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転勤廃止で「これからの人は我慢をしなくてよくなるのか」と思った話

#日経COMEMO  意見募集 #転勤は本当に必要か

私の生まれ育った家庭は転勤族でした。現在はある外資系企業に買収された日系企業に勤めた父、専業主婦の母、妹という、昭和の標準的なサラリーマン家庭。

両親はいつも「仕事はしんどいもの」「やりたくないことも我慢してやらなければならない」とばかり言っていて、私はとても悲しかった。

その我慢の最たるものが、本人の意思に関係ない「転勤」ではないか。そう思いました。

私は社会人になってから転勤はしたことはありません。しかし私が最初に正規就職した組織では全国転勤があり、上に行くには転勤が避けられませんでした。

私は、日本の組織とは経営の異なる外資系企業に転職し、「ジョブ型雇用」「ダイバーシティ」「働きがい」に出会い、人生で最も会社生活が充実した時期を体験しました。また他の外資系企業に勤める知り合いとのつながりもできました。よく言われるように、外資系企業では本人の意思に反する転勤はなく、転居を伴う異動があるとすれば、本人が希望のポストに応募して認められた場合です。

私は今では「ダイバーシティ」「働きがい」について、盛んに発信するようになりました。私にとって「ダイバーシティ」「働きがい」とはもはやこだわりといっていいくらいかもしれません。私は伝統的な日本の組織にはなじめませんでした。かつての両親のように働くのとは違うように働きたい。

〇転勤は、会社にとって、また従業員にとって必要な制度ですか。必要だとすれば、なぜでしょうか。

〇転勤は、リモートワークの進展などで「どこでも働ける」ようになれば、いずれ減少したり、なくなってゆくと思いますか。

〇転勤のあり方は、今後、どのように変わっていくと思いますか。

高校生ぐらいの時、母にどうして父の会社に転勤があるのかを聞くと、「1人の担当者がずっと同じ場所で仕事をすることによって、なあなあになってくることがないようにするため」と教えられたことがありました。

しかし、今の時代、転勤というシステムが、従業員を全国的に異動させることに伴うコストの大きさの割に、マンネリと癒着を打破できているようには見えません。

転勤とは、多くの従業員にとって「なくなってほしいけれどなくせない慣例」になっているのが現状ではないでしょうか。

また、働く女性が夫の転勤によりキャリアを中断せざるを得ず、女性の活躍を阻むという声があちこちから上がっています。

企業によっては、正社員として雇用する場合、「全国転勤を受け入れること」を条件にしているところもあります。

日本での「一般的な働き方」とは、転勤を受け入れ、窮屈さのなかで我慢してきた健常者男性の働き方で、それができない人、特に女性や障害者などは、非正規雇用で主流になれない。そう感じるのは私だけでしょうか。

父の会社は、ある外資系グループの傘下になりました。「日本の会社が買収されて外資系になる」という大きな変化でした。

その変化の1つが、転勤廃止。(父はこの時には既に定年退職)

それを取り上げたあるニュース記事によると、この会社の従業員の転勤に対する印象は、私の予感していたとおりでした。「できれば誰も転勤したくない」

「これからのこの会社の人は、私の両親がしてきた我慢をひとつしなくてよくなるのか」と思いました。

さらにはコロナが来て、リモートワークも浸透しました。「もう東京にいなければならないことはない」と思って、地方に移住してリモートワークをする人も現れています。

私もいまは都内で働いていますが、ライターや翻訳者はリモートで働ける職種。ワーケーションに行ったり、一時的に地方に移り住んで働くことも、柔軟に考えて良さそうです。

とはいえ日本には、まだまだ転勤の慣行が残る企業が見られます。伝統的企業に限らず、比較的新しい成長企業にも。転勤のない限定正社員の制度にも課題が多くあります。またリモートワークも思うように進んでいない企業があります。

でも、いまは確実に「ダイバーシティ」「働きがい」を大切にする企業に、優秀な人が集まるようになっています。

「合意のない転勤は人権侵害」と声をあげるビジネスリーダーも出てきました。

最近盛んになってきたジョブ型雇用の導入も、転勤の廃止を後押しするでしょう。

日本以外の海外企業では、転勤は本人が希望のポストに応募して認められた場合のみ。それがグローバルスタンダード。本人の意思に反した転勤が当たり前の企業は、優秀な人材、特に高度技術のある外国人材や、「ダイバーシティ」や「働きがい」に共鳴した若い世代を惹きつけられることはまずないでしょう。官庁、大手マスコミは志望者が減り、革新的な外資・メガベンチャーに注目が集まっている。

私が訴えたいことを代弁した記事があったので、引用します。

社員がやりがいを感じて働けなければ、離職率の向上にもつながる。企業にとっていいことはひとつもない。日本企業には日本企業の企業風土があるが、外資系企業がやりがい面で評価されているいま、日本企業も外資系企業から学ぶ姿勢が求められている。

転勤のあり方が変わるかどうかは、企業のトップのコミットメントにあるでしょう。

雇用に関する意識の変化を受け止めず、先送りし続ける企業もあるでしょう。しかし本気で変わろうとする企業は変わるでしょう。

〇番外編 他の方々の意見

このテーマ、私の他にも転勤の経験者による意見が集まっていて、それらには色々共感するものがありました。

澤円さんは「転勤は会社による暴力」と述べています。暴力とは強い言葉ですが、転勤には家庭を崩壊させてしまう力も持っています。私が対人関係のトラブル続きだったりした思春期には、私の家庭は父親不在で回っていました。両親には色々苦労があったかもしれません。

澤さんの「そういう制度も含めて、楽しく働ける人がそういう会社を選べばいい」に同感します。

この方の書いている、「転校」と聞いた瞬間に泣き喚いたエピソード、私も経験があるのでよくわかります。

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