見出し画像

利用規約を作り込むことはなぜ大切か?

利用規約をあなどることなかれ!

ECサイトやデジタルプラットフォームなどのオンラインサービスで欠かせない「利用規約」。

最近、オンラインを活用した新規ビジネス市場が急速に発展しています。個人や少人数のチームで立ち上げたベンチャーや、これまでオンラインビジネスに全く参入していなかった企業が、オンラインサービスのリリース直前になって、「しまった!利用規約を作ってなかった!」と焦るケースは、珍しくありません。それくらい、利用規約は、二の次にされる存在です。

「他社のものをいくつかコピペしたらいいか」「後で作り変えたらよいからとりあえず体裁を整えておけばよいか」「そもそも作らなくてもよいかな」などと考えていると、いつか後悔する日が訪れるかもしれません。

利用規約なんてほとんどだれも読まないでしょう!?

「がんばって利用規約も書いても、読む人はほとんどいないよね・・・。」

たしかに、それは否めません。どれほど分かりやすく書いても、利用規約はほとんどの人に流し読みされてしまいます。

ただ、だからといって、利用規約を適当に書いてもよいわけではありません。

ユーザーが利用規約を隅から隅まで読み込むときは、いつでしょうか。それは、御社のサービスに何らかの不満を持って、「何かを争いたい!」と思っているときです。不満のあるユーザーは、御社の利用規約の「穴」をくまなく探し出して、御社に対抗できる手段を探そうとします。

このとき、利用規約が作りこまれていないと、どうなるでしょうか。御社は、利用規約の「穴」をユーザーから発見されて、思わぬ方向で攻められることになります。

たとえ攻められたとしても、それが「全うなクレーム」であれば、まだ納得がいくでしょう。では、そのユーザーが、理不尽な要求ばかりしてくる悪質クレーマーであればどうでしょうか。御社としては、「徹底抗戦したい!」と考えるでしょう。ただ、利用規約に「穴」があると、御社として「争いようがない」状況に陥ってしまいます。

利用規約はむやみに変えられない

「また不都合があれば書き換えればいいよね。」

そうはいきません。なぜなら、ユーザーにとって大きく不利になるような利用規約の変更は、変更前にサービスの利用を開始したユーザーに適用することができないからです。また、利用規約の変更前に生じたトラブルについて、その変更によっておさめることは困難です。

つまり、利用規約は、サービスのリリース時点で作り込んでおかないと、後になって後悔することになりかねないのです。

ビジネスの成長のためにも大切!

利用規約を作り込んておくことは、ビジネスを成長させるためにも大切です。

例えば、御社のサービスについて、大手他社から、「提携したい」という話がきたとします。その際、その会社が重視するポイントの1つが、「サービスの法的リスク」です。御社のサービスが悪質クレーマーに対抗できないような法的に脆弱なものであれば、「提携によってそのリスクを背負いたくない!」と判断され、白紙撤回される事態になりかねません。

また、ベンチャー企業であれば、M&Aの打診を受けたにもかかわらず、デューデリジェンス(いわゆるデューデリ)段階でサービスの法的脆弱性を指摘されて、話が進まなくなるおそれもあります。

利用規約をきちんとリリース段階から作り込んでおくことは、サービスを成長させるため、つまり、ビジネスの視点でも大切なことなのです。

作り込めていない利用規約の特徴

オンラインサービスを使うとき、「せっかくいいサービスなのに、利用規約が作り込まれてないな・・・」と感じることがしばしばあります。よくある「作り込めていない利用規約」の特徴を、いくつか取り上げます。

条項間で矛盾がある

ある条項では「責任を負う」と書かれていることが、別の条項では「保証しない」と書かれているなど、条項間で矛盾をきたしている利用規約は、しばしば見られます。

このようなことが生じる原因は、複数の会社の利用規約の条項を、その意味についてよく理解しないままに切り貼りしたことにあります。

このような利用規約は、解釈が曖昧になり、そこから紛争が生じるおそれがあります。

用語が統一されていない

「ユーザー」と「利用者」、「オプション料金」と「追加料金」など、同じ意味で使用しているにもかかわらず、用語が統一されていない利用規約は、しばしば見られます。

用語が統一されていないと、「これとこれは別の意味なのか?」といった疑義が生まれ、紛争につながることがあります。

用語が定義されていない

「〇〇サービス」「〇〇オプション」「支援者」など、そのサービス独自の用語であるにもかかわらず、きちんと定義付けを示していない利用規約がしばしば見られます。

このような利用規約では、用語の解釈について疑義が生まれ、紛争につながることがあります。

利用規約を見てもどんなサービスなのか分からない

利用規約は、運営者とユーザーとの間、あるいは、ユーザーとユーザーとの間において、どのような権利や義務があるかを定めるものです。

そのような法的関係を明確に定めるためには、利用規約を読んだだけで概要が分かるレベルにまで、サービス内容を利用規約の中に落とし込まなければなりません。

サービス内容がよく分からない利用規約は、往々にして、法的関係について不明瞭なところがあるなど、何らかの不備があるケースが多いです。

日本語が不自然

利用規約においてしばしば見られるのが、日本語が不自然なものです。おそらく、このような利用規約は、海外のオンラインサービスの利用規約を参考にしているものと思われます。

海外のオンラインサービスは、当然ながら、海外の法制度をベースに利用規約を作成しています。その内容をそのまま参考にしてしまうと、日本の法律に合わないものになってしまいます。

日本語が不自然な利用規約は、往々にして、日本の法律との不整合が生じているケースがあります。

おわりに

このnoteをお読みいただいて、「利用規約はきちんと作らないといけないんだな!」と感じていただければ幸いです。今後も、利用規約作成のノウハウについて、発信していきたいと思います。

書籍のご紹介

書籍情報の詳細はこちら

最後に、オンラインサービスのスタートアップについて取り上げた拙著(2022年9月出版)をご紹介いたします。

「新しいECサイトやWEBサービスを立ち上げよう!」と思ったとき、リリースが間近に迫った段階で、「しまった!利用規約もプライバシーポリシーも作ってない!」「このサービス、法律にひっかかるの!?」といった法律にまつわる「壁」にぶつかってしまうケースが多くあります。

この書籍では、オンラインサービスのスタートアップで企画段階から必ず押さえておいていただきたいテーマを実務視点でピックアップし、詳しく解説しました。

利用規約のサンプル(3種類)、プライバシーポリシーのサンプルを全文掲載したほか、個人情報保護法、特定商取引法、資金決済法などオンラインサービスにかかわる様々な法律の中から「これだけは必ず押さえておきたい!法律知識」を厳選して解説しました。

特に、次のサービスに関するテーマを中心に取り上げています。

  • ECサイト

  • 動画投稿サービスなどのコンテンツ共有サービス

  • フリマサービス

  • クラウドファンディングプラットフォーム

  • スキルシェアサービス(フリーランス募集プラットフォームなど)

Amazon紀伊国屋オンラインサイトほか、ジュンク堂、紀伊国屋書店など全国の書店で取り扱っています。

書籍について、詳しくは、こちらのページをご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?