新に、満も静かに同じ方を向いた。 「3階。3階に何かいます」  瞳孔を開いたまま、静かに新が言った。 「そんじゃ、行きますか」 「はい。一応、気をつけながら行

          中学校内失踪事件【後編】

          中学校内失踪事件【前編】

           コンコンコン。  ドアを叩く音が部屋に響く。茶髪の青年がドアの方をチラリと見る。 「どうぞ、お入りください」  疲れた表情の男性がドアを開けて、店に入ってきた。男性を見て、茶髪の青年は黒い目を細める。男性は40を超えているだろう見た目だ。一方、青年は20歳前後だろうか。 「ひとまず、お座りください」 「すみません……」  今にも倒れそうな男性を見つつ、茶髪の男性は店の奥に声をかける。 「満、水の用意をお願いしてもいいですか」 「りょーかい。新の方が、話を聞くの上手

          中学校内失踪事件【前編】

          憂さ晴らし

           ふんふんふん。  鼻歌を歌いながら、コンビニから出てきたトバリ。軽い足取りのトバリの前に、黒い蝶が飛んできた。 「僕に御用?」  蝶に訊くと、蝶は答えずにゆっくりと飛び始めた。その後ろをトバリがついて行くと、小さな公園にたどり着いた。 「あぁ、あの人が僕に用があるのか」  ベンチに腰を下ろしている男性に、トバリが声をかけた。 「人違いでしたら、すみません。僕にご依頼ですか?」  男性は、トバリを頭から足先まで見下ろすと、こくりと頷いた。 「では、場所を変えまし

          憂さ晴らし

          浮気と呪い【解編】

          「っ、はぁ……はぁ……」  茶髪の女性が飛び起きる。首に手を当てて、自分が生きていることを確認しているようだ。部屋の時計は午前5時を示している。 「夢、だよね」 「うんうん。上手くいってるね」  四角い水晶のような板を見ながら、トバリが言った。呪いの効果や、自分と関わった人がどうなるのかを見ているのだ。 「この人は僕の呪いを解くことができるのかな?」  トバリが安価で呪いを売るのは、比較的簡単に解くことができるからだ。それを教えず、自分も呪いを解くことを拒否するのは

          浮気と呪い【解編】

          浮気と呪い【呪編】

           この街には、呪いを代行してくれる『呪い屋』というものがあるらしい。その中でも、有名で1番効果のある呪いを扱う人物がいるのだとか。 「んー、美味い」  もぐもぐと頬を動かしながら、満足気に笑う少年。学生服を着ているが、青年にも見える。 「ここもメモに追加しておこう。良い店を見つけてしまった」  鼻歌を歌いながら手帳にペンを走らせる男性に、茶髪の女性が近づいてきた。 「あの、すみません」 「ん?」  深く被った学生帽を少し上げて、男性は女性をちらりと見た。黒い影から

          浮気と呪い【呪編】

          【日記】習慣作り Part2

          こんにちは。雪乃です。 またまた低浮上になっていました。創作はしているのですが、最近はイラストメインになっていて……。 まぁ、ゆっくり頑張ります😌 今回は、習慣作りPart2ということで、経過報告をしようかと思います。 ゆるりと読んでくださると嬉しいです☺️ Part1はこちら↓ 習慣というからには、記録を付けないといけないなと思い、アプリで記録をしていました。 こちらは、『Dot Habit』というアプリです。 タスクをこなした日にドットを付けるというもので、かなり

          【日記】習慣作り Part2

          【小説】甘い嫉妬心と

          「七社さんは、好きな人とかいないの?」  クラスメイトの女子が、澪に声をかけた。高校生というのもあり、恋バナが好きなのだろう。 「私? 好きな人はいないかな」 「そうなんだ? 七社さん、男子人気も高いし、恋愛してそうだと思ったんだけど」  澪の周りからの評価は様々だ。近寄り難い、気難しそうという評価から、優しい、しっかりしてる、頼れるお姉さん的存在など。あわよくば、と考える男子も少なくないようだ。 「男子人気……? まぁ、私自身恋愛には疎いからね。皆の方が恋愛とかに詳

          【小説】甘い嫉妬心と

          【日記】習慣作り Part1

          お久しぶりです。雪乃です。 最近は、うまく小説の執筆が進まず、立ち止まっています。今思えば、少し詰め込みすぎたのかなと……一旦、創作は休憩しています😌 その分、こういう日記のような記事を書こうかなと思います。 今回の日記は、なんというか決意報告のようなものです😅 1日1日、何となくで過ごしていることが多いなと感じたので、題名の通り習慣を作っていこうと思います。 具体的には4つです。 ①英語の勉強をする がっつり決めると投げ出してしまうので、少しでも英語に触れるようにしよう

          【日記】習慣作り Part1

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          創作キャラのイラストまとめ

          創作キャラのイラストまとめ

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          【小説】守り神と買い物

          「梗一、楓、ちょっと出かけるぞ」  羽織りを身につけながら、桐人が言った。外に出るのが好きな楓は、目をキラキラと輝かせている。 「どこに行くんですか?」  梗一が訊くと、桐人は複雑そうに言った。 「幽世だ。まぁ、ただの買い物だがな」  その言葉に楓の目は更に輝いた。幽世は、端的に言うと死後の世界だ。逆に花舞高校のある、この世界を現世と呼ぶ。  桐人たちのような人間ではない者は、現世と幽世を行き来することができるのだ。 「5分後に幽世への門を開く。それまでに準備し

          【小説】守り神と買い物

          【小説】不思議な関係

           しんと静まった教室で、茶髪の少年が黒髪の少女に声をかけた。 「澪ちゃん、今日の予定は?」 「特にないけど……」  校庭からは、部活生の声が聞こえてくる。茶髪の少年は、澪と呼んだ少女の隣の席に座った。 「じゃあ、少し此処で話さない?」 「いいけど。教室でいいの?」 「うん。誰も来ないだろうし」  七社 澪は筆箱などを鞄にしまい、視線を茶髪の少年……九鬼 玲に向けた。 「神社の手伝いって、今もしてるんだ?」  玲の質問に、澪は「してるよ」と答えた。澪の家は、花紅神社

          【小説】不思議な関係

          【小説】新入り猫さん

           カランカランカラン。  ベルの音に、葵羽はドアに目を向ける。 「あ、雪丸さん。いらっしゃいませ」 「どうも。夢仁さんもいるんだな」  雪丸がそう言うと、夢仁はひらひらと手を振った。雪丸の後ろから、茶色のトラネコがチラリと店の中を覗いている。キョロキョロとしていると、葵羽と目が合った。 「どうぞ、お好きな席に座ってください」  葵羽が促すと、雪丸とトラネコはカウンターにちょこんと座った。よく見ると、トラネコの耳の先が少し欠けている。 「こちらメニューです」 「俺はい

          【小説】新入り猫さん