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一緒に眠れないけど

「すぅー……すぅー……」

規則正しい寝息が聞こえてきた。
そっか、君はもう寝ちゃったんだ。

さっきまで0.01ミリの距離にいた君。
今は遠く遠く、夢の世界へ行ってしまった。
君の存在を、体温を、確かめるようにぎゅっと抱きしめても、抱きしめ返してくれないのがかなしい。
   
どんな夢をみてるの?

心でつぶやいたのか、声にしたのかわからないけど、頭のなかでぐるぐる考える。
まぁ、君自身が夢から覚めても、ちゃんと覚えてるか怪しいけどね。
ってか、夢にまで干渉してくる彼女ってどうなの?と、深呼吸して思考をとめる。

気がつけばもう、2時。

私も寝たいよ……明日も仕事だし。

目を閉じる。
羊の数を数える。
君の呼吸のリズムに合わせて、息を吸って吐く。

なんで眠くなんないんだろう。
なんで好きな人がそばにいるのに、気持ちよく眠れないんだろう。

すやすやと眠る君を見てると、愛おしさと眠れない少しのイライラでつい、鼻をつまみたくなる。
「んっ…」と渋い顔。
ごめん、と放してあげる。

結局、眠れないからなんとなくスマホに手を伸ばす。
Twitter、Instagram、あと12時に更新されたLINEマンガも。
何を見たいわけでもなく、ただただ文字や写真を流していく。


どうせ眠れないし、なにか投稿でもしようかなとカメラロールをのぞく。

今日のランチ、先週見に行った紅葉、1ヶ月前に貰った誕生日プレゼントのピアスとツーショット。

耳たぶを触りながら、あのピアスが置いてあるアクセサリーケースへ目線だけ動かす。

「んん〜〜」

大きな身体がこっちに回転してきた。
寝言かもしれない、かすかな声で私の名前を呟いた気が、した。
それから、君の大きな手で抱き寄せられた。

君の腕の中はあったかくて、ここちよくて。
ん、心臓の音も聞こえる。
その心地いいリズムの中で眠くなんないかなと思ったけど、もう少し時間が必要らしい。
ただ、腕の中にいる気持ちよさを感じたり、寝顔をじっくり見れるのは起きてる私だけの特権なのは嬉しい。

そんなことで頭をいっぱいにしながら、スマホを静かに置き、君の腕の中で夢の世界の扉が開くのを待つことにした。

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