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2冊の本のおかげで、怖くて苦手な料理とやっと仲良くなれてきた


料理は決して得意ではないが、自分が食べるものを作るのは好きだ。
「好きになってきた」と表現するほうが近いかもしれない。

昼食を作ろうとキッチンに立ち、空腹の具合や体調を鑑みて「さて何を作ろうか」と考えるとき、身体を上から下までスキャンしている気分になる。

冷蔵庫と冷凍庫を開けて、そこにあるもので何を作るかを決める。
まとめて切って冷凍してある野菜や豚肉。いつも買う食材たち。キャベツや豆腐、たまご、キムチ。

特別な食材はないし、特別なメニューも作らない。レシピサイトはほとんど見ない。
それでも自分が満足するものは作れると知ってから、やっと料理に興味を持てるようになった。


もともと料理全般が苦手、それどころか恐怖を覚えるタイプだった。

そんな中、リモートワークに切り替えたところ、平日の昼食をどうするか問題にぶち当たった。

毎日違うメニューを作って食べたいほど、自炊のモチベーションもない。
「そのとき食べたいものをきちんと食べたい」という強い欲求があるため作り置きも続かない。
毎日外食だと量が多くてつらいし、無駄なお金もかけたくない。

料理は苦手で怖い。と同時に、食べることは楽しみのひとつ。そんな私にとっては、ささやかだが大問題である。

冷凍食品を買い込んでみる。冷凍の宅配弁当を試す。パスタを茹でる。毎日違う丼物を作る期間もあった。軽く3年は迷走していたように思う。


しかし、土井善晴さんの「一汁一菜でよいという提案」を読んで、この迷走があっさり解決した。

「一汁一菜でよいという提案」土井善晴 書籍の表紙
「一汁一菜でよいという提案」土井善晴

具だくさんの味噌汁と主食(米やパン)で十分な一食になる。
味噌汁にはどんな具材を入れても良い。具として入れた食材から成分が溶け出し、それがだし汁になる。
だしを取る工程は、やりたければやればいい。

「味噌汁はだしを取るもの」と思い込んでいた私にとって、この主張は衝撃だった。と同時に「これなら自分でも作れるかもしれない」と思えた。

本を参考に、平日の昼食メニューを「具だくさん味噌汁と冷凍ご飯」に固定した。工程はできるだけシンプルに。具材を放り込んで味噌を溶かすだけ。

結果、毎日何を作ろうかと悩み、ぐったり疲れることはなくなった。

自炊するなら、ちゃんとした料理を作らなければ。
そんな幻想に囚われていたのだと今なら分かる。


味噌汁づくりもすっかり慣れてきたあたりで、「ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室」を読んだ。

料理への苦手意識が和らいだ次のステップとして、この1冊はよく効いた。

「ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室」キャスリーン・フリン 新潮文庫の表紙
「ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室」キャスリーン・フリン

さまざまな理由で料理に対する恐怖を持つ女性たちが、鍋つかみとしての紙オムツを片手に料理教室に臨み、作れる料理を増やしていく。

インスタント食品や缶詰め、冷凍食品、外食に頼りきりだった彼女たちが、買っていた商品と同じメニューを自分で作れるようになり、さらに鶏一羽を捌くまでになるさまは爽快だった。

作中では、料理教室のメンバーが、既製品の原材料表示を隅々まで読む。
パスタのソース。出来合いのお惣菜。おやつのホットケーキミックス。スープの缶詰め。
今まで買っていたものに何が入っているかを学ぶ。そして、缶詰めよりもシンプルな材料で、とびきりおいしいスープを作る。

既製品の便利さを全否定はしない。自分で同じものを作れることを知った上で、既製品を買う選択もできると終盤には書かれている。


既製品の食品や食材は、思っている以上に簡単に作れるかもしれない。
読み終えてから冷蔵庫を開けたとき、ドアポケットにあるしょうがチューブを見て思った。

すぐにスマートフォンを手に取り、生のしょうがの保存方法と、手頃なおろし金を検索する。
しょうがは、保存容器で水につけて冷蔵庫で保存できるらしい。マイクロプレインのゼスターグレーターが力をかけず削りやすいそうだ。

面白そうだなーと感心したところで、自分の変化に気づいてはっとする。料理に対して恐怖さえ感じていたはずなのに、むしろ今では興味が出てきている。

「料理が苦手」という大きな劣等感のかたまりが、少しずつ溶けて小さくなっていくのを感じた。


いまの私は「自分が食べるものを作る」のが「好きになり始めた」段階だ。
料理が得意とは全く言えないし、他人が食べる料理を作るのは今でも怖い。

でも、今まで避けてきた料理に意識が向いた。変化の兆しを確かに掴んだ。
「自分もまだまだ変わっていけるんだ」と思えて嬉しかった。

この変化の先で出会えるおいしい料理を楽しみに、ひとつずつできることを試していこう、と思える。
おいしいものを自分で作って食べられる間は、健やかな気持ちでいられるはずだ。

次の買い物では、生のしょうがをひとつ買ってみよう。チューブしょうがとは香りが全く違うらしいので楽しみだ。


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