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槇原敬之『もう恋なんてしない』まさかのZ世代で大バズリ?!話題の槇原ドリルを分析!TikTokでバズってる曲を現役東大生マーケターが考察してみた(その他:奥田民生『さすらい』の密かなバズ気配など)【第3弾】


はじめまして、株式会社WAND(ウォンド)代表の黒﨑です。
音楽業界特化型のショート動画UGCマーケティング支援サービスと、3,000人のTikTokerに案件を依頼可能なインフルエンサープラットフォームアプリを運営しています。

密かに好評を頂いている「現役東大生がTikTokでバズってる曲を分析してみた」シリーズの第三弾として、今回は「槇原ドリル」を取り上げます。

※過去記事はこちら↓
■第1弾 新しい学校のリーダーズ『オトナブルー』分析

■第2弾 My First Story『I'm a mess』分析

楽曲のマーケティング・プロモーションにおいて、SNS攻略が必須の現代。レコード会社のデジタルマーケティングや宣伝担当の方々や、インディーズレーベルや音楽事務所の方々、DIYアーティストの方々など、様々な音楽関係者の方の参考になれば幸いです。

また、今後も定期的にバズ曲分析を行っていく予定ですので、宜しければnoteとTwitterのフォローをお願いします!

今回も、現在WANDで大活躍中のマーケターであり、現役東大インターン生のYが、TikTokでバズっている曲を分析・考察しました。


1. 楽曲サマリ

出所:槇原敬之公式サイト

楽曲概要

・楽曲名:「もう恋なんてしない(槇原ドリルRemix)」by CHOBO CURRY
・音源の投稿:2021年11月25日
・配信リリース:2023年11月8日(本記事公開前日になんとドリル版が正式に音源化され配信リリースされました。こちらに関する考察は一番最後に記載
・YouTube再生数:366万回
・TikTok UGC数:17,800本(11月7日時点)
TikTok「#槇原ドリル」視聴数:2.8億回超え(!!)

今回取り上げる「槇原ドリル」、既にTikTokで見かけたことがあるという方もいるのではないでしょうか。槇原敬之さんの『もう恋なんてしない』をドリルミュージック風にアレンジしたBGMに合わせて踊る動画です。

そもそもドリルミュージックとは、2010年代初頭にシカゴで生まれたヒップホップのジャンルで、本来はドラッグや暴力などをテーマにすることが多いとのこと。(出典:wikipedia)

『もう恋なんてしない』のイメージとはあまりにかけ離れた、正反対のジャンルであるドリルミュージックのリミックスがかかったことで、その意外性やシュールさが若者の興味を集めたのかもしれません。

このリミックスは非公式の音源ですが、元の楽曲が90年代の楽曲ということもあり、今回初めてこの曲を知ったという若者も多くみられます。


槇原ドリルは9月上旬からTikTok上で流行り始め、今では18,000本近く投稿されています。
TikTok上のハッシュタグ「#槇原ドリル」の生成数は2.8億回を超え、著名人やFW数100万人を超えるような大型のインフルエンサーも投稿するなど、大きなブームになっていることが伺えます。

今回はそんな槇原ドリルについて考察していきたいと思います。

2. リリースから2年弱経ち、突如バズる

まずは槇原ドリルがどのような経緯でバズったのか、その経緯を追っていきます。

そもそも槇原ドリルの曲を作ったのは、CHOBO CURRYというクリエイターです。
2021年11月24日、Twitterに槇原ドリルの動画を投稿、翌25日にYouTube・TikTokに投稿しています。

またYouTubeのコメント欄を見てみると、2ヶ月前からコメント数が急に増えていることが分かりました。
つまり槇原ドリルがバズり始めたのは9月上旬頃だと思われます。

それを踏まえてTikTokの投稿を調べてみると、9/4の下記投稿が見つかりました。

全ての投稿を網羅的に調べたわけではないですが、投稿時期やコメントの内容に鑑みると、この投稿がきっかけとなってバズが起こったと考えられます。

その後一気にTikTok上でバズり、今ではUGC数1.8万本と、2ヶ月という期間を考えるとかなりのペースで伸びています。

またTikTokだけでなく、YouTubeの伸びも顕著です。詳細な再生数の変化はわかりませんが、CHOBO CURRYさんの動画の平均再生数は数万回なのに対し、槇原ドリルの動画は300万回を超えています。コメント欄を見てみると「少し前まで数万くらいだった」というコメントがあったので、YouTubeも短期間で一気に伸びていることが分かります。

さらに本家のミュージックビデオにも流入しているようで、YouTubeのミュージックビデオランキングで週間63位にランクインしています。コメント欄には、槇原ドリルをきっかけにこの曲を知ったという声も多く、今回のリミックスが本家の楽曲の認知度向上にも一役買っていたようです。
※出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/904d1c7aa884edefeb1b3b375c45db71680223ba

実際『もう恋なんてしない』のMVとSpotifyの直近1年の再生回数の推移を見ると、下記のように推移していました。

9月頃より急激に再生数が伸びており、TikTok上でのバズが波及していることがわかります。

そして本記事公開前日の11月8日には、『もう恋なんてしない(槇原ドリルRemix)』として配信リリースされることが発表されました。これを機にTikTokに留まらず、楽曲としてさらに盛り上がることが予想されます。

このように槇原ドリルはリリースから2年近く経ったタイミングで、突如としてバズが発生しています。
以前noteで扱った『オトナブルー』や『I’m a mess』もリリースからバズまで1年以上空いていましたが、それらと同様に、槇原ドリルも一つの投稿をきっかけに、一気に伸びていました。

3. 音楽×ダンスの組み合わせ

槇原ドリルがバズるまでの経緯についてここまで見てきました。ここからは、なぜこの楽曲が流行ったのか、その要因について考察します。

まず最初に挙げられるのが、ダンスの存在です。

当たり前のことではありますが、TikTokは動画を投稿するプラットフォームであり、音楽はあくまで動画に付随する要素でしかありません。

投稿している人は、その楽曲を投稿したいのではなく、動画にマッチしていると感じた音楽をつけて投稿しているに過ぎません

そのため、UGCを促進するためには、その楽曲に合う動画のコンテンツが必要となります。
それが今回の事例では、ダンスでした。

その上でこのダンスがここまでバズった理由の一つとして、ダンスの難易度があります。

TikTokにダンス動画を投稿する人は必ずしもダンス経験者ではない(むしろそっちの方が多数派)ため、どちらかというと簡単に踊れる手振りのダンスが多かったように思います。

それが今回は足も使ったダンスで、素人が踊るにはやや難易度が高かったように思えます。

それ故、ある種「ダンスチャレンジ」のような側面が生まれ、「こんな上手く踊れた!」「このダンス難しい!」というような気持ちをユーザーに喚起し、多くのUGCを生むことができたのではないかと思われます。

また、「槇原敬之さんの切ない名曲がゴリゴリのドリルミュージックになってガチダンスで踊られている」という意外性やシュールさが、今回の大規模なミーム化に繋がったのではないかと考えられます。

関連して、「シュールさや意外性が起点となってダンスがバズる」という文脈では、直近私が個人的に注目しているのは奥田民生さんの「さすらい」です。

きっかけは下記の「中国の大自然の中でおじさんが奇妙なダンスを踊っている」という映像がバズり、それを真似したダンス動画がミーム化してUGCがジワジワと増加。

「TikTokで踊られなさそうなのんびりした楽曲に、振り付けが存在していること自体が面白い」
「ぬるぬると奇妙なダンスを踊ることで、『可愛いのに変な動きで踊っていて面白い』といったギャップをフォロワーに見せられる」

といったインフルエンサー側の使いやすさなどが相まって、投稿数が増加し、再生数が伸び、このダンスをすると再生数が伸びると分かったクリエイターが投稿し、・・・といったUGCの『真似が真似を生む』という正のバイラルループに入り、UGCが拡大しているのではないかと考察しています。

4. 過去にも見られたリミックスでのバズ

もう一つ、ヒットした要因とはややズレるかもしれませんが、昔の楽曲のリミックスがTikTokでバズるという事例は過去にも見られたので、その観点からも取り上げてみます。

記憶に新しいのは、やはりシティ・ポップブームでしょう。特に松原みきさんの『真夜中のドア〜stay with me』のリバイバルヒットはすさまじく、日本だけでなく海外でも広くシティ・ポップが広まるきっかけとなりました。

この際、今風にアレンジされた楽曲がTikTokやYouTubeに投稿されたことが、バズの一因となりました。Night Tempoさんのような昭和歌謡をアレンジするアーティストの存在も大きかったとされています。
引用:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b2669559fbc1966e5520d00e0fbade74e722b239

このように、昔の楽曲を再度流行らせるとなった場合、ただそのままプロモーションをするのではなく、今風のアレンジが必要になるのではないかと思います。

原曲だと、若者にとっては良くも悪くも「昔の曲」という認識をされてしまうため、中々興味を引くことが困難です。
そこで今風にアレンジにより若者が慣れ親しんだスタイルにすることで、とっかかりを作ることができます。

5. 今回の事例から得た学び

①楽曲×特定のフォーマット

やはりTikTokという媒体の特性上、どのようなコンテンツに楽曲を乗せるのかという視点は必要になってきます。

逆に言うと、決まったフォーマットがないと楽曲に紐づいたUGCは生まれにくいということです。もちろん自然発生的にフォーマットが生まれることはありますが、こちらから能動的にフォーマットを提示することも可能です(アーティスト本人による投稿等)。

インフルエンサーの仕込みにより楽曲をプロモーションをする際にも、楽曲だけでなく、どのようなフォーマットに乗せるのか、ダンスやエフェクトの制作、CapCutテンプレート制作なども選択肢にいれながら、インフルエンサーを起用することが必要になります。

「ユーザーが投稿しやすい」→「投稿数が増える」→「投稿が面白いので再生される」→「再生数が伸びると分かったユーザーが投稿する」→「この曲はこういう投稿をするのが流行りだよね、という型ができる」→「ユーザーが投稿する」・・・といった、UGCの『真似が真似を生む』という正のバイラルループを生むためのフォーマットを作り、車輪を回転させるためにどう検証を回していくのかが、楽曲のバズ設計において重要な要素と言えるのではないでしょうか。

②昔の楽曲をバズらせるためのリミックス

先程の分析では、昔の楽曲のリミックスにより若者の認知を獲得できるという分析をしました。さらにここから発展させて、最近の楽曲にも応用できるのではないでしょうか。

例えば既存の楽曲の倍速ver.を作ることで、ダンス投稿に使われるかもしれません(まさに今回の槇原ドリルは、原曲で踊ることは難しいですが、テンポが上がったことにより、ダンスにぴったりな楽曲になっています)。

このように楽曲のバリエーションを増やすことで、よりユーザーが投稿に使いやすい環境を整えることが、バズらせるためには大事なのかもしれません。

また、今回の槇原ドリル旋風により、本家のYouTubeのMVがミュージックビデオランキングで週間63位にランクインしているように、過去楽曲が若年層世代で再発見され、ネットミーム化し、独自のバズリ方をした結果、本来の楽曲のDSPやアーティストIPの認知向上に貢献し、楽曲のLTVを大きく上げる可能性が存在する、というのはあらゆるカタログ楽曲を抱えるレーベルにとって、大きなビジネスチャンスを示唆する現象だったのではないでしょうか。

③何か現象が起きた際に、すぐ火に薪を焚べられる体制を持つ

今回、11月8日にドリルミックス版のリリースが発表されたことは、個人的な衝撃でした。ネットミームの範囲にとどまらず、ストリーミングでも聞ける楽曲として更に盛り上がりが発生し、楽曲から派生する将来収益の最大化やアーティスト個人の知名度、既存ファンとは全く異なる新規のZ世代層からの好意形成や知名度拡大に大きく貢献するものではないかと予想します。

『もう恋なんてしない(槇原ドリルRemix)』を制作したCHOBO CURRYさんが「リリースを認めてくれた槇原さん、関係者各位、本当にありがとうございます」と述べていることから察するに、レーベルや権利者各位の動きが非常に柔軟で早かったことが伺えます。

この背景を更に考察すると、槇原敬之さんの事務所は御本人の個人事務所であるワーズアンドミュージック、レーベルも御本人の独自レーベルであるBuppu Labelであり、槙原さんチームの意思決定で柔軟に対応の方針を決められた部分が大きかったことが背景にあるのではないか?と考えます。(※編集後記:『もう恋なんてしない』の発売元はWEA MUSIC(後にワーナーミュージック・ジャパン併合)(Wikipediaより))

レーベルや事務所の規模に関わらず、『何かSNSで現象が起きている時に、その好機を逃さずに火種拡大の施策を打つ』といったことが各権利者の間でスピーディーに動ける状態になっていること、またその状態を観測してアラートできるようなSNSの専門家を社内外に持つことは今後重要度が増していくのではないでしょうか。

以上、槇原ドリルのヒット要因についての分析でした。

(著:現役東大インターン生Y)

株式会社WANDについて

株式会社WANDでは、レーベル・音楽事務所様向けの音楽業界特化型のショート動画UGCマーケティング支援サービスと、3,000人のTikTokerに案件を依頼可能なインフルエンサープラットフォームアプリを運営しています。

最新の楽曲マーケティング手法について研究しながら、年間100曲以上のお取り組みを通じて新たなソリューションを日々開発しています。

新曲をバズらせるための火種作りや、既存のバズの兆しをさらに拡大させるための型作り、マイクロインフルエンサーからメガインフルエンサーまで横断した立体的なインフルエンサー施策など、制作から運用までワンストップでご支援しています。

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