アジアソーシャルセクター訪問レポート~台湾編~

どうもユウイチ(@yuichiho)です。
先日、私が所属しているオンラインサロン「NPO未来ラボ」の活動で、台湾のソーシャルセクターと交流して来ました。

NPO未来ラボには、海外のNPOやソーシャルセクターとの連携を見据えて活動する「アジアチーム」があり、アジアのNPOやソーシャルビジネスにおける情報交換・人材交流・ファンドレイジングを生み出すプラットフォームとなることを目的に活動しています。

自分はそのアジアチームのリーダーをしていますが、今年10月に結成されたばかりのアジアチーム、一発目の活動として、台湾のNPOやソーシャルセクターに関わる方々にアポイントを取って、訪問して来ましたのでレポートします。

まずは、台湾の基本情報、日本との共通点、寄付やNPOの活動について説明します。

台湾基本情報

・人口2300万人
・国土面積は36,000㎢(日本の九州と同サイズ)
・世界22位の経済規模(名目GDP)
・国民性
  開放的で明るい、人とすぐに打ち解ける性格。
 あと、私が世界一周中に訪れた国の中で最も日本に詳しい人が多い。幼少期から日本のアニメ、漫画、音楽に触れ、日本のサブカルや文化をよく知っています。ちょっとした日本語を知っている人が多く、「ありがとう、こんにちは、おいしい」などはほぼ通じる。

・SNS
 Facebook、Instagramが主流。
 若い世代は、Instagramを主に利用している点は日本と同じ。
 Twitterを利用している人は少ない。


台湾と日本の共通点

ご覧の通り、共通点がいくつもあります。また、共通点ではありませんが、歴史的に重要な点を付け加えると、1895年〜1945年は日本が台湾を統治していました。


台湾の寄付・NPOについて

・寄付
 台灣公益責信協會の調査によると、
 2013 年の年間寄付金額は約2,037 億円*
 日本の寄付規模は約7,000億円。人口が日本の1/6で、経済規模も日本より小さい台湾の方が一人あたりの寄付額は日本よりも多い

*参考:https://apatw.gitbooks.io/observation2014/content/TW/donation.html

・NPO
 民法に基づき、社団法人、財団法人および非法人団体が民間非営利組織の要素を備えた団体として考えられ、NPO法人という名詞が属する法律は無いそうです。2010年の時点で、民間団体は4万6119団体。社会団体は3万5426団体。
教育省は社団法人、経済省は財団法人をそれぞれ管轄しています。


台湾ソーシャルセクター訪問レポート

ここからは、実際に訪問した団体や方々と話した内容を紹介していきます。

1. 財團法人新漾基金會

団体の紹介動画はこちら▼

URL:https://www.xinyoung.org

◯設立背景

2013年に設立された若者支援に取り組む財団。この財団が若者支援に力を入れているのには、台湾特有の教育事情に関係がある。
まず、台湾の大学進学率は97%もある。受験が盛んな日本でさへも大学進学率は63%程度。台湾社会において、いかに大学へ進学することが「当たり前」とされているかが街並みからも読み取れる。
台北中心街では塾がありとあらゆるところにあった。

名前を書いたら受かる大学もあると言うぐらい、大学に溢れており、「大卒」は就職に有利なことはないとのこと。
日本の大学のように就職支援を大学が熱心に行うことはないので(大学が就職支援をするのは世界的にみると日本が稀)、20代前半の失業率が他の世代よりも高くなっている。
その為、海外に留学したりして、語学などのスキルを身につけ、台湾に戻り、20代後半になって初めて就職するというケースも珍しくない。

こういった社会環境の中で、どのような活動に取り組んでいるのか話を聞いた。

今回会ったのは、AngelとWinnyという22〜25歳ぐらいの女性二人。

二人とも若い。ソーシャルセクターに新卒で就職するのは、日本同様、台湾でも稀なケースで、台湾人の多くは、安定を求めて政府系の仕事=公務員に就きたがるそうだ。

彼女達が感じる台湾が抱える教育の問題として、高校が普通高校と専門高校に分かれるが、特に専門高校に通う技術系の学生達は自信が低いとのこと。また、進学率が97%ある台湾では、大学に進学しても自信はつかない。

◯事業内容
そんな学生達の為に支援をしているのがこの財団で、大きく二つの活動に取り組んでいる。

1. 就職支援やインターンシップなど若者支援プログラム
 18歳~40歳を若者と定義しているが、支援対象はほとんど大学生。
2. 食愛計畫 kilo of love
 フードバンク。
 食の支援を行なっている団体に食を供給している。直接、食に困る当事者に配給することはしていない。80人のボランティアが在籍。

彼女達が働くオフィスはこちら。

このフロアは、教会が保有している不動産だそうで、教会がコワーキングスペースの運営をしているという極めて珍しい事例。

スタッフは、フルタイム2名、パートタイム数名、インターン大学生2名で構成されている。ボランティアはプロジェクト毎に在籍。

年間250万台湾ドル(1千万円)で運営している。
資金は、8割がfoundation、2割が個人寄付。
8割の方は、台湾の中小企業が寄付してくれている。

今抱えている課題としては、個人からの寄付の拡大とのこと。
企業のfoundationも業績変動により、削減される可能性が常にあるので、個人寄付を増やしていきたいそうだ。
そこで、NPO未来ラボのオーナーであり、DxP代表の今井さんに個人からの寄付の集め方をしきりに質問をしていた。
DxP自体いろんな形で個人からの寄付を集めているが、今井さんが「一つの寄付を集める方法として、自分はマラソンをしている」と言うと、驚いた表情で

「ホワイマラソン?!」

と、厚切りジェイソンのホワイジャパニーズピーポーばりのツッコミに日本メンバーは爆笑。今井さんがサハラマラソンやアタカママラソンの説明を詳しくしていました。

彼女達は、来年、個人寄付を集めるためにオーケストラを呼んでチャリティコンサートを来年行うそうだ。

所感
・97%の大学進学率の裏側には、大卒に価値はほとんど無く、それが就職にも強く影響するという現実があることを知った。カナダで出会った、台湾人の友人が現地の大学に進学しようと一生懸命だった理由がようやくわかった気がした。
・若者による社会をよくするための活動が日本よりも盛んだ。今回会った二人とも20代前半という若さで、財団法人で働いているという事例を日本ではほとんど聞いたことがない。「先月台湾で行われた統一地方選挙には行った?」という質問には、二人とも「もちろん」との回答だった。選挙に行くのが当たり前のようだった。自分達が国を変えるんだという意識がとても強くある。
・「日本で同じように学生の教育・就職支援をしている団体(=DxP)に出会えてよかったです。」と言われたことが嬉しかったし、情報交換の機会だけでも価値があるんだと思った。


2.社團法人台灣同志諮詢熱線協會

団体の紹介動画はこちら▼


英語版URL:https://hotline.org.tw/english

◯設立背景と事業

1998年に設立された、台湾最大・最古のLGBT団体。
団体名にもある「同志」は、LGBTという意味である。
ちなみにホームレスは「街友」と呼ぶ。
適当な漢字を当てがちの日本語とは違い、漢字圏として漢字の当て方が素敵と感じる。

ご存知の方も多いが、台湾はアジアトップクラスのLGBTフレンドリーな国としても有名です。
「アジア初の同性婚合法化」として昨年ニュースに上がったり(現在、同性婚の合法化は、11月に実施された国民投票の結果を受けて、現在も議論中)、台湾の首都・台北にて開催されるアジア最大級のLGBTパレードには13万人も参加したりとずば抜けた存在感を放っています。

今回訪れた台灣同志諮詢熱線協會は、1998年にゲイの若者の自殺をきっかけに電話相談窓口からサービスをスタート。

スタッフは、台湾全土で13名。
11名が台北、2名が高雄オフィス。
13名の内、ストレートなスタッフは1名のみ。
400名のボランティアスタッフを抱えている。

今回時間を作ってくれた方々は、元々学生時代にこの団体でボランティアをしたことがきっかけで入社したそうだ。

活動としては、
1:LGBT community service
2:Education
3:Advocacy
を中心に取り組んでいる。

◯具体的な活動事例
・Family Services
 LGBTQの子供を持つ親への相談窓口を2016年から開始した。
 最初は相談サービスを受けた親が、他の親の相談に乗るという支え合う体制づくりができている。
・旅行
 16歳~高齢者までが一緒になって日帰り旅行をするプログラム。

◯台湾がLGBTフレンドリーな国になったきっかけと現状

 いつから台湾はLGBTフレンドリーになったのかと質問すると、

2004年のジェンダー平等教育法の成立から台湾が変わった。

2000年、中学校のトイレで男子生徒が血だらけで発見され、亡くなる事件が起きた。男子生徒は、女っぽいとイジメを受けていた。死因は現在も不明。
この事件をきっかけに、2004年にジェンダー平等教育法が成立し、教育領域における取り組みが急速に展開した。

「アジア初の同性婚合法化」と世界中でニュースとなったのも束の間、今年11月の国民投票において、全10項目の内、5項目がLGBT関連のテーマだった。(例:婚姻規定が異性カップルのみに限定されることに同意しますか?)
結果として、5項目の全てにおいてLGBTの方々が望まない方に票が集まってしまった。
多くの若い世代はLGBTを受け入れており、彼らが教育活動を行う学校で集計したデータによると、80%がLGBTに対して受け入れると回答したそうだ。

しかし、結果は、反対派が上回った。

彼らから聞いた、反対派による運動やフェイクニュースは聞くに耐えなかった。「同性婚を認めれば台湾はエイズの島になる」などといった過激な言動・キャンペーンが繰り返されていたそうだ。

今回の選挙結果を受けて、同性婚の詳細が議論されていくそうだ。

◯予算・資金調達

年予算はUS$527,600。日本円だと、約6千万円。

今年は20周年だったので、寄付が多かったそうだ。
クラウドファンディングも行なっているようで、
今年はなんとEU(European Union)が支援してくれたそうだ。EUって。。すごい。。

◯所感
・先日の選挙の結果を受けて、忙しい中でも本当に温かく迎え入れてくれた。全員がようこそ〜と笑顔をくれて、オープンマインドどころかオープンハートな姿勢に一同感動しっぱなしだった。
・彼ら自身、今回の選挙結果はショックを隠しきれない様子だった。反対派の運動はここには書けないようなひどい内容もあって、ただただ絶句した。憤りを覚えた。ひとりの人間として悲しかった。それでも前に進むしかない、と語る彼らの目は、強く光っていた。アジアの星となって彼らが1日でも早く実現したい社会になることを祈りたい。


3. 職人 SHOKUZINE


URL
https://www.shokuzine.com

2015年に設立した、職業にフォーカスした雑誌+ウェブマガジン。日本の職人+MAGAZINEのZINEを取って、SHOKUZINEとしている。それぞれの分野で活躍する職人を紹介している。

◯設立背景と事業

台湾では、厳しい教育環境で育てられ、自分の道を自分で見つけることができない若者が増えている。
「世の中にはどんな仕事があると思う?」というインタビューを学生にしても仕事や職業の名前が全然出てこない。(実際に回答できない若者達の動画を見せてもらった)小学生などのまだ文系・理系を選択する前の段階にいる子供や若者に職業についてもっと知った上で、これからの人生を選択して言ってほしいという思いから職人はスタートした。これまでに、1,643人のストーリーを集めて紹介してきた。
3〜4人でこのマガジンを編集しているが、社長のGeorgeが経営する他のビジネスで、このマガジンの費用をまかなっている状態。
日本のハローワークの500人ぐらいの仕事が載っている本を参考にしているそうだ。台湾のTEDxにも登壇したことのある社長のGeorgeは、ITシステム会社など4つの会社を経営している。

◯台湾の教育における問題
・仕事について知る時間がない、親が仕事の種類を知らない・新しい仕事を理解していない、ビジネスと教育を混同して、学生の未来を考えていないとのこと。

・学生は良い学校に行こうと勉強し続けるが、多くの学生は情熱を傾けられる物が見つからない。

・政府は若者に起業を促すけど、どうやって会社を経営するのか教えてくれないのが問題。

*台湾の教育システムについて知りたい方は以下のリンクをご参照下さい。
1. Education System in Taiwan
https://www.scholaro.com/pro/Countries/Taiwan/Education-System
2. Taiwan’s Education System is Failing Its Youth
https://international.thenewslens.com/article/46431
3. Technological and Vocational Education in Taiwan
https://ws.moe.edu.tw/001/Upload/5/RelFile/7801/38355/2014_TVE-En.pdf

◯所感
・社長のGeorgeが「職業の選択肢を知らないのに自分がやりたいことなんてわかるはずがない。」と熱弁していた。自分の小さい頃を振り返っても、インターネットも発達していなかったし、自分の周りの大人かTVの中の世界の仕事しか知らなかったので、若い世代が掲載されている「職人」の本があれば読みたかった。ひとりでも多くの学生の手に渡って欲しい。

・今井さんを取材したいと言っていたので、今回訪問した団体の中では、一番早く一緒に何かできる団体だと感じた。


4. 台湾のユヌスセンター長とバングラの大学教授

台湾国立中央大学内になるユヌスセンターの長であるマークさんと台北市内でブランチ。その際に、バングラのジョハンギさんを連れて来てくれた。

◯関係者プロフィール
・マークさん
 台湾人。博士。台湾国立中央大学准教授。台湾国立中央大学ユヌスセンター長。海外のソーシャルビジネスやNPO、NGO関係のカンファレンスで登壇しており、先月もドイツに出張。毎年一、二回は日本に来るそうで、来年も5泊6日で日本のソーシャルセクターを周るとのこと。

・ジョハンギさん
 バングラディッシュ人。ダッカ大学経済学部教授。グラミン銀行に長期間務めていて、5年前に教授になった。6月28、29日にバングラでカンファレンスがあるので来るならinvitation letter書くし、ユヌスさんとも会わせるよとのこと。ソーシャルビジネスのプロジェクト関係で1月まで台湾にいる。

◯ソーシャルビジネスシティ・桃園市にあるユヌスセンター
 空港と台北市の間に位置する桃園市に台湾国立中央大学があり、その中にユヌスセンターがある。ユヌスセンターとは、ノーベル平和賞を受賞したムハマドユヌスさんが提唱するソーシャルビジネスに焦点を当てた活動を促進することを主な目的に設立された施設である。 

台湾ユヌスセンターURL:http://sbc.mgt.ncu.edu.tw/en/

マークさんは、そこのセンター長。
ユヌスセンターは3人のフルタイムスタッフが在籍。
桃園市から300万円ぐらいのお金が支給され、大きめのオフィスに移動するらしい。台北市ではそのような資金援助はないとのこと。
毎月ネットワークイベントを開催しているが、参加者が20~30人ぐらいしか集まっていない。毎回ゲストスピーカーを招待して、話をする形式。

ソーシャルインターンシップをユヌスセンターで実施。大学生をネパールやマレーシアなどに大学生を派遣しているそうだ。

◯その他話したこと

・Summer camp in Taiwan 2019
 ソーシャルビジネスのことを考えるキャンプで、桃園市(台北市の隣)の高校生が参加する、DxPの生徒も参加してみてはどうかとの打診あり。
・台湾の社会起業家は、まだ少ないが、少しずつではあるが増えて来ている
・「日本の子供の貧困率約13%」という数字にマークさんは驚きを隠せていなかった、台湾の貧困率は1.3%ぐらいでは無いかとのこと。
・オンラインサロン
 オンラインサロンそのものにマークさんは関心を示していた。
 オンラインの定例会やトークイベントは新鮮だった様子。
 台湾のソーシャルセクターはインターネットやSNS関係に弱いとのこと。
 台湾では日本より所得も少ないし、ソーシャルセクターの人間はお金がないから少し難しいねとの感想。
・NPO未来ラボの名前を気に入っており、台湾人ウケもいいから台湾でNPO未来ラボの名前を使いたいと笑顔で話していた。

◯所感
・アジアでは、共通した社会課題があり、それらを解決していくために、アジア各国のソーシャルセクターでネットワークを作るというコンセプトに共感を示してくれた。
・アジアのソーシャルビジネスの権威ある方々とコネクションができたことが一番の収穫。大学の教授クラスとコネクションができたことは非常に意味がある。
・彼らは、ただ聞くだけではなく、「これに私も参加できるのか?」や「こういうのやってみてはどうか」と具体的なアクションに繋げる話をしてくれた。
マークさんとコラボして、情報交換であったり、ワークショップを開催したりすることはすぐにできると感じた。
・オンラインサロンのビジネスモデルに強い関心を示していた。ある程度の収入規模があり、ネットリテラシーの強い国であれば本格的に展開すればチャンスがあるのではと感じた。


終わりに

今回は、それぞれのソーシャルセクターが取り組む課題を深掘りしてヒアリングするというよりも、つながりを作ることが目的だったので、その分野を専門とする方には内容的には少し物足りなかったかもしれません。その点はこれから交流が深まるにつれて、もっと有意義な情報を出していくことができるかなと思っています。

我々から台湾の団体側に対して、NPO未来ラボのこと、日本の社会課題、DxPやフローレンスのビジネスモデルなど説明させて頂いたのですが、とても好評でした。この一回で終わるのではなく、また台湾を訪問したいし、日本に来る時は積極的に交流機会を持って、コラボした活動を企画・実行していくつもりです。自分の海外経験、語学力、行動力を総動員していきます。

個人的には、世界一周中にたくさんの台湾人に助けられ、東日本大震災の時に義援金200億円以上を寄付してくれた、そんな台湾に関わりたいと思い続けて来たので、想いが叶ってよかったです。相談に乗ってくださった皆様、本当にありがとうございました。

最後になりますが、我々の訪問を受け入れてくれた彼らの活動をもっと多くの日本人にも知って欲しいので、もし良ければこの記事をシェアしてもらえると助かります!お願いします!

次は、どんな国で、どんな人達と出会えるのか、今から楽しみです。

それでは、8000字にも及ぶ長文にお付き合い頂きありがとうございました!!

ユウイチ(@yuichiho)

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

まいどおおきに!!嬉しくて目からたこ焼きこぼれますわ!!
16

ユウイチ🌎

”国際系” note まとめ

This magazine curates notes relating to stuffs between globalness and localness.
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。