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星芒鬼譚8「あの、光太郎さん。俺だって戦えますよ。…たぶん」

「ねー、もう帰らない?」

光太郎があくび混じりに言った。
すっかり夜も更けてきた京都の街を、武仁と光太郎は歩いていた。

「いや!まだ帰りませんよ!たしかに反応が出てたんですから!」

腰に護身用の短刀を携え、妖怪探知機をあちこちかざしながら武仁は言った。

「九尾の狐を探してほしい」という奇妙な依頼が持ち込まれた翌日。
通常業務を終えた三人は、事務所で調査方針を話し合っていた。
そんな中、デスクの引き出しにしまってあった妖怪探知機が、急にけたたましく鳴り出したのだった。
その音は数十秒のうちに止み、事務所はしんとなった。
三人は顔を見合わせた。
妖怪探知機は、10メートル圏内に妖怪を関知すると作動する設定にしてあるが、そもそも電源は切ってあったはずだ。
これまでもたまに誤作動を起こすこともあったし(光太郎の父の代から使っているものだから、古くなっているのだろう)、昨日の今日でそんな都合のいい展開はないでしょ…と光太郎は思った。

「ほら、ファービーとかも電池抜いてあっても声出すときあるだろ、アレと一緒じゃね?たまたまだよ、たまたま」

そのままうやむやにしようと思ったが、武仁が事務所の近くに九尾の狐がいるんじゃないか、だったら探しに行ったほうがいいんじゃないかと珍しく主張した。
黙って聞いていた夏美も、とりあえず近隣だけでも調査してみないかと言うので、結局そうすることになった。

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