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『2冊目』を出版する難しさと対策


まえがき

 出版は、1冊でも大変なことです。では、2冊目はどうなのかというと、1冊目とは別の難しさがあります。むしろ、1冊目より難しいかもしれません。そんな中、1冊目の出版を果たした【おとうふ先生】から『2冊目をどう出すのか教えて!』とおねだり貰ってしまったので、書くことにします。

というのは、半分ホントで半分ウソ。自分では全く気づかなかった、けれども自分の中にすでにあったオリジナリティあるコンテンツなので、むしろ気づかせてくれて感謝です!おとうふ先生への感謝を込めて、アウトプットでお返しします。

 なお、前提としていわゆる『商業出版』で『紙の本』を対象といたします。自費出版(とは最近言わずに、企画出版とかブランディング出版とか様々な言い回しがありますが)なら、費用を出せばやれますので、やりたかったら費用出せばOKという話。
また、電子書籍も紙とは違い、ボリュームが少なくても出せるなどハードルは低め。そちらでよろしければ、それをすれば良いと思います。あと、どっちがすごいすごくないの話もいたしません。目的も効果も違う、別のモノです。

 また、比較的最近の話に限定させてください。私が経験している、ここ数年での執筆の話しか出来ないためです。これは私の経験不足によるもの。一般化出来ない話もあるかもしれませんが、申し訳ございません。

●2冊目は何故難しいか

・1冊目はもちろん難しい

 本編に入るのですが、その先頭で申し上げるのは、1冊目はもちろん難しいということです。大所高所から話をするわけではなく、私も1冊目はものすごく大変で、途中ストップしたり大幅に方向転換したりで、結局何年もかかりました。
 その後も、決して楽に書いているわけではありません。だからこそ、ある程度のポイントが見えてきたという部分もあります。私だけの秘密にしていても良いのですが、こうしてコンテンツにまとめることで新たな発見があったりもするので、お伝えするまででございます。

・チャンス(機会)の面

 1冊目は、チャンスさえあれば書ける。これは私がお世話になっている編集者の方に初の単著を作っている過程で聴いた話です。確かにそうで、何かで注目されてオファーが来れば、1冊の本を出すことはできるでしょう。ただ、次が続かなくて1冊だけで終わることも多いもの。だからこそ、1冊目で出来ることを最大限やるのが重要なのです。
 本を書く側が忘れがちなことですが、出版社も民間企業で、ビジネスとして出版をしています。となれば、売れない本を作るわけには行かないわけです。1冊目、最初の本でコケたら次は無い(これも最初の担当編集者の方に聴いた話)。怖いことですが、本当です。
 また、断ってしまうと次の話がいつ来るか分かりません。時流というものはありますので、その時にニーズが有るコンテンツを本にしていかなければいけないわけです。1冊の本を出して『◯◯については書ける人』になったら、そのテーマにニーズが有るうちに、次に続く本を書いたほうがいいでしょう。時間が経つにつれて、時流が変わって来てしまいますし、1冊書いてその後しばらく出していない人、ということになってしまいます。

・ネタ(素材)の面

 商業出版の場合、1冊で10万字というのが一つの目安と言われています。実際には、本の装丁(大きさや縦書き横書きやレイアウトなど)をどうするかにより、けっこう変わってくるものなのですが、10万字は一つの目安と思っておいて間違いないでしょう。
 そうなれば、1冊書いたらもうなかなか他のコンテンツをまた10万字も書けないと思う方が多いのも、仕方がないことだと思います。私もそうで、1冊出したあとは、何もかもを全部出しきったと思っていました。ただ実際には、そんな事はありません。人間の経験や知識というのはとてつもないデータ量ですので、すぐに枯れるようなものではないのです。
 例えば、口頭での話は1分間に300字くらいと言われたりもします。1時間で1800字、1日5~6時間で1万字になります。居酒屋でダラダラ話しをしていたら、1万字くらいの出力をしているということ。何日か話せるくらいのネタであれば、1冊の本になるわけです。

・メンタル面

 1冊でも大変だったのに、2冊目を出す。その大変さの中核は、もしかしたらこのメンタル面なのかもしれません。実は、1冊目には無かった大変さ。それもそのはずで、1冊目には本当の大変さを知らなかったわけです。
 富士山に登ったことがある方なら分かると思いますが、初回は憧れだけで行けたでしょう。でも2回目、あの大変さを知ってしまってから行かなければいけないというのが、厳しいところ。
 ではどうするのか、というとここは根本的&効果的な対策があまり無さそう。基本的には、何とか頑張るしか無い、という気がします。

・時間の面

 これはどうにもならない部分が一部ありますが、時間の制約というのは必ず直面します。1冊目がうまく行けば、1冊目の出版社から次回作のオファーがあるはずです。そりゃそう。さらに、新しい出版社からも声が掛かるでしょう。2冊3冊とあっという間に増えていきます。そうなると、まずやりきれない。この時間の面も、根本的な対策は無い気がしています。私も、受けてしまったものの書ききれずに潰してしまった企画が過去にあります(ゴメンナサイ)。

●2冊目を出すには

・1冊目から勝負は始まっている

 1冊で終わらないためには、1冊目の時点から次を見据えておくことが必要です。そのために具体的には、1冊目をちゃんとある程度は売り上げる必要があります。刊行にこぎつけること自体が大変ではありますが、刊行して終わりじゃなく刊行が始まりです。少なくとも、告知して告知して告知しまくりましょう。その他、売上へ貢献できる活動には積極的に参加。当たり前です。
 さらに、2冊目の話を1冊目の時点から編集者としてもよいでしょう。来年ぜひこんな企画を、といった話が出たりしたら、話半分に捉えずガッツリと食いつくべきです。
 最終的には、2冊3冊出てようやく本格的に著者として認めてもらえるという面もあります。そのためには、やはり最初の編集者との関係が大変重要。自分のことを一番わかってくれる、また自分を著者にしてくれた最初の担当編集者の方との関係はガッチリ構築&維持しましょう。

・同じ内容でも違う本は作れる

 自分が得意なある内容で1冊書いてしまって、もう書けないと思う方もいるようです。ただ、実際はそんな事ありません。当たり前ですが、1冊書き終えた方は全員が『2冊目未経験者』です。さらに1冊目の大変さを知ってしまっているので、2冊目なんてとんでもないと思ってしまいがち。でもそんなことはなかったりするものです。
 実際、同じような内容だったとしても、本には様々な変数があるので、違うものとして書き分け&出し分けることは可能です。具体的には、ターゲットの年代、仕事といった属性から、本の大きさ、縦書き横書き、イラストの有無(多さ少なさ)など、非常に多岐にわたります。これらが違ってくれば、仮に全く同じ内容だったとしても、大きく異なった本になることでしょう。
 具体例として、私の『資格が教えてくれたこと』を挙げてみます。

これが刊行になる直前の、amazonなどに概要の情報が出た時点で「本書から勉強法の部分だけを抜き出して、1冊の本を書いてほしい」というオファーをいただきました。実際に『大人の勉強法本(仮)』として、その後に執筆を進め、1冊の本の原稿ができました(本記事の執筆時点では、まだ刊行されていません)。このように、同じ内容でも粒度を変えて、詳細化したりすれば自ずと範囲は狭くなるので、一部を切り出した別の本になるわけです。
 ただし、こういった書き分けというのは難しい面もあります。過去には、書き分けたつもりでも同じような原稿になってしまい、約10万字の1冊分の原稿を捨てたということもあります。こんな事にならないように、気をつけていただきたいものです(といってもなかなか難しいとは思いますので、編集者の方に随時みてもらうとよいでしょう)。

・嬉しかったことを思い出せ

 本づくりが大変なのは間違いありません。これは、まぁどうしようもない。でも、1冊目を出した方であれば、いかにやりがいがあるか、嬉しいことかも分かっているはず。それをしっかり思い出して、2冊目のモチベーションにしましょう。
 慣れてくることで、だんだん楽になってくることもあります。最初の1冊目は本づくりの流れもわからない不安な状態で進むしかありませんが、2冊目は違います。ある程度は流れがわかって進むことができますので、やりやすくなるのは間違いないでしょう。こういった部分を有効に活用することで、メンタル面も乗り越える事ができるはずです。

・構成作りがキモ

 本を書く時には、構成があると楽になります。そういった細かいことを考えなくても、1冊目は完成できたかもしれません。逆に、知っていても1冊目の時にあれこれやろうと思ってもうまくいきませんから、何とか作るのが1冊目。でもそのまま2冊目以降を続けようとすると、しんどくなります。
 そこで、構成をしっかり作ってから書くことが役に立ちます。簡単にいえば『考える』と『書く』を分けるということです。これによって、書くときにはそれだけに集中することができますので、スピードを上げることも出来るようになります。
 構成というのは、本の設計図です。ここをしっかりまとめることで、途中で止まってしまうことを防ぐ事もできます。また、新しい項目を入れるとか、順番を変えるといった時でも、対応がしやすいです。原稿とは別に、構成をしっかりと作って、それを傍らに置いて&常に更新しながら、執筆を続けていくと良いでしょう。

・執筆ペースは上がる

 本でも記事でも同じですが、分量をこなすことで執筆のスピードは上がってくると思います。私の場合は、ある程度しっかり集中して進めることができれば、調子の良いときで1時間2,000字程度が今のペース。そうすると、1000~2000字くらいの1項目は1時間で書ききれるということになります。
 このように、自分の標準ペースを把握することで、執筆に必要な時間というものがハッキリ見えてきます。こうして時間が読めるようになれば、執筆も日常の他の業務の一部として、スケジュールに組み込むことが出来るでしょう。まとまった時間を取らなくても、スキマ時間で進められるようになりますので、ハードルが下がるとともにペースは数字以上に上がります。

あとがき

 出版は、今となっては私の毎日の一部となりましたが、それはごく最近のことです。初めて刊行した単著は2022年の『社労士事務所のDXマニュアル』。

 そこから一気に執筆の仕事が増え、今に至ります。その過程でやってきたことを、今回振り返ってまとめてみました。なぜそんな事ができたのかといえば、最初の本の編集者の方に『1冊目を出してからが本番』と教わっていたからです。チャンスが有れば1冊目は書けますが、2冊目は1冊目の勢いがないと難しいもの。更に次の3冊目以降が、著者の実力で取れるかどうかと言われたりもします。おかげさまで私の場合は何とかやっておりますが、最初に知らなかったら今の私は無かったでしょう。

 特に今回の対象としております、紙の本の商業出版は、電子書籍が台頭しているとはいえ大きな力があるもの。本のおかげで、講演やメディア露出など、思いがけない機会を多くいただくことができました。そんな私の知見を、少しでも多くの方にお役立て頂けましたら幸いです。

 また、すでに別の記事にしております、どうやって最初の本を出すのかといったことのほうが、多くの方に役立つと思いますので、そちらもぜひご覧ください。


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