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<ラグビー>2022~23シーズン、リーグワン プレーオフ準決勝の結果及びインターナショナルラグビー関連等

(どうでもよい「話の枕」です。関心ない方は飛ばしてお読みください。)

 『ナショナルジオグラフィック』最新号(英語版)を図書館で読んでいて、象についての知識が深められたのは楽しかった。象は、大きい順に、アフリカのサバンナ象>アフリカのフォレスト(森林)象>アジア象と分かれるそうだ。そして、アフリカの二種の象は、鼻でモノを掴む時に鼻先を拡げて上と下で挟むが、アジア象は鼻全体を丸めるようにしてモノを掴むそうだ。これは意外と知らなかった。

 また、アジア象の方がアフリカの二種の象よりも、学習能力が高いそうだ。それで、現地の人たちに働き手として良く使われているのだろう。この象の嗅覚と肌のセンサーは、人の六倍もあるので、鼻も肌もかなり敏感で繊細だそうだ。なお、象の脳の大きさは哺乳類最大であり、イルカやチンパンジーと同じくらいの知能がある。そのため、特にスリランカでは、人の居住地区を囲む高電圧戦をまたいで突破する象の被害が問題化している。人と動物とが上手く共存するのは、なかなか難しい。

1.リーグワン プレーオフ準決勝結果

埼玉ワイルドナイツ51-20横浜キャノンイーグルス

 順当にワイルドナイツが勝利すると考えるが、イーグルスの沢木監督は策士なので、何か秘策をやってくるかも知れない。

 両チームでシンビン2枚、レッドカード1枚がでた他、小雨がぱらつく悪条件の試合となった。しかし、現在のリーグワンで最上のエンターテイメントを見せてくれる両チームには、多少のハンドリングエラーが出た以外は、シンビンも小雨もほとんど影響しなかった。きちんと指導された基本があれば、少しぐらいの環境の悪さでプレーのレベルが下がることはない。なによりも集中力がそうしたマイナス要素を消し去ってしまうのだろう。

 この試合は実に楽しかった。それだけではなく、今シーズンのリーグワンで最高の内容かつレベルの高いプレーを随所に見せてくれた良い試合となった。その主役であるワイルドナイツは、まるで大相撲の大横綱が、14日目最後の一番で西の大関を最後に負かしたような素晴らしい戦い方振りだった。横綱ワイルドナイツは、前半、イーグルスに思う存分に攻めさせる一方、これを余裕であしらっていく。そして一瞬かつ着実なPGでひたひたと点差を縮めていく。イーグルスにとっては、気づかないうちに喉元に刃を突き付けられている気分だったろう。こうしてワイルドナイツは、前半を「想定通りに」15-17の2点差で終える。

 前半はイーグルスに縦横に攻めさせたワイルドナイツは、後半に一気呵成に勝負を決めてかかる。ミスのない、また良く鍛錬されたハイレベルなプレーでトライを重ねていく。オーストラリア・ワラビーズのWTBマリカ・コロイベテが、ハットトリックの存在感を見せたが、やはり完勝の主役は、MOMのSO松田力也だろう。そのパーフェクトなゴールキックは、チームとしての自信の全てを象徴していた。

 なお、66分のイーグルス13番CTBジェシー・クリエルのレッドカードを、勝負が決まった原因にする人が多いかもしれない。しかし、試合全体をよく見ていれば、ほとんど関係ないことがわかるだろう。また、前半40分のイーグルスSO田村優のシンビンも同様だ。イーグルスは、数的不利だけでトライを取られていない。ワイルドナイツのプレーの質の高さが、イーグルスの堅いディフェンスをやすやすと突破していったのだ。

 こうしたワイルドナイツの美しいプレー振りには、かつて松尾雄治に率いられた新日鉄釜石が、そして平尾誠二が率いた神戸製鋼が、それぞれ見せてくれたラグビーを彷彿させるような、良いラグビーだけが持つことのできる素晴らしい満足感があった。

 雨の秩父宮で行われたこの最上のゲームを観戦した、日本代表監督のジェイミー・ジョセフとアシスタントコーチのトニー・ブラウンは、代表SOは松田力也と山沢拓也の二人だと確信したことだろう。ワイルドナイツは、自チーム強化だけに固執していない。日本代表の強化にも大きく貢献している。

 来週の決勝でワイルドナイツは、真の大横綱に相応しく、千秋楽結びの一番で東の大関相手に素晴らしい大相撲を見せてくれることだろう。リーグワンには、こんな良いチームがあることが誇らしい。

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ24-18東京サンゴリアス

 先週からの再戦となる。こういう場合は、先に勝っている側がえてして負けるもの。だからサンゴリアスが有利だと見ているが・・・。サンゴリアスは、スピアーズの南アフリカ勢による強力FWに対してイーブンに戦い、BK勝負に持ち込めれば十分に勝てると思うのだが。

 開始間もない4分、サンゴリアス4番LOが、ハイタックルでレッドカードになってしまう。残り76分間、サンゴリアスは14人で戦う数的劣勢を強いられることとなった。その時、「これで勝負は決まってしまった」と私は思った。ところが、13分にスピアーズ3番PRがハイタックルでシンビンになる。これでサンゴリアスは少しばかり息を吹き返せた上に、その後の展開に少なからず影響したと思う。また、数的優勢になったことで、スピアーズには気持ちの緩みが出た一方、劣勢のサンゴリアスはマストウィンの気持ちが強くなっていたのを感じた。

 そうした中、スピアーズが23分までに7-3と予想通りにリードした後の29分、サンゴリアスFBが自陣PKから、スピアーズの選手が誰もいない左中間へ大きくキックする。そして、11番WTBがスピードに乗ったチェイスで一気にトライまで持っていってしまった。この日最高のプレーがでた瞬間だった。これで、前半を7-10で終える。

 後半は、一進一退の展開になり、55分にスピアーズがトライをして17-13となんとかリードをする。猛反撃を繰り返すサンゴリアスは、ついに64分、大外に展開してトライを取るが、TMOで起点となるラックのノッコンが確認されて取り消される。そして76分に、今度はスピアーズがトライを挙げ、24-13の11点差にリードを拡げる。残り時間から考えて、スピアーズの勝利はほぼ確定したようだった。しかし、フィットネスに優るサンゴリアスは執拗に反撃を続け、とうとう79分にトライを返して、24-18の5点差に迫った。

 こうして、残り時間との戦いとなったサンゴリアスだが、その素晴らしいアタック力はスピアーズの疲労しているディフェンスを圧倒していき、ラックからの素早いプレーで83分にWTBがインゴール中央に駆け込む。このままコンバージョンが決まれば逆転勝利となるトライだったが、TMOとなり、サンゴリアスSHがラックからオフサイドの位置にいたスピアーズSHを避けてパスしたボールが、スローフォワードと認定され、トライは取り消された。

 しかし、スピアーズに反則があったため、これでゲームは終わらない。サンゴリアスはPKから猛攻を重ねていき、85分、左ゴール前5mのラインアウトからモールを押し込んでいく。サンゴリアスFWは、ついにインゴールになだれ込んだが、レフェリーとアシスタントレフェリーの3人は、タッチダウンを確認できない。そしてTMOに諮る。ビデオ映像では、クリアーなタッチダウンは確認できないが、サンゴリアスFWがボールをインゴールに持ち込んでいることはわかる。またタッチダウンしているようにも見えるが、TMOはオンフィールド・ディシジョン(つまりレフェリーたち3人の判定)のノートライを覆すだけのエビデンス(証拠)はないとして、ボールヘルドの判定が下り、そのままノーサイドになった。

 もしトライが認められていれば、24-23となり、その後のコンバージョンが決まれば、24-25でサンゴリアスの劇的な大逆転勝利となるプレーだったが、最後にドラマは起きず、苦戦の末に勝利を得たスピアーズが、来週のワイルドナイツとの決勝に進むこととなった。

 この一連のTMOをめぐって、「サンゴリアスはTMOに泣いた」という論調があるが、これはちょっとおかしいと思う。ラグビーでは、TMOを含めてレフェリーを尊敬する、たとえ誤審であっても、レフェリーの判断を尊重するということを、昔からのラグビーマンは教え込まれている。またそれは、「雨が降っても雪になってもラグビーはやる」というのと同じくらいに、強固な信条になっているはずだ。それが、なぜかTMOについては、「TMOが長い、かけすぎ、わかり辛い」と批判する人がいる上に、あげくに「TMOは不要」などと主張する人がいるのは、論旨が一貫していないことになる。

 またこの試合で、TMOにより取り消されたWTBの2つのトライは、ノッコンやスローフォワードがあったのだから、そもそもどうやってもトライにはならないものだ。これは仕方のないことだし、ルールがそうなっているのだから、それ以上でも以下でもない。

 さらにサンゴリアスは、邪魔な相手のSHからPKを取るようなプレー(つまり、相手SHにパスをぶつけてしまう)や、例えSHにインターセプトされても、オフサイドなのだから安心して、確実に後ろにパスすることもできた。また、最後のプレーでは、レフェリーが判定困難になりやすい上に、ボールヘルドになった場合はノーサイドになってしまうモールを選択せずに、ピックアンドゴーやBKに回す選択肢もあったと思う。

 そういう点では、スピアーズが勝つべくして勝ち、サンゴリアスは負けて仕方のないプレー振りだったのだと思う。これが最も客観的な見方ではないだろうか。

<参考:入替戦結果>

第1戦結果(5月5~7日)
豊田自動織機シャトルズ(D2)21-59三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1)
三重ホンダヒート(D2)34-29グリーンロケッツ東葛(D1)
浦安D-Rocks(D2)14-36花園近鉄ライナーズ(D1)
釜石シーウェイブズ(D2)25-25クリアウォーターガッシュ昭島(D3)
清水建設江東ブルーシャークス(D2)0-48九州電力キューデンヴォルテクス(D3)

第2戦結果(5月13~14日)
グリーンロケッツ東葛(D1)12-13三重ホンダヒート(D2)
花園近鉄ライナーズ(D1)56-21浦安D-Rocks(D2)
クリアウォーターガッシュ昭島(D3)28-38釜石シーウェイブズ(D2)
九州電力キューデンヴォルテクス(D3)12-17清水建設江東ブルーシャークス(D2)
三菱重工相模原ダイナボアーズ(D1)43-14豊田自動織機シャトルズ(D2)

D1残留:花園近鉄ライナーズ、三菱重工相模原ダイナボアーズ
D1昇格:三重ホンダヒート
D2降格:グリーンロケッツ東葛
D2残留:浦安D-Rocks、釜石シーウェイブズ、豊田自動織機シャトルズ
D2昇格:NTTドコモレッドハリケーンズ大阪、九州電力キューデンヴォルテクス
D3降格:日野レッドドルフィンズ、清水建設江東ブルーシャークス
D3残留:クリアウォーターガッシュ昭島

2.インターナショナルラグビー関連

(1)スーパーラグビーパシフィック第12週結果

チーフス22-25レッズ

 チーフスの連勝が続くでしょう。

 ところが、リーグワンでワイルドナイツがブルーレヴズに連勝を止められたように、チーフスが弱小レッズに、今シーズンの連勝を11で止められてしまった。またレッズは、NZのゲームで21連敗という不名誉な記録を持っていたが、これをようやく止めることになった。

 ゲームは、控えメンバー中心のチーフスが、レッズに対してセットプレーで劣勢となったため、前半を12-12で終える。そして、後半はレッズが先に得点し、55分に15-22とリードする。しかしチーフスは、反撃を重ねて72分のトライ(コンバージョン成功)で22-22の同点に迫る。さすが連勝をしているチーフスが、このまま最後に勝利するのかと思われたが、77分にレッズがPGを決めて、22-25と再びリードした。その後80分までにわたって、チーフスは27フェイズの猛攻を続け、最後にはレッズのインゴールにボールを持ちこんだものの、トライは認められずにノーサイドになってしまった。

 チーフスとしては、優勝に向けての影響は皆無に等しい負けである一方、レッズにとっては値千金の勝利となった。またチーフスは、この負けによってチームを再調整する良い機会を得たと言えるが。レッズはプレーオフ生き残りへ一歩前進となった勝利だった。

 なお、チーフスのマッケンジーとスティーヴンソンの活躍は、強固なFWプレーに支えられてこそのものであり、さすがにFWとセットプレーが劣勢となっては、二人ともに勝利を導くのは難しいことをわからせてくれたゲームでもあった。

ウェスタンフォース34-14フィジードルア

 こういうアウェイのゲームでも、ドルアは頑張って欲しい。

 前半は15-14とドルアも頑張ったが、後半に入ると19-0と一方的に得点されて完敗した。フォースは、ドルア対策の基本である、FW戦に持ち込んでトライを重ねたのが正解だった。先週のハリケーンズもこういうゲームをやれば勝利していた。

ハリケーンズ71-22モアナパシフィカ

 先週ドルアに痛い負けを喫したハリケーンズとしては、ここはボーナスポイント付きで勝ちたい。

 前半こそ控えメンバー中心のハリケーンズは、モアラ相手に点の取り合いとなった29-19と10点差のリードに留まったが、後半に入るとNO.8アーディ・サヴェアのハットトリックを含む6連続トライでモアラを圧倒し、最後はボーナスポイント付きの圧勝・大勝となった。

 ハリケーンズとしては、相手が弱小モアラとはいえ、来シーズンの活躍が期待される若手プレヤーたちに良い経験を積めたことが、勝利以上の収穫となったのではないか。

クルセイダーズ15-3ブルーズ

 クルセイダーズのリッチー・モウンガ対ブルーズのボーデン・バレット。オールブラックスのSO対決が見もの。

 オールブラックスのSO争いは、クルセイダーズのリッチー・モウンガに軍配は上がったが、ブルーズのボーデン・バレットもときおり素晴らしい才能あふれるプレーを見せ、存在感を発揮していた。

ゲームは、前半を10-3のクルセイダーズのリードで終える。ところが、後半43分に、ブルーズ7番FLダルトン・パパリイが、クルセイダーズSOモウンガへのハイタックルでレッドカードとなってしまったことで、好試合となるゲームの勝負がついてしまったのは、残念だった。実力が競った同士の対戦で、しかもブルーズの中心メンバーであるパパリイが後半早々に退場してしまったのでは、誰がどう見ても勝敗を決めるレッドカードの判定となってしまった。

 一方クルセイダーズでは、既に海外移籍を決めているものの、現クルセイダーズ監督で次期オールブラックス監督のスコット・ロバートソンが、「かつてのマア・ノヌーに似てきた」と絶賛した11番WTBレスター・ファインガアヌクの、タッチラインギリギリにダイブしたトライは、得点の少ないこのゲームの白眉となっていた。ファインガアヌクは、海外移籍してからも、ロバートソンが例外としてオールブラックスに選ぶ対象になれるかもしれない。

ワラターズ38-20レベルズ

 レッズに勝って勢いに乗るワラターズが、ここでも勝てるか。

 前半と後半に、ワラターズがゴール前でモールを押し、これをレベルズがつぶしてシンビンになるとともに、ワラターズにペナルティートライが与えられた。この計14点が無ければ、24-20ともっと競った点差になっていたので、レベルズのプレーは残念だった。またレベルズは、前半は14-17とリードするなど、良いアタックを見せていただけに、モールディフェンスの致命的なミスがいっそう悔やまれる。

 個々の選手では、特にワラターズSOベン・ドナルドソンが、絶好調のレベルズSOカーター・ゴードンに負けぬ良いプレーを見せていた。ワラビーズSO争いに向けて、大きくアピールする結果となっている。

ブランビーズ48-32ハイランダーズ

 ここでハイランダーズが勝利すれば、チームとしての意地を見せられるのだが。

 前半は、ハイランダーズが19-20とリードする奮闘ぶりを見せる。特にSHフォラウ・ファカタヴァと12番CTBトーマス・ウマガジャンセンの活躍が素晴らしい。そして、後半に入ってからも、ハイランダーズは59分に26-32と再逆転するなど健闘していた。ところが、59分にブランビーズにシンビンが出たのを得点に結びつけられなかった一方、逆にブランビーズが得意のモールを中心にアタックを継続し、とうとう65分に38-32と再々逆転されてしまった。その後はブランビーズが順調に得点を重ね、点差を開いていき、ハイランダーズはボーナスポイントも失う敗戦となってしまった。

 スーパーラグビーパシフィックのハイランダーズは、メンバー的に他のNZチームと比べて劣るものがあるため、なかなか順調に勝利を重ねるのが難しい状況にある。NZのメディアでは、NZチームにおける選手契約のドラフト制導入を提案していたが、真剣に検討する時期になっているのかも知れない。

(2)ツールーズセヴンズ


男子
プールマッチ結果
オーストラリア49-5日本、サモア28-12日本、日本0-66アイルランド
NZ29-12カナダ、NZ31-5ケニア、NZ14-12ウルグアイ

9位決定戦準々決勝 ウルグアイ17-5日本、13位決定戦準決勝 日本28-12ドイツ、ケニア19-0アメリカ、決勝 ケニア33-12日本(日本は14位)

決勝トーナメント結果
準々決勝
オーストラリア10-12カナダ、NZ35-0アイルランド、アルゼンチン21-12南アフリカ、フランス17-12英国
準決勝
カナダ5-33アルゼンチン、NZ19-14フランス
3位決定戦
カナダ12-28フランス
決勝
アルゼンチン19-24NZ

ロドリック・ソロ

女子
プールマッチ結果
英国19-12日本、フィジー26-14日本、スペイン5-33日本
NZ50-0ポーランド、NZ31-12アメリカ、NZ28-7カナダ

決勝トーナメント結果
準々決勝
NZ29-7日本、フランス28-10英国、オーストラリア17-7アイルランド、フィジー17-22アメリカ
5位決定戦準決勝 英国5-14日本、アイルランド10-5フィジー、決勝 アイルランド0-14日本(日本は初の5位)

準決勝
オーストラリア7-10アメリカ、フランス19-14NZ
3位決定戦
オーストラリア33-7フランス
決勝
アメリカ14-19NZ

ステーシー・ワアカ

 女子のブラックファーンズセヴンズは、これまでの6大会中5大会で優勝していることに加え、決勝トーナメント進出を決めたため、ツールーズセヴンズ終了前にシリーズ総合優勝を決めてしまった。今シーズンのブラックファーンズセヴンズの強さは、文字通り異次元のものとなっており、彼女たちに対抗できるのはオーストラリア・ワラルーズセヴンズくらいになっている。

 ブラックファーンズセヴンズは、準決勝のフランスにやや苦戦しながらも19-14で勝利した後、オーストラリアに勝利したアメリカと決勝で対戦した。決勝では、ブラックファーンズセヴンズに開始早々にシンビンが出たこともあり、アメリカが14-0と先行するが、その後ブラックファーンズセヴンズがトライを返して、14-5で前半を折り返す。

 後半に入ると、ブラックファーンズセヴンズが一方的にトライを重ねていき、最後はステイシー・ワアカの素晴らしいスキルを発揮したトライで14-19と逆転して、大会優勝を決めた。これで、今シーズン最初のドバイ大会で優勝を逃した他は、続くケープタウン、ハミルトン、シドニー、ヴァンクーヴァ―、香港そして最後のツールーズと6大会連続優勝をした。まさに驚異的な強さだ。来年のオリンピックでは、優勝に向かって二番手以下を大きく引き離しているトップランナーだろう。

 一方女子日本代表は、プールマッチでスペインに勝利して決勝トーナメントに進出したものの、絶対王者のブラックファーンズセヴンズに歯が立たず完敗した。その後5位決定戦に進み、準決勝で英国に14-5で勝利し、フィジーに10-5で勝利したアイルランドと決勝で対戦した。決勝ではフィジカルに勝るアイルランドに苦戦したものの、スピードとスキルで日本が上回り、14-0で勝利した。女子日本代表は、歴史的成果となる大会5位の実績で今年のシーズンを終え、来年のオリンピックのメダル獲得に向けて、希望の灯りが少しばかり灯る結果となった。

 男子のオールブラックスセヴンズは、プールマッチ最終戦のウルグアイに14-12と競り勝った後,決勝トーナメント準々決勝のアイルランドには、35-0と実力通りに圧勝したが、続く準決勝のフランスには、後半に逆転する19-14と辛勝となった。そして、準決勝でカナダに28-12と完勝したフィジカルに勝るアルゼンチンとの決勝では、シンビンになったことが影響して、前半を7-19とリードされて終わる。しかし、後半はいつも通りに着実に加点していき、ついに19-19の同点とする。ここでもしコンバージョンが決まっていれば、21-19でオールブラックスセヴンズの優勝が決まっていたが、コンバージョンを失敗したため、そのまま延長戦に入った。

 延長戦開始直後、相手陣でスクラムを得たオールブラックスセヴンズは、右に大きく展開する。最後に大外でボールを得たロドリック・ソロが、自慢のスピードでインゴールにダイブする。トライの判定はTMOとなるが、しっかりとタッチダウンしており、劇的な優勝を決めるスーパートライとなった。

 なおオールブラックスセヴンズは、今シーズンの全11大会中、これまでにシドニー、ロスアンジェルス、香港、シンガポールに優勝し、また今回のツールーズでは決勝に進出したことから、総合ポイントで二位のアルゼンチンを越えることが確定したため、既にシリーズ優勝を決めていた。

 NZは、男女ともにツールーズセヴンズに優勝するとともに、今年のセヴンズワールドシリーズの総合優勝も勝ち取った。今やNZは男女ともに、15人制のみならず、セヴンズの王者としても世界に君臨している。

NZが大会及びシリーズのアベック優勝

 一方、男子日本代表は、9位決定戦に臨んだが、準決勝のウルグアイに5-17と敗れ、13位決定戦準決勝に進んだ。ここでドイツに28-12と勝利して、アメリカに19-0と勝利したケニアとの決勝に進んだが、ケニアの優れたアスリートに走りまくられて、12-33と完敗してしまった。この結果日本は14位で終えた。日本の来シーズンのコアメンバー落ちが確定しているため、来週のロンドンセヴンズでは、少しでもより良い成果を挙げて終わりたい。

(3)日本とフィジーを、ザ・ラグビーチャンピオンシップに迎え入れることを検討中

 NZ協会CEOのマーク・ロビンソンは、2026年からザ・ラグビーチャンピオンシップに日本とフィジーを入れて、シックスネーションズのようなスタイルに進化させる協議をしていることを公表した。その概要は以下の通り。

 2018年にオールブラックスは、Aチームをヨーロッパに遠征させ、Bチームに日本で試合をさせたが、69-31と圧勝した。ところが5年後の日本代表は予想外に強化されており、サミソニ・タウケイアホ、ブロディー・レタリック、シャノン・フリッゼル、サム・ケーン、リッチー・モウンガ、ケイリブ・クラークを要したオールブラックスに対して、38-31と7点差にまで迫った。また、2019年RWC自国開催では、現在世界ランキング1位のアイルランドとスコットランドに勝利している他、2015年RWCでは南アフリカに勝利した実績を残している。

 もし日本がザ・ラグビーチャンピオンシップに参加した場合、すぐにオールブラックスに勝利する実力が必要だとは期待していない。現在世界トップクラスにあるアルゼンチンは、35年間に30試合を重ねることで、ようやくオールブラックスに初勝利したが、オールブラックスに勝利するには、どのチームでも長い期間を必要とするからだ。

 一方フィジーは、スーパーラグビーパシフィックにフィジードルアとして参加して二年目となる今年、NZチームに勝利するなど大きな進化を遂げている。もしフィジー代表に、ヨーロッパでプレーする選手が多数参加すれば、さらに代表チームは強化されるだろう。そして何よりも、フィジーのホームでの熱狂ぶりは、ラグビーを盛り上げてくれる好環境となっている。熱狂的なフィジー及びRWCを成功させた日本での新たなTV放映権収入は、ザ・ラグビーチャンピオンシップ運営組織としては大きな魅力になるだろう。

 なお、日本とフィジーが参加した場合は、現在のホーム&アウェイの方式(4チームが各6試合をする)から、6チームが各5試合を行うことに変更するため、同じ相手と二度対戦することはなくなり、毎年一度だけの対戦という希少性から試合自体の価値も高まるだろう。また将来的には、その商業的マーケットの大きさから、アメリカも加えた7ヶ国まで拡大することも検討課題となっている。

(私見)
 ラグビーがプロ化している以上、常にビジネス(つまり金儲けできるかできないか)を想定しなければならないのは当然なことだと思う。だから、アマチュア時代の旧IRB構成8ヶ国の伝統とか、テストマッチの価値とか、(もっと言うと、秩父宮のドームスタジアム化反対とか)、そうした感情的なことは、これからラグビーがスポーツとして生き残るためには、除外していかねばならないと考える。

 従って、NZ協会を筆頭にして、日本をザ・ラグビーチャンピオンシップに参加させようと動いていくことは、世界のラグビーがより良い方向に進む健全なものだ。また、日本がわざわざ遠くまた歴史的かつ文化的に敷居が高い、ヨーロッパのシックスネーションズに参加することを無理に画策するより、ザ・ラグビーチャンピオンシップに参加する方が、よほど現実的かつビジネスライクな見方だと思う。

 一方、代表レベルのみならず、フィジーがドルアで成功しているように、日本も2019年RWC成功の原動力となったサンウルヴズの成果(日本はスーパーラグビーにチームとして参加するのではなく、少数の外国人選手をトップリーグでプレーさせれば十分だと主張した人もいたが、RWCの結果がこうしたネガティヴ思考を完膚なきまでに否定してくれた)を再現すべく、一刻も早くスーパーラグビーパシフィックにチームとして参加すべきだと思う(同時に、複数の日本人選手が、スーパーラグビーパシフィックのチームに選手として参加して欲しい)。理想はサンウルヴズを再結成することだが、それが無理なら、例えばリーグワン優勝チームが単独参加することでも良いと思う。今のリーグワンの上位チーム(ワイルドナイツ、スピアーズ、サンゴリアス、イーグルス)には、それぐらいの実力が十分にある。

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