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「シティガール未満」を読んで

「読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?」
久方ぶりに編集ページを開いたら、飛び込んできた文字に心臓をギュッと掴まれる。
だって、そうしたくってnoteを開いたから。
良いなと思うエッセイに出会って、著者のnoteも読み切って、それでもまだ気持ちが収まらなくって、ここに辿り着きました。

「シティガール未満」(絶対に終電を逃さない女 著)

都内各地にまつわる著者の思い出を綴ったエッセイで、

 東京で暮らしていて、ファッションやカルチャーが好きだけど、GINZAやPOPEYEに載っているようなキラキラした人にはなれていない。オシャレだねと言ってもらえることはあっても、スナップに載ったことはないし、オシャレなお店に入るのも苦手だし、部屋も散らかっているし、お金もない。かといって無理に雑誌やインフルエンサーの真似事をするのはダサいし、他の誰かになりたいわけでもない。
 そんな漠然としたコンプレックスと曖昧なニュアンスを込めてこのタイトルを付けた。

「シティガール未満」(絶対に終電を逃さない女)

そんな「シティガール未満」と自らを評する著者自身の感性に触れることができる作品です。

読書に刺激を求めてしまう私は、ついつい「ミステリー」ばかり手にとってしまうため、テイストが全く異なる「エッセイ」というジャンルに触れる機会はそう多くありませんでした。
それでも私自身の自己評価を端的に表すような「シティガール未満」というタイトルに惹かれて、深夜に、勢いで、ポチッと購入。そして、一気に読み切りました。

「都内各地にまつわる」と書いたように、各章のタイトルには都内の地名が冠されていて、それぞれの思い出が綴られる構成になっています。
個人的に、地名や建物の名前など、固有名詞が多く飛び交う文章って、少し気が散ってしまって読み終えるのにすごく時間がかかってしまう。でも、この作品はそんなことなかった。綴られる文章に固有名詞が馴染んでいて、知らない名前だったとしてもなんだかすんなり読めてしまいました。

そして、それだけじゃなくて、読み進めるうちに沸々と湧き上がる親近感もそうさせたのだと思っています。
友人が書いているnoteを読むような、そんな親近感。
私自身と全く同じではないけれど、近しい価値観と近しい境遇を経ている著者の感性は、絶えず私の心を揺さぶりました。って書くと大袈裟ですが、「あ、分かるかも」「その視点は無かったけどなるほどね」「まさにそれ、言語化ありがとう」「それは考えすぎじゃない…?分からなくはないけどさ」脳内にカフェが現れて、そこで気の合う女友達とおしゃべりしている心地良さがありました。

あと、この本を読んで気づいたことがひとつ。
わたしは、【高校までを田舎で過ごし、田舎を脱出するという念願を果たして上京した人間】という自負がありますが、著者もその点において同じ境遇です。
その境遇に対して、私は無条件に仲間意識をもってしまうようです。そんな気づきを得ました。

なぜでしょうね。
上京する前の私は、比較的自由にさせてもらえる環境であったものの(そのおかげで現に上京もさせてもらっている)、地方都市特有の漠然とした暗さ、選択肢の少なさゆえに自分が画一化されていく恐怖感、そんなぼんやりとした田舎への嫌悪感をずっと抱えていたように思います。それなりに友達もいて、打ち込むものもあって、毎日楽しく学校に通っていましたが、どこかでこの環境に見切りをつけている自分もいて、ずっと私がいる場所じゃない、というどこか浮いた感覚で生活していました。
そして念願かなっての上京。生まれたときから「都会」に触れている友人たちと出会い、浮かれた一方で、18年間生きて育ってきた環境の違いを肌で感じました。ふるまいから感じられる余裕と「自由に選択し生きる」ということへの慣れ。多少のバイアスはかかっていると思いますが、自分では持ち得ない彼らの眩しさに、ますます都会へのあこがれを募らせながらも、「自分は一生田舎を脱出したに過ぎない人間なんだな」と諦観する私がいました。こうやって書くとただのコンプレックスになってしまうのですが、私はこのコンプレックス、いわば「田舎を脱出した」という自負を原動力に生きてきたというところがあります、大げさながら。タダじゃ都会には馴染めない、簡単に生かしてはもらえないというベースがあるので、常に気を張って、戦闘モードで生きてきました。要らぬ疲弊でダメージを受けるときもあるけれど、それ以上の戦果をあげてきたと思いたいです。

田舎出身という自負ひとつで戦いつづけてきた私にとって、同じように「田舎を脱出して上京した人間」は戦友のように思えてしまうんだろうなと思いました。

そしてそんな私にとっての"戦友"はこの東京に大層いらっしゃるでしょう。でもきっとそれぞれのエピソードやら東京への印象やらってちょっとずつ違ってて、同じ境遇の自分からしたら、ずっと聞いていたくなる話なんですよね。だからずっと読んでいたいって思えるエッセイでした。

電子書籍で読んでいたのですが、
近くにいる知り合いの戦友たちに勧めたくなったので、
思わず紙書籍も購入しちゃいました。感想を聞くのが楽しみです。


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