3月の全短歌⑦春へのパレード
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大人への日付変更線を飛ぶ機体は何かを切り離した
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ただ息をしているだけで働いた細胞たちに有給あげたい
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五分咲きを顔で表す妻がいて台所まで春が来ている
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夕方のチャイムが鳴ったそのあとでフジファブリックめく鳴き出す鳥たち
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分度器で測ってみたらさっきより傾いているほのかな恋だ
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青空が広がらない日、目を閉じてまぶたの裏にパレードを呼ぶ
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上を向くことに疲れた足もとが桃色たちに取り囲まれて
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雨音がスタッカートかスラーかを聴き分けている窓際の席
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運だけで生きていきたい土砂降りの雨の日傘を忘れたときも
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これはもうわたしの歌というくらい歌った歌ごと愛されてみたい
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