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セクハラおじいちゃんの悲しい最後・・・

訪問介護をしているときの話。

女の人のうめき声が聞こえた。

私は、「あれ?この家はおじいちゃんの一人暮らしのはずでは?(・・?」と思って、ドキドキしながら、いつも通り、「こんばんわ!ヘルパーです」とおじいちゃんのいる部屋へ入った。

すると、テレビはアダルトビデオが流れていた(笑)
女の人のうめき声は、喘ぎ声だったという衝撃の展開だった。
微妙に気まずい空気・・・( ;∀;)
私は、目のやり場に相当困りながらも、おじいちゃんに近づいた。

おじいちゃんは、とりあえず、何か声をかけなければ!と思ったのか?
「女の人の胸、大きいやろ?」と、照れながら言った。

そして、私は無表情で「とりあえず、テレビを消しましょうか?
(ー_ー)」と。
おじいちゃんは、気まずい雰囲気を、醸し出して素直に応じた。

テレビを消してもらった後は、おじいちゃんの体の体調を聞いて、ミッションのトイレ誘導をして、ミッション終了となった。

80代の下半身まひのおじいちゃん。
性欲は現役らしい・・・

次の日に、おじいちゃんの家に行くと「昨日は、ごめんな!お詫びにこれやるわ!」と言われ、
でかい懐中電灯をくれようとした(笑)
(いやいや、いらないし・・・(;^ω^))と心の声
と、思いながら、「昨日は、割と早めに来てしまったんで、大丈夫ですよ。あと、その懐中電灯、うちにもあるんで(>_<)」とさすがに、お断りした。

後日、他のホームヘルパーに聞くと、割とセクハラ発言が多いおじいちゃんと聞いた。
そして、他の職員からも「セクハラされていない?」と聞かれた。
「アダルトビデオを見ていた現場に、遭遇はしたけどそれはないかな・・・」と。

ただ、この下半身まひのおじいちゃんと私。
共通点がある。

これは、アダルトビデオ遭遇事件の前の話。

このおじいちゃんは、顔立ちは割とイケメンなほうだった。
だから、出会いがあってもおかしくないのに、なんで独身なんだろう?と
不思議に思っていた。

独身だと思って、「若い時は、もてたでしょう?」と
聞いたら、突然、身の上話を始めた。

このおじいちゃんは、過去に結婚して子供がいた。そして、離婚。
子供は奥さんが引き取ったらしい・・・
離婚してから、何十年もなるけど、子供には一度も会えていない。

とのことだった。

こんなことをぼやいていた。
「わしが、こんな体になって、ここにいることも知っているけど、子供は会いにもこない・・・」と。

その話を聞いて、
「私と同じですね。私も、子供がいたけどお父さんに引き取られて、もう会っていません。これからも、会える気がしないです」と。
ついつい、自分の身の上話をしてしまった。

おじいちゃんは、びっくりしながら、「そうか・・・」と。
「わしら、仲間やな」とさみしく笑いながら言った。
「ほんまや~仲間ですね!」と私も、さみしく笑いながら言った。

同じ境遇が、あるからなのか、私には、ほかの職員が言うような、セクハラはしてこなかった。
むしろ、私の体を気遣ってくれた。
「あんた、仕事頑張りすぎたら、あかんで!
わしみたいに、こんな体になるから、体に気を付けるんやで!」と言ってくれた。

きっと、おじいちゃんは、あの会話をしてから、私にだけは、少し娘を見るお父さんの顔をのぞかせてくれたのかな・・・と思った。

ただ、他の職員のセクハラがひどすぎて、このおじいちゃんは利用が中止になってしまった。
仕方ないよね。
セクハラ自体は、許される行為ではないから・・・
それで、傷ついている人がたくさんいるから。

でも、一瞬だけあの会話を交わした時に、辛いのは自分だけじゃないんだなと、思わせてくれた。
セクハラおじいちゃんには、感謝はしたいけど、他の職員のセクハラ話を聞くと、複雑な心境だった。

ホームヘルパーは、お年寄りの辛さを聞いている時間がないのが、現実だ。介護の仕事をして、やることが終わったら急いで次の家に向かわないといけないから。
施設なら、介護の仕事をしたら、次にする仕事が待っていて、人手が少ないから聞いてあげられないのが、現実。

介護サービスの提供に、心理カウンセラーの分野もあって、ただ話を聞いて、「辛かったね」って心の辛さを分かってあげられる介護サービスがあれば、いいのになぁ~て、最近思う。

そしたら、心を救われるお年寄りがいるのかな・・・なんて思ったりする。

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