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【カリキュラム・テスト・先生・クラス分け無しの学校?】新田サドベリースクール訪問レポート①

サドベリースクールとは「先生・カリキュラム・評価づけ・テスト・クラス分け」が一切無い学校である。アメリカの「サドベリー・バレー・スクール」をモデルとし、その理念に共感した方々が設立しているため、"サドベリー"という言葉が使われている。先生に代わってスタッフと呼ばれる大人が働いており、子供たちとスタッフが同じ立場で学校運営を行う。スタッフは、子供が持っている学ぶ力・生きる力を100%信じて、自ら考えて動くのを待つ。子供と大人が民主的に運営をしていくため、「デモクラティックスクール」とも呼ばれている。

いったいどんな学校なのか、2020年12月11日に現地まで視察に伺ったので、立ち上げに関わった方のストーリーや子供たちの変化や様子、保護者の声などを数回に分けてレポートします!

新田(しんでん)サドベリースクール」ってどんなところ?

鳥取県智頭町の新田(しんでん)地区にあるサドベリースクールです。
1番の特徴として、他のサドベリースクールの立地環境と比べて、圧倒的な自然の豊さがあげられます。

山奥の急斜面を車でひたすら登り辿り着くと、新鮮な気持ち良い空気が体一杯に広がります。まさに森林セラピーのような心地よさがありました。

出迎えてくださったのは、スクールの創設から携わっていらっしゃる長谷洋介さん。
キャッキャッと子供たちの楽しそうな声が聞こえてきて、歩いていると大きなトランポリンが見えてきました。

2020年12月11日現在、スクールには総勢15名が通学しており、上の子は14歳でした。(他のサドベリースクールでは4歳から通えたりするところもあり、卒業年齢も様々なため事前チェックが必要)

長谷さんに、立ち上げ時のエピソードや、スクールを取り巻く教育環境などを伺ったのでご紹介します。

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立ち上げ当時のエピソード

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ーどのような経緯で、サドベリースクールが創設されたのですか?ー

「元々は高校教師として働いていました。妻は森のようちえん(*1)のスタッフで、子供たちもそこに通っていました。子供たちは卒園後、地元の公立小学校へ進みましたが、子供たち自身が学校環境に違和感があると訴えてきたんです。例えば、学校のかっちりした型にはめられてルールに従う生活などがありました。子供を見ていてこのままで良いのか?と、自分を含めた保護者が思いました。
そこで、自分たちで森のようちえんのエッセンスを詰めこんだ場所を作ろうと思ったんです。」

*1 「森のようちえん」とは
自然体験活動を基軸にした子育て・保育、乳児・幼少期教育の総称 
参照:森のようちえん全国ネットワークHP
  https://morinoyouchien.org/about-morinoyouchien
智頭町には森のようちえん「まるたんぼう」「すぎぼっくり」の2つが存在し、全国各地からの移住して通わせる方が増えている、移住者の方のためには、シェアハウス「はじまりの家」が用意されている。

「森のようちえんのエッセンスとは、主に以下の3点です。」
①子供の存在を丸ごと肯定的に受け止めて、自主性に任せる
②自然の中で暮らす
③子供と大人が同じ人間として対等に関わる

「まずは、保護者で集まって、あらゆる教育についての勉強会をし始めました。シュタイナー教育、イエナプラン、モンテッソーリなどの、従来の公教育とは違った学校教育法で規定されていない教育法を学び合います。話し合い学び合う中で、全員が賛同し辿り着いたのが「サドベリー教育」でした。
話し合いを重ねていく中で、子供たちはどんどん大きくなります。まずは小さくはじめてみようということで、土日開校からスタートしました。」

ー高校教師を辞めるという決断は大きかったと思うのですが、その時の心境や周りの声などはどうでしたか?ー

「教職員として務める中で生徒をテストの点数で評価をして順位をつけることにモヤモヤしていました。本来は、子供たちを全て肯定したい気持ちに溢れているのに、実際の行動が伴っていないような矛盾を感じていたんです。そこで、サドベリーのスタッフとして働くことで、自分が心からやりたいことを実現できるのではないかと考えました。周りから、安定した職を辞めなくてもと引き止められることもあリましたが、妻からも後押しをされて決断しました。現在は全力で子供たちを受け止められている環境がとても幸せです。」

出席の扱いについて

ー義務教育としての学校出席扱いはどのようになっているのですか?ー

校長の判断に任せられているため、学校ごとに判断が異なります。現在は残念ながら、鳥取県の学校に籍を置いている子どもたちは全て欠席扱いになっています。僕としては、出席として認めてもらい、それが子どもや親の安心感に繋がると思っているのですが。出席扱いになると、通学の時に定期券の学割も効くようになりますし。ぜひ先生方は、スクールに足を運んでいただいて、生徒がどのような日々を過ごしているのか知っていただきたいです。でも、今までそのような先生は一人もいなくて残念な気持ちもあります。どんな場所にいるのかを、目で見てからご判断いただきたいという思いです。」

ー校長先生に権限が委ねられているのですね!鳥取県の子が全て認められていないというのは、驚きました。ー

「ただ、大阪の学校に在籍している子は、出席扱いとして認められています。担任の先生や校長先生、教育委員会の方と電話でお話もできました。学びの場は学校だけではない、その子がその子らしく元気に過ごすことが一番、などと仰ってくださって、とてもうれしかったです。大阪市の方では、学校以外の学びの場を出席扱いとして認めるのが一般的ともおっしゃって下さいました。」

教育委員会との関係

ースクールと教育委員会とは何かやり取りがあるのですか?ー

「教育委員会の方とは、定期的にお話をしたり、会計報告等も行っています。今14歳の子は、積極的に学校運営に参加してくれていて、この前は教育委員会とのやり取りを自ら申し出て見ていました。」

ー 一般的な学校では、見る機会もない光景ですね!教育委員会側からは、スクールに対してどのような捉え方をされているのだろう?と気になりました。ー

「教育委員会の方々との関係は、良好とは言えませんね。やはりサドベリースクールに行くよりも、本来は公教育に通ってほしいという思いが伝わります。組織の考え方が、昔ながらの慣習に倣ったものになっているとは感じます。」

理想の未来

ー理想としている教育のあり方はありますか?ー

「将来、サドベリースクールや他のオルタナティブスクール等が公教育の一部として扱われて、無償で通える環境になり、地域ごとに存在しているのが理想です。この形は、オランダで実際に行われていて参考にしています。」

ー公教育の一部として存在していたら、より選びやすくなるかもしれませんね。ー

「そうですね。みんながサドベリースクールに絶対に行くべきだとは、全く思っていません。どんな学校にも、メリットとデメリットが存在しますが、それすらも子ども自身が決めることだと思ってます。ここの環境にデメリットしか感じない子もいるでしょう。イエナプラン教育やシュタイナー教育など、他にもオルタナティブスクールと言われているところがあって、混在している中で子どもたちが好きなように学校を選択できたらいいなと思います。金銭的な心配もなく通えるように、社会を変えていけたらと考えています。」

ー子ども一人ひとりに選択する自由があると素晴らしいですね。そんな自由があったとして、親や大人ができることって何があるのでしょう?ー

「子どもをよく見てあげることなのだと思います。その子にとってのベストは何か、を探り続けてほしいです。子どもの心・意思を大切にした上で決める、ということを意識していきたいです。親は〇〇の方がいいと思っても、子どもに興味がなくて望んでいなかったら、立ち止まって考えてみて欲しいです。子どもの表面的な言葉だけを受け取って判断しないで、行動や表情など、全てを見ていきたいです。」


次回へ続く。

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